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ショタロリの愛(担当:フレイヤ【魔王様の家庭教師】)

『あてんしょんぷりーずじゃ。今度は、ショタロリ担当に集まってもらおうかのう。ただし人数が増え過ぎると困るよって、語りべを担当した事がある者だけを呼ぶとしよう。先ほどと同じように、時間がたてばまた会場に戻るゆえ、ゆるりと話し合うがよい』

 そんな声が聞こえたかと思うと、私の目の前の光景が変わった。

 さっきまでBLの分かる方と話をしていたはずなのに、目の前には円卓。ここは確か、一番最初に集められた場所のはずだ。


「さあ。名前が書かれた所に座るがよい」

「はぁ」

 トキワにそう言われて、私は曖昧に頷いた。どうやら再び私はイベントに呼ばれたらしい。

 でもさっきショタロリ担当っていったよねぇ……私、ロリかな?

「すまないが、ショタロリとは、幼い子を指す言葉のようだが、何歳までなのだ?」

 魔王様がそうトキワに聞いた。確かに。

 魔王様は見た目も可愛いしパーフェクとだけど、年齢は現在11歳。私は……ああ、そうか。そう言えば私も実年齢は11歳か。ユイの記憶が混ざってしまっているので、正確にその年齢とは言い切れないけれど。

「ふむ。詳しい定義はなく、10歳未満とする者もいるようじゃが、妾は今回14歳までとさせてもらった。オクトが物言いたげだが、外見の年齢を重視した故、実年齢が超えていていてもそれに含まれる」

 外見重視なんだ。

 確かにフレイヤの外見は幼い。14歳という事は中学生ぐらいまでなので、含まれるのも分かる。


「では、とにかく席につくがよい」

 そう言われて席に向かうと、先ほどまでは光るプレートだったのに、今度は可愛らしいピンクのプレートが置かれていた。名前と一緒にお花柄が描かれている。……なんだかまるで幼児対応だけど、ショタロリ担当と言われたのだから仕方がない。

 実際、私より幼い女の子も居るのだし。

 一番幼いのは、私と同じ赤毛に琥珀色の目をした子だろうか。

「女子はピンク、男子は青にしたゆえ、可愛いじゃろ。なんでも幼児には、ぱすてるからーがよいそうじゃからのう」

「あれ? だとすると、俺のプレート間違ているんですけど」

 そう言ったのは、中学生ぐらいの男の子だ。雰囲気的に、日本人っぽい。

 プレートの名前は、幸田一郎。確かに、男の子の名前だ。でも色はピンクで私と同じである。


「間違ってはおらんよ?」

「えっ? 男は青なんですよね?」

 魔王様も勇者も確かに青いプレート。確かに間違ている。

「ふむ。そうじゃのう……。オクト、ちょちょいとこやつに攻撃魔法をぶつけてみるがよい」

「「えっ?!」」

 オクトと一郎が同時にトキワの言葉に目をむいた。攻撃魔法というのがどういうものか分からないが、攻撃とは穏やかではない。

「トキワさん。間違えは、ちゃんと認めた方が……」

「じゃから間違ってはおらんと言っておるじゃろうが。別に逆ギレではないわ。妾が時の魔法で寸止めするよって、ちょいと椅子の一つでもぶつけてみるがよい」

 一体何をしたいのだろう。

 ただオクトは、はぁとため息をつくと自分が座ろうとしていた椅子に手を置いた。

「我が声に従い、風よ動かせ」

 オクトの声に従うかのように無風だった場所に風が吹いた。

 次の瞬間、オクトが手を居ていた椅子が浮き上がり、一郎に向かって飛んだ。

「うわっ!!」

 ぶつかると思った瞬間、椅子は寸止めで地面に直角に落ちる。


 椅子が落ちる音にビクッとし、椅子に注目していたが、もう一度一郎に視線を戻すと驚きの変化がそこで起こっていた。

「うわっ。何で椅子飛ぶわけ?」

 あっ。そっちが気になるんだ。

 ぶつけられそうになった事を怒ったりするのかと思ったが、一郎は椅子を確認している。なんというか、呑気だ。この分だと自分に起こった変化も気が付いているのかどうか怪しい。

「風の魔法を使った。それより姿が……」

「ん? ああ。俺、どうやらご先祖様に座敷わらしがいるみたいでさ。危険があると、小さくなっちゃうらしいんだよね」

 椅子をぶつけようとしたオクトよりも、一郎の方がケロッとしたような表情で説明する。

 あっ。良かった。ちゃんと変化は気が付いていたのね。結構大雑把ぽく見えたのでそれにも気が付いていないかのと思った。


「ほれ。ちゃんとロリ要員じゃろ?」

「へ?」

「何じゃ。気が付いておらんかったのか? お主、小さな女の子になっておるぞ」

 ……えっ?

