スペース・フィッシング
「確かな、人類が小惑星帯に出たころだから2250年ぐらいか。このころ、小惑星をとることは、発掘と称されていたんだ。何とも味が無い名称だという話が当時あったらしくてな。それで名前を付けるっていうことになったんだ。そもそも発掘と言うほど大きいものならまだしも、手のひらサイズや、1mも無いような、今でいう中型クラスのものも大量にあることが分かったからな。あーだこーだ議論が続いた時、誰かがふとつぶやいたんだ」
ジェニーは、鰆の話をじっと静かに聞いている。
「『そう言えば、今のとり方は、まるで投げ網みたいだよな』ってね。当時は、丈夫な鉄製の網を使って、細かい物を集めていくって言う方式が主流だったんだ。この投げ網という単語から、漁業みたいだなっていう展開を経て、釣りになったっていう話があるな。そして、宇宙で行う釣りだということで、SF、つまりスペースフィッシングっていう言葉が生まれたんだ」
鰆は言い終わると、ジェニーの目の前のモニターに目をやる。歴史と言っても、植民と開拓の歴史がつづられている程度だ。鰆が話したような、釣りになったという話は、ここには出てくることはない。
だからだろうか、ジェニーは、とても楽しそうに鰆の話を聞いている。この鰆による都市伝説にも近い内容の授業は、ケレスに着くまで続いた。




