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酒は飲んでも飲まれるな(担当:みどり【魔女だ!】)

「魔法少女なんてやってられるか、馬鹿野郎!!」

「そうだそうだ! 仕事なんて糞くらえだ!」

 乾杯!

 カチャン。

 何度目かの乾杯をしてグラスを先ほど知り合った戸部とぶつけあった。


「お仕事中にこんな良く分からない事に巻き込まれるなんて、お互い大変ですね」

「本当です。おかげで、私、年がらもなくこんな服だし」

 チラッとコートの前を開けて、フリル付きの痛々しい服を見せる。せめて、魔法少女の活動をしている最中じゃなければよかったのに。

「分かります。仕事だとどうしても自分の趣味とは合わない服も着なければいけないですからね」

 戸部さんはどうやら私の同業者に近いらしく、私の服を見て話しかけてきた。

 戸部さんとは年齢も対して変わらないと思う。ただ私と違って今日はOFFの姿らしい。何処かで見た事がある気もするが……はて。一体どこだっただろう。

 まあでも、美味しく一緒にお酒が飲めるなら誰でもいいんだけど。

「それに戦隊ものは、この年ではキツイんですよ。周りが皆若いのに、何で抜擢されてしまうかなぁと。何でも2重人格設定で、悪と正義の間で揺れ動いてほしいとか。誰得という感じですよね」

「ああ。分かります。魔女少女って、私より全然若い子がやるべきなんですよね」

「そんな事ないメ――」

「アラヤダ。害虫が」

 私は足元で騒ごうとした白くて丸っこいぬいぐるみ事、メタボを踏みつぶした。


「イタタタッ! 痛いメタ。でも、快感――」

「キモいわっ!!」

 私はサッカーボールよろしく、メタボの丸い体をけ飛ばした。そのままお星さまにでもなれ。そうすれば、この世界の悪を1つ滅ばせた気がする。

「……お上手ですね」

「全然。全然です。こんなの。それにしても、魔法少女だったら、もう少し可愛いパートナーだったらいいのに」

 どうしてあんなヘンテコな妖精なのか。名前がメタボで、性格がドM系。最悪だ。

「そうか?まだ可愛い方だと思うが」

 嫌な事はお酒の力で忘れてしまおうと、ビールをぐびぐび飲んでいると、外人っぽい男性が話しかけてきた。

「可愛い?どこがよ」

「さっき知り合った少年の使い魔の方がびっくりだったぞ。それから、あのトキワというのも、そう言う類らしいしな。なあ、イチロウ。ちょっと、来い」

 男性が呼ぶと、中高生ぐらいの男の子がやってきた。周りの人に比べて比較的普通の子っぽい。目の前の外人さんとは違い、安心の日本人顔だ。

「ロー? 何?」

「ほら。さっき見せてくれた使い魔を呼んでくれ」

「イクさんは使い魔じゃなくて友達だってば」

「一郎様、呼びました?」

 にょき。

 突然床から美少女の顔が現れた。見た目はまさにホラーだ。

「うわあぁぁぁっ!!」

 私は声が出ないぐらい驚いて固まったが、代わりに戸部が大声で叫ぶ。

「ああ。ごめんなさい、驚かせて。イクさんもごめん。体育館から何回も往復させちゃって」

「いいえ。それは大丈夫ですが……」

 よっこいしょという感じでイクと呼ばれた女の子は、地面から出てくる。何だろう……呪いのビデオっぽいこの動き。

 

「一郎様、この方々は?」

「えっと、誰だろう?」

「イチロウと同じで、使い魔を持っている奴だ」

「ああ、そうなんですね。初めまして。私は体育館の怪異で、イクと申します」

 変な動きで地面から出てきたが、比較的普通の子っぽく、ちゃんと挨拶をしてきた。しかし、イクがぺこりとお辞儀をした瞬間、ごろっと頭が地面に落ちる。

 ……えっ?! 落ちる?

 何で落ちるの?!