 一郎の髪が短いままなのでまったく気が付かなかった。小さくなった一郎もまたその事は知らなかったようで、目をパチパチと瞬かせている。でも確かに、中性的な顔立ちなので、女の子と言われても違和感はない。年齢も小学校1年生か幼稚園の年長さんぐらいにみえるので、男女の性差はあまりなかった。

「座敷童って、もしかして女の子限定?!」

「さあのう。妾も座敷童にはとんと会った事がないからのう」

「どうしよう。家族が、これ知ったら驚くよなぁ。男が女になるって、気持ち悪いかなぁ……」

 一郎は小さな体をシュンとさせてため息をついた。

 座敷童って、確か日本の妖怪だよねぇ。色んな種族が住んでいる魔族として、第二の人生を歩んでいるので私は驚かないが、彼の兄弟がそう言う多種族に理解が薄ければ困惑するだろう。


「だ、大丈夫だよ。きっと。家族なら」

 それでも私は自分よりも小さな子になってしまった一郎を、励ますように言った。

 私の周りには血のつながりのない人ばかりだけど、家族のように大切に思っている。そんな彼らは、私の姿が変わってしまった時も決して態度を変えることなく接してくれた。

「そうかな?」

 自分の事に対しては大雑把な様子だったのに、家族に関してはアキレス腱だったようで、一郎はすごく困惑した顔をしている。不安なのだろう。

 なので私は力強く頷く。

「私も実は変化の能力があるんだけど、皆気持ち悪がらずに受け入れてくれてるよ。ここに居る、魔王様もフレイ君も勇者君も」

 本当に優しい人ばかりだから。だから私は皆の事が大好きなのだ。

 一郎が大切だと思っているという事は、きっと彼の家族も彼の事を大切に思っていてくれるのだと思う。


「変化の能力?」

「うん。例えば……」

 私は久々にユイの姿を想像する。

 最初は再びユイの姿をとるのは、自分をあやふやにしてしまうので怖かったけれど、【私】を魔王様が否定せずに居てくれたことで、今ではその恐怖もなくなった。

 どんな姿でも、私は私なのだ。

「うわ、凄っ。日本人になれるんだ」

「そうだろう。俺の婚約者は、素晴らしい能力の持ち主だ。お前の能力も、誰かを傷つけるものでないのならば、きっと受け入れられるはずだ」

 そう言って、ユイの姿になった私に魔王様がくっつく。

 素晴らしいとか言ってもらえるのは少し恥ずかしいが、嬉しいので、魔王様の頭を撫ぜて感謝を伝えた。

「おか……じゃなくて、フレイヤと、えっと、まおー様はこのころからラブラブなのね!」

 赤毛の女の子が目をキラキラさせて私達の関係を言葉にした。ら、ラブラブかぁ。……間違ってはいないけれど、そう表現されると恥ずかしい。

「えっと。君は――。その赤毛は生まれつきなのかい?」

「ええ。そうよ。お母様ゆずりなの」

 おや?

 フレイと彼女が並ぶと、何となく似ている気がする。特に赤い髪が。

 ただこの会場には、黄緑色の髪をした青年とか、常識外の色をした人もいた。もしかしたら彼女も異世界の人で、そこでは普通の色なのかもしれない。


「あの。そちらの方は、かのじょはいるの?」

「へ?俺?」

 不意に声をかけられた勇者がキョトンとした顔をした。

「ええ。トールのことよ」

「いや、いないけど……」

「よかったぁ」

 そう言って、にぱぁっと女の子が笑った。その表情は、恋する女の子といった様子で――えっ? 恋?!


