地球
現時点、つまり西暦2515年。人類は、宇宙に飛び出したものの、冥王星あたりを限界としていた。それから先は、未だに誰も到達していない未知の空間であった。かといって、全くの未知かと言えばそうではない。人工惑星と呼ばれる、昔でいえば人工衛星を何十機と飛ばしており、あらかた探索は尽きているともいえる。
では、なぜ冥王星以遠に進むことができていないのか。大きな原因は資源不足だということだ。この資源不足を補うために、人類が目をつけたのは小惑星帯だった。
2020年代から始まったと言われている地球の国家統合と、月面への本格的な移住は、人類の数が増えすぎたことに起因している。個人は個人として動くようになり、それが国家を動かすということがままあった。だが、国家同士の結びつきは、それ以上に強かった。そのために、国土を守るという運動も同時に起きるようになった。これを推し進め、自らの自治権を守るために、教皇へと土地を寄進するということが、カトリック勢力域において行われるようになった。そして、2029年に至ると教皇領国としてこれらは独立。ローマ教皇を元首とする、ゆるやかな連邦制へとなる。
当時列強と言われていたのはヨーロッパ共和国、日本国、そして北米連合だ。この3つにさらにロシア連邦を加えてもかまわない。4つの国は、互いにブロック経済を行うようになる。その一方、戦争を防ぐために国際連合をより発展させるということで意見が一致。そのため国家共同体という組織が創られた。2044年のことである。
国家共同体は、国家主権を互いに認め合いつつも、不必要な軍事行動を慎むこと、国境地域から20km以内には、軍は進むことを承認しないということ、さらに全世界に存在している核兵器、化学兵器、生物兵器を順次廃棄するという協定を提携。これ以後、教科書にのみ、これらのNBC兵器は存在することになる。だが、これでは不十分だとする勢力が現れた。彼らは国家共同体をより進化させ、統一政府を樹立することを目指した。列強の中でこれを目指したのがヨーロッパ共和国と北米連合だ。2カ国とそれぞれの経済圏の国を統合する形で2073年に設立されたのが、国家共同共和国である。一方で、国家共同体も国家共同共和国から25年後、中央集権国家的な地球統合政府を設立した。しかしながら、中央集権国家的な政治体制を嫌う国があった。この時点のロシア連邦は、ゆるやかな社会主義的な政治体制を取っていた。分権社会主義と呼ばれる特殊な政治体制である。これは、中心となる党がある一方、連邦制という枠組みにおいて各地域ごとに夫婦関係にある中心党があるというものだ。このため、地球統合政府とそりが合わないということで、独立を決意。地球統合政府が設立された2098年に、同時に人民同盟国として独立を果たした。
地球統合政府は、第三世界並びに日本国を中心にして出発したわけであるが、日本の首脳はそれを快く思わなかった。自らの富が外に流出し続けるという事態に至ったためだ。赤字は累積をしていき、数百兆円という大台に乗ろうとしていた。これを危惧したマスコミや有識者によって、地球統合政府からの独立を促された政府は、2108年、皇国共栄圏と呼ばれる独自の経済圏に基づく領土の独立を宣言。このため、地球には5つの国が出来上がることとなった。すなわち、教皇領国、国家共同共和国、人民同盟国、地球統合政府そして皇国共栄圏である。
地球における5つの国は、正確には4つの国と1つの地域となる。皇国共栄圏は“国”というよりかは単なる経済圏と言うべきであるからだ。だが、その経済圏として設定されている地域は実質的に中央集権的な国家として扱われることが多い。そのため、国となっているのだ。