「ぎゃあぁぁぁっっ!!……これは、夢だ。夢に違いない。もしくは、酒を飲み過ぎたんだ、きっと」

 あっ。戸部が壊れた。

 流石に衝撃映像が連発過ぎて、現実逃避を始めたようだ。私もメタボという人外を知らなかったら、戸部と同じように現実逃避をしたんだろうなと思う。

 特に戸部は、二重人格の部分を認められて、戦隊ヒーローに抜擢されてしまったらしいし。精神薄弱なのだろう。可哀想に。

「イクさん、頭落ちてるから」

「あわわっ。これははしたない所をお見せしました」

 慌てて顔を持ち上げ、手で胸の前に持ってくるが……シュールだ。そもそも首が転がっているのははしたないのか良く分からない。

「えっと、イクさんというのは幽霊なの?」

「どちらかというと、妖怪よりです」

 妖怪か。

 妖精より見た目はグロいが、常識がありそうだ。……若干私のお供とチェンジを求めたい。


「おや? 君も首なし一族なのかね?」

 そう言って、今度は渋めのおじさんがやってきた。手にはワイングラス……似合うわぁ。

「貴方も首がないのですか?」

「ああ。私はデュラ・ハンという」

 ……妖怪がまた増えたのね。なんかそんな名前の妖怪、外国に居た気がする。

 一体、このパーティーはどうなっているのだろう。そして妖怪という単語にさほど驚くことなく受け入れられてしまう自分が憎い。

「お主とそのイクと呼ばれる小娘は違う世界の者じゃよ」

 お酒はまだまだ飲み過ぎていないのに頭痛いわぁと思っていると、最初に私をここへ連れてきたトキワがやってきた。

 相変わらずちんまりしているのに、言葉づかいが老人っぽくて変な感じだ。メタボより変な存在は居ないと思っていたけれど、案外そうでもないかもしれない。

「そうなのか。首なし一族は数が少ないからね。甥のエレオーと仲良くなって貰いたかったんだが……。それなら仕方ない」

「この世界でのできごとは夢じゃからのう。多少の事では現実には持ち帰れぬよ」


 夢ねぇ。

 最初にもこの子はそんな事を言っていた。

 でも、夢というのは、いろんな意味がある。睡眠中の事も夢と呼ぶし、実現させたい願望も夢と呼ぶ。果たしてどっちの意味で、誰にとっての夢なのか。

 まあ、そんなの私にとってはどっちでもいいけど。

「ふーん。夢ねぇ。だったら俺を分離してくれてもいいと思うんだけど」

 おっと。戸部が復活したみたいだ。少しだけ目が座ったようにみえるけど……もしかして子供嫌いなのだろうか。いや、この子を子供といっていいのか、私にも正直分かんないんだけど。