「私はリーヴスというのだけど、私はあなたのことがすきなの!」

「へ?! 俺っ?! 何で?!」

 唐突に訪れたモテキが理解できていない勇者がぎょっとした表情をする。もう少し嬉しそうな顔をした方が良いだろうに、本当に驚いたのだろう。

 勇者が告白されるといえば、すべて男だったので、分からなくはないのだけど。

「はっ?! もしかして、リーヴスって男?!」

「しつれいね。私はりっぱなレディーよ。このふくがみえないの?」

 そう言うリーヴスが着ているのはドレスだ。確かにこれで男の子だったら、詐欺に近いレベルで似合っている。

「えっ。いや。何これ、ビックリ?!」

「トール。良かったな。別に俺は何も仕掛けてないぞ」

 勇者はいまだに信じられないようで、すごく動揺している。まあ、女の子になれていないから、その反応も分からなくはないけれど、告白されてその対応はどうなのだろう。だからモテないという言葉が脳裏に浮かんだが、それを言うと可哀想なので黙っておく。

 それにリーヴスも気にしていないようだ。


「ここでの事はゆめだときいたわ。でも大きくなったら、ぜったいあなたにあいに行くから。しばらくはあえないけれど……。でも、きょうだけでいいの。デートしてちょうだい」

「えっと」

「えっとじゃないだろ。女の子に恥をかかせてどうするんだ」

 フリーズ気味の勇者の背中をフレイが叩いた。その顔は、凄い笑顔だ。親友の恋人が見つかって、よっぽど嬉しかったのだろう。

「あの少女。どこかで……」

「魔王様。もしかして見かけたことがあるんですか?」

 もしかしたら彼女は魔族領の住人なのだろうか。可能性としてはないとは言い切れない。

「いや……ないはずだが」

 でも、何かが引っかかるなら、あり得ない話ではない。魔王様が出会い話す人数は、私とは比べ物にならいほど多い。少しだけ話した事がある人なんて覚えていられないと思う。

「えっ。お、俺でいいのか?」

「ええ。トールがいいの」

「良かったな。愛があれば年の差なんて何とかなるものだと思うぞ」

 フレイは本当に親友思いのいい子だなぁ。

 戸惑っているトールの背中を押している。


「ふむ。時を超えてこういう事があるのも、また一興かのう」

 時を超えて?

 トキワの言葉がどういう意味かは分からないが、私も勇者の幸せを祝ってあげようと思った。

【ショタロリの愛、登場キャラ(容姿ごと登場)】


ラグ(出典:魔王様の家庭教師シリーズ)

 本名 ラグナロク。 魔界唯一の国家、アース国当代魔王。幼くして魔王となり、賢者ユイの力を借り国家の威信を揺るぎないものとした若き覇王。

 世界を滅ぼすレベルで愛する婚約者がいる。ヤンデレの域ではあるが相思相愛なので実害はないらしい。お砂糖だばぁ。最近の悩みは婚約者が自分を題材にしたBLイラスト付き妄想小説を書籍化していること。彼女曰くBLと妄想は別腹。……いい加減、勇者とカップリングするのはやめて欲しい。


リーヴス(出典:魔王様の家庭教師シリーズ)

 しっかり者の魔王とフレイヤの娘。同シリーズのキャラクターたちよりも未来の時空座標より来た。自分とそう年の変わらない頃の婚約者(リーヴス主張)と出会えてご満悦。

 魔王様の家庭教師(拍手お礼の中身)では、6歳ながら視点担当を務めた。勇者をBL主人公からロリコンに転換させようとしている張本人。


【視点キャラ登場作品】

 魔王様の家庭教師(短編)

 魔王様の家庭教師(連載版)

 魔王様の家庭教師(拍手お礼の中身)

(魔王様の家庭教師シリーズ)


【作品内容】

 魔王様の家庭教師(連載版)


 気がついたら、異世界で転がっていたユイと呼ばれる少女は、日本から持ってきたものや知識を使って生きていた。ある日ユイは、この世界がBLゲームの世界だと気が付き、このままだと世界滅亡フラグに繋がる事を知る。

 そんなユイが、フラグ折りの為に魔王と勇者を相思相愛にしようと魔王様の家庭教師となって奮闘するけれど、異世界のトイレ事情が気になったりと、遠回りしておかしなことになってく話。 

 この話はユイ以外に、魔王と勇者が語りべになり、視点が変わっていく話です。


※ネタバレ:ユイ=フレイヤであると作品途中で判明し、名前が変わります。

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