カマ友達?(担当:一郎【台風一家】)
「ただいま」
ロリショタの会合という、不思議な会議に出席した俺は、驚愕の事実を知った状態で会場に戻ってきた。さて、この新事実を家族に報告すべきか、しないべきか……。
この時間は全て夢だから、目が覚めたときは覚えていないらしいし。だとしたら、俺が幼女化してしまう事を俺自身忘れてしまうのだし、あえてここで言って皆を悩ませる必要はないかもしれない。
「確かにゴスロリだと体の線は隠せるわね」
「ええ。足の曲げ具合で身長もごまかせるのよ」
「へぇ。私は校則で化粧も女装も禁じられてるから羨ましいわ」
「別にいいじゃない。時雄は肌が綺麗なんだし、化粧なんていらないわよ」
石姉、楽しそうだなぁ。
俺が会合に行っている間に、どうやら友達ができたらしい。でもあの人たちは、女友達だろうか?それとも――。
「一郎君、おかえりなさい。会合ではいじめられたりしませんでしたか?」
「紅兄 、皆いい人だったよ」
心配性の紅兄がどうだったかを聞いてきたが、別にそこまで心配しなくても大丈夫なのになぁと思う。でもきっと、もっと俺が年をとれば心配される事もなくなると思うし、心配してくれるのは大切にしてくれている証だ。そう思うと、くすぐったいような嬉しい気持ちになるので、素直に答える。
「会合ではどんな事を話し合うのですか?」
「えっと。どんな事というか……、年齢が同じぐらいの子同士で話せるようにしてくれたみたいで。14歳未満の子が集められて、色々話したよ。妖怪じゃないのに、魔法で姿を変えられる子も居て、それぞれの世界について話していた感じだったかな」
テレビやゲームなどの共通話題がなかった為、最終的にお互いの世界を紹介しあったような感じになった。そこで聞いた話は、テレビやゲームよりもファンタジーな内容だったけれど。
「姿を変える?」
「うん。フレイヤはそう言うことができる種族で、オクトは光の魔法を使えば可能とかって言っていたかな」
魔法とか、種族とか、まるでゲームの世界のような話だなと思いながら、俺は皆の聞いていた。
ただ皆に比べると俺の話はすごく平凡で、なんだか恥ずかしくなってしまうようなものだったけれど。変わっている事といえば、家族が妖怪なぐらいだし。ただその事を話すと、何故かフレイヤとフレイ、それにオクトは妖怪というものを知っていて、それは平凡じゃないとツッコミを入れてきた。
うーん。皆は個性的っだけど、俺自身は平凡なんだけどなぁ。
「あら。いっちゃん、帰ってきてたの?」
「ただいま、石姉」
友達と仲良くしゃべっていた石姉が俺の事に気が付いて声をかけてきた。
「あら。その子が末っ子のいっちゃん?」
「そうよ。家事と気配りの達人で、女の子だったらお嫁にしたいぐらいのいい子なの」
石姉友人らしき金髪の外人さんに声をかけられ、英語で話さなくちゃいけないかなと少し慌てる。でもよく考えたらさっき話たフレイヤ達とも日本語で会話ができたので、ここではわざわざ言語を変えなくても通じる事をすぐに思い出した。
夢の世界だからなのか分からないけれど、すごく便利だ。こんな機能が現実にもあれば、英語を勉強しなくてもすむのになぁと思う。
「初めまして。幸田一郎といいます」
「こんにちは。私の事はエドガーと呼んでね。職業は地蔵菩薩をやってるわ」
そう言って、エドガーはバチコンとウインクをした。……エドガーという名前からすると、やっぱり男の人だよなぁ。石姉と同じで女装が趣味なのか、それとも本物のオカマな方なのか。
うーん。聞いたら失礼に当たるかなぁ。
「私は時雄と呼んでね」
このヒトはブレザーの男物の学生服を着ていたので、間違いなく男だとは思ったけれど……やっぱり言葉がオネエだ。
3人に共通していえるのは、それぞれ美人でオネエ言葉が似合っているところだろう。
「いっちゃんたら、何か気になる事があるなら言いなさい。遠慮しなくてもいいわよ」
「そんなの、オカマ、キモッて一郎は思ってるんだよ」
「誰がカマよ。この馬鹿犬。アンタの意見なんてこれっぽっちも聞いていないわよ」
質問するべきか迷っていると、石姉と犬兄がいつものやり取りを始めた。
2人の仲がいいのはいい事だけど、犬兄の発言は、エドガーと時雄に失礼だろう。
「3人とも綺麗だから、キモくはないと思うよ?」
実際、お世辞抜きにしても3人は綺麗だ。きっとパッと見、女性だと勘違いされるに違いない。
「ヤダ。何この子、すごくいい子じゃない!」
「でしょ、でしょ。本当にうちのいっちゃんは、すごくいい子で可愛いのよ。女の子だったら、お嫁にしたいぐらい。それに女の子だったら一緒に可愛い服を選べたし。本当にそこが唯一残念なのよね」
「えっ? 可愛い服?」
石姉が残念そうにため息をついた。
「そうよ。私、服に関しては自分の好きなものを着るのが一番だと思うから無理強いはしないんだけどね。いっちゃんがもしも妹だったら、一緒にスカートとか可愛い服を買いに行ったのにねぇ」
す、スカートか。
