もう一つの夏合宿(2)
「――ねぇ、香奈ちゃん。私、手伝いに行こうか?」
アメフト同好会の合宿があると聞いてそう言いだしたのは、もちろん香奈ちゃん一人じゃ大変そうだったからだ。
でも実をいうと、部活中のお兄ちゃんと香奈ちゃんの様子をこの目で見てみたいっていう下心の方がちょっと大きかった。
マネージャーと部員の恋。しかも相手は年上でチームのエース。野獣のような男たちの群れに、小さな可愛い女の子がひとり――このシチュエーションに憧れない子はいないでしょう?
あの「香奈ちゃんグラウンドで愛を叫ぶ事件」に遭遇したせいで、香奈ちゃんがどれだけ部員たちから可愛がられているかは、もうよく知っている。
常に冷静なお兄ちゃんだけど、香奈ちゃんとほかの部員とのことを嫉妬したりはしないのかな? 練習中、二人でこっそりアイコンタクトなんてやっていたりするのかな?
今回、章吾さんがお兄ちゃんに内緒で香奈ちゃんに水着をもたせたあたり、この合宿でなにかが起こるのは間違いない。その時お兄ちゃんがどんな反応をするのかあまりにも見てみたくって、しぶる香奈ちゃんの人の良さにつけこみ、思いっきり章吾さんのたくらみに加担することにした。
――合宿当日。
初めて目にしたS大の合宿所は、思っていたよりもずっと素敵な場所だった。
三階建ての白い建物。敷地内にはテニスコートとバスケットコートがあり、周りは綺麗に手入れされた芝生が広がっている。隣には広いグラウンド。
ナイター