「それは無理じゃ。妾と空の神が合わせてできるのは、時間と空間の混在までじゃ。ないものを作る事は出来ぬ」

「神様って割りに、役立たずなんだ」

「お主達が考えるほど、神というのは万能ではないんじゃ。むしろ、お前さんの使い魔の方がよっぽど世界の法則を捻じ曲げておるぞ」

「へ?私?」

 私の使い魔という事は……メタボか。

 アイツは世界というか常識を著しく捻じ曲げた存在だと思うんだけど。

「そうじゃ。魔法少女という別の力を他者に付加するなんぞ、普通は出来ぬ」

「そうメタ! 流石合法ロりメタ。良く分かってるメタ」

 ちっ。お星さまにならなかったか。

 再び私の傍に戻ってきたメタボは妙に偉そうだ。ただの害虫のくせに。

「コイツが神なら、私は首を吊るわ」

 こんな神様嫌だ。

「何言ってるメタ。ミドりんが死んだら、誰がこの世界を守るメタ」

「いや、アンタが神の時点で守る価値が失せるという意味よ。とりあえず、私以外にこの場所に魔法少女に向いている子はいなかったの?」

 できるなら、誰か別の人に押し付け――もとい、譲りたい。

 もっとも、ここは夢の世界ということなので、無理なんでしょうけど。でも本気で、この変態ぬいぐるみとは縁を切りたいのだ。


「居たメタ。でも、断られたメタ」

「えっ? 居たの?!」

 自分で言っておいてなんだけど、まさか本当に適合者が居たなんて。なんて可哀想。そして断ってくれてよかった。

 実際に私と同様の被害者が出たとしたら、心が痛んで仕方がない。

「何人か、候補はいたメタ。まず勇者と呼ばれる男の子メタが、誘ったら、近くに居た女の子に消し炭にされそうになったメタ」

「いっそ、なれば良かったのに」

 というか、また男の子を狙ったのか。男の娘は止めろと言ったのに。

 懲りない奴め。

「酷いメタ。でもそこがイイメタ。次に金髪の少女メタ」

「えっ? 少女?!」

 とうとう来た。

 金髪の少女なんて、魔法少女にうってつけだわ。きっと、フリフリスカートや不思議な髪型もばっちり似合うに違いない。

「そうメタ。巻き込まれやすい星本に生まれた子だったメタから声をかけたメタ。でも近くに居た、黒髪赤目の怖いお兄さんに消し炭にされそうになったメタ」

 消し炭多いな。

 そして、もう一度言う。消し炭になれば良かったのに。

「でも、安心するメタ。今、新たに魔法少女にうってつけの子を見つけたメタ」

「……一応聞いてあげるけど、誰」

「その、男の子メタ」

「えっ? 俺?」

 ……一郎の前にメタボが立った。

 だから、何でヤローの前に行くの。この場には、合法ロりも、妖怪系美少女(首と胴体が永遠にサヨナラしてる)も居るのに。


「そうメタ。TSは美味しいメタ。だから僕と契約して魔法少女に――」

 ドドドドッ。

 突然メタボに何かがめりこみ、そのまま吹き飛ぶように地面に倒れた。まるでマシンガンで撃たれたかのようだ。メタボからコロコロと転がったものは……小豆?

「一郎君。あちらに美味しいものがあるそうですよ」

「紅兄? でも今、この子が――」

「大丈夫ですよ。こういう生き物は、大抵次の話になると生き返っているものですから」

 いやいや、ギャグ漫画じゃないから。

 でも確かにまだ生きていそうだ。ぴくぴくと動いている。

 一郎は心配そうな顔をしていたが、お兄さんに連れていかれた。……うん。でも、その方が彼の為だ。まったく。節操というものを知らなくて困る。


「鬱陶しいぬいぐるみだな。ちゃんと躾けろよ」

「無茶言わないでよ」

 戸部に言われるまでもなく躾けられるものなら躾けている。でもアレは私の手にはおえない変態だ。

「むちゃくちゃな知り合いが居るとお互い大変だな」

「ローだっけ?あなたも困った知り合いが居るの?」

「知り合いというか、幼馴染だ。白雪というんだが、とんでもないじゃじゃ馬で……。母親も母親で、とんでもない子煩悩で、鏡で随時娘の動向を探っているから折り合いが悪くてな。よくその喧嘩に巻き込まれるんだ」

 そう言って、ローはヤケ酒っぽく、ビールを一気に飲み干した。

 白雪ねぇ。

「鏡で動向を探るって、まるで白雪姫みたいだな」

「……どういう意味だ?」

「ああ。確かに。童話よ童話。この世で一番美しいのは誰かお妃様が鏡に問いかけるんだけど、毎回娘の白雪姫が出てきちゃうのよね。それで、白雪姫の若さと美貌にヒステリーを起こして、殺そうとする話かしら。でも普通に考えて、白雪姫が死んでも、また別の女性がうつりそうなんだけどね。やっぱり若い子の方がモテるもの」

 ああ。思い出すと悲しくなってくる。

 私もそろそろ30代に王手をかけているのだ。職場でもこのまま進めば、お局間違いなし。なのに、現在私は魔法少女という二足のわらじを履いているのだ。涙が出そうである。


「何? そんな話があるの?!」

「白雪姫?!」

「ローったら。勝手にどこか行かないでよね」

「いや、勝手に動いたのは貴方でしょうが。……まあ、いいですけど」

 この子が、白雪かぁ。

 エンジェルリングがみえる黒い綺麗な髪に綺麗な白い肌。でも病的ではなくて、血色はとてもいい。目鼻立ちがぱっちりしていて、絵にかいたような美少女だ。

「それから、私の事は、白雪と呼ぶように。何でまた敬語なわけ? 全然意味分かんないんだけど。それにしても、今の童話を私の母親に聞かせたいわ。さっさと子離れしてくれないかしら」