石姉がすごく残念そうだけど、その願いはかなりハードルが高い。石姉なら女装も似合うけれど、俺だと……うん。ただの変なカマになる事間違いない。
ふと先ほど、実は座敷童化すると幼女になる事が判明した事を思い出したが、もしもこれで石姉の趣味に付き合って、俺が変な快感に目覚めたら危険だ。家族が白い眼で見られないためにも、この事は永遠に内緒にしておいた方が良い気がする。
「あら。女の子でも、中々可愛い服を着てくれない子もいるのよ。実は職場の後輩が可愛い女の子なんだけど、中々可愛い服を着てくれないのよね。動きにくいとか言っちゃって」
「あら。後輩ちゃんはスポーティーな子なのね」
「いい子なんだけどねぇ。ほら、今もあそこでご飯食べてるでしょ?」
エドガーが指さした先では、高校生ぐらいの人が皿の上に食べ物を山盛りにして、モリモリ食べていた。……なんだか男物の学生服を着ている時雄の方が女性らしい気がする。
「でも友達が女の子だと、自然におしゃれは覚えるものだと思うけれど。良ければ、私の友達を紹介するわよ。人となりはすごくいい子だし、可愛いのは保証するわ。ちょっと、男運がないけれどね」
「是非そうしてあげて。お付の左鬼は男だし、右鬼もあまりそう言うおしゃれには疎い子だから」
男の人にまで心配されるなんて……。
そんなにあのお姉さんはおしゃれに疎いのかなぁ。じっと見ていると、こちらに気が付いたようだ。
「エドガーも何か食べる? 持っていこうか?」
「後で行くわ」
大きな声でお姉さんがこちらに声を声をかけてきて、それにエドガーが答えた。
「ね。いい子なのはいい子なのよ」
そう言って、エドガーはふっと顔を綻ばせた。
そんなエドガーの表情は、何故か何十年と子供の面倒をみてきた親のような顔にみえた。でもお姉さんとの年は親子ほど離れていないし、職場の後輩と言っていたので、そんな関係ではないはずだ。
男の人だけど母性本能が強いのかな?
「幸せになって欲しいんだけどねぇ。中々色々難しいのよね」
「何じゃ。口ばっかのじじの言う事など、気にする事ではないじゃろ」
「中々そうもいかないのよ。私にも立場というものがあるし」
鬼姫さんは、もしかしてエドガーと知り合いなのだろうか。
そういえば、エドガーがさっき、地蔵菩薩がなんとかと言っていた気がする。地蔵菩薩……うーん。もしかして妖怪の一種なのだろうか。地蔵といえば、傘地蔵とかそういう話もあるし。確かあの話って夜中にお地蔵様が動いて恩返しをするんだっけ? やっぱり怪談話だよね。
妖怪なら、鬼姫さんが知っていてもおかしくない。
だとすると、あのお姉さんも何かの妖怪なのかな?
「あのお姉さん、何て名前なの?」
「冬夜よ」
冬夜さんかぁ。彼女も妖怪なのか、それとも妖怪をしている人間なのか。
ちょっと後で話しかけてみようと俺は思った。
【カマ友達? 登場キャラ】
紅夜(出典:台風一家シリーズ)
台風一家の主人公、一郎の兄で大風家の長男。朝が弱く、夜の仕事に就いている。他の家族同様、一郎を含む家族全員を大切に思っている。物腰は柔らかいが家族を害すモノには冷徹。水辺で歌を唄い、人を惑わし水に落とす妖怪。嘘は言っていない。
時雄(出典:ヒロイン不在につき)
社会の裏側で超能力者たちが密かに争う漫画【飛べない鳥】の世界に転生したオカマさん。
死者の多い物語に巻き込まれることを厭い、漫画の舞台を避けて高校を選んだ彼は、そこにいないはずの原作キャラ、乙姫と出会う。
漫画の彼女のことを好きになれなかった彼であるが、密かに所持していた能力【過去視】により、彼女の心の芯にあるものを知る。
以降、蔭ながら乙姫を守ることを誓った男前なカマ。そんな彼は乙姫から、命を懸けていいくらいにはいい奴と思われている。
ある意味相思相愛の仲。
エドガー(出典:地蔵菩薩見習いはじめました)
地蔵菩薩様であり、地獄の閻魔王でもある存在。地蔵菩薩の時は金髪のカツラを被ってゴスロリに身を包む。
彼曰く、女優なだけで、カマではないそうだが……。
【カマ友達?、サブ登場キャラ(台詞のみの登場キャラ)】
冬夜(出典:地蔵菩薩見習いはじめました)
本名、幸田冬夜。
ある日トラックに轢かれて、死神に生き返りたくないかと話を持ち掛けられた少女。危うくゾンビ風に生き返らせられるのを回避し、冥界に行った先で、今度は自分が次期閻魔王の魂だった事を知る。
兄にくどくどと話はちゃんと最後まで聞いてよく考えろと言われているのに、どうしても頭で考えるよりも体が先に反応している脳筋族。言った後に後悔する事もしばしば。女装癖の叔母が居るそうだが?
【視点キャラ登場作品名】
台風一家
台風一家番外【出会い編】
(台風一家シリーズ)
【作品内容】
主人公の一郎は幼いころに両親を亡くし、親戚をたらい回しされていた。そんな一郎が新しく引き取られた先は、美形の長男、女装の次男、不良の三男、そして年齢不詳の祖母がいる家庭。しかも全員血がつながっていないという。
そんなある日、彼らが実は妖怪であることを知り、一郎は自分のルーツも知ていく。
物語は妖怪と人間が本当の家族となる為に頑張る話。