 そう言って、白雪は切なげにため息をついた。

 いいなぁ。綺麗なのもいいけど、若いというだけで羨ましくなる。それにしても、ローが彼女持ちのリア充だったとは。

 本当に嫌になっちゃうわ。


「帰ったらお見合いしようかしら」

 私は自分の知り合いの男が変態ばかりな現実を思い出して、ふかくため息をつき、再びビールに口をつつけた。

【酒は飲んでも飲まれるな、登場キャラ(容姿ごと登場)】


青木みどり(出典:魔女だっ!!)

 何の因果か28歳にして魔法少女となってしまった女性。敵勢力モエナイダーや、おかしなおとも(マスコット)に日々悩ませられる生活を送っている。「魔法少女は10代、できれば前半の女の子と相場が決まっているんだ!」「私はヒロインじゃない!魔女だ!!」「やっぱり、なんだかアンタを倒せば全てが解決するような気がしてきたわ」 以上、彼女の語録也。


メタボ(出典:魔女だっ!!)

 いろいろと問題のあるおとも(マスコット)。でぶったウサギめいた姿をしている。ヤンデレというか、粘着なMMマゾモエブタ。


ロー(出典:白雪姫の猟師の憂鬱)

 ある所に、子離れできない王妃様と、世界で一番綺麗だけれど、とってもパワフリャァッな王女様の住む小さな国がございました。そんな国に、一人の猟師がおります。平民ではあるのですが、小さなころから王家の人々と仲がよく、王女様ともとても仲が良い猟師。それがこの猟師です。

 ハーレム体質。鈍感、ヘタレ、聞き違え等それ系のオプションは一通りそろえている。きっと赤い頭巾の女の子をオオカミから助けたり、泉に手斧を落としたり、吸血姫から三日間逃げきって呪いを解いたり、鶴を助けたり、光る竹切ったり、狐の耳としっぽがある子供にイワシやクリやカキ、ウナギなんかを貢がれたりしているはず。そして、白雪姫にヤンデレられるんですね、分かります。


白雪姫(出典:雪姫の猟師の憂鬱 )

 王家と民との垣根が低い、小さな国のお姫様。とても美しく魔法の鏡に“世界で一番美しい人は”と聞けば、彼女が移される程。

ですが、その中身と言えば一人で野山に分け入り、イノシシを狩る位にワイルドで行動的。

 過保護にすぎる母親から距離を置くために家出中。と、いうのは建前、さてその本当の目的は?

 彼女の一番の不満は、たぶん母親ではなく、鈍感系ハーレム幼馴染の猟師担いしてだと思われる。


デュラ・ハン伯爵(出典:魔王様の家庭教師)

 魔王の治めるアース国において、ハン領を治める首なしの魔族。

賢者ユイ(フレイヤ)を拾った貴族。次々に繰り出されるユイの無防備な“知識”に翻弄されつつも、やがて領主の後継に望むようになる。

 ハン家は外様領主でありながら、その手腕を買われ、良い土地を領地として与えられた家系。デュラもまた良政を敷きつつ、出る杭にならずにいるキレ者である。

後にフレイヤを養女にとり、父親として魔王の求婚を大人げなく妨害しまくった。


イク(出典:台風一家シリーズ)

 もともとの本名は「体育館の怪異」、しかしいっちゃんに命を救われた際にうっかり「イク」が本名になっている.

 子供たちの“体育館には首のない女子生徒の霊がでる”という妄想から生まれた妖怪で、行動範囲は学校の中のみ、力も弱い存在だった。

 現在はいっちゃんの呼びかけに応じて外でも出ることができるようになっている。いっちゃんが言うに親友とのことだが、傍目には子供ぼっちゃん保護者ねえや。美少女だけど、首がなかったりへたれだったり、ちょっと残念。


【視点キャラ登場作品】

 魔女だっ!


【作品内容】

 魔女だっ!


 28歳にして、魔法少女にうっかりなってしまった女性の嘆きの話。何だか、色々間違っている。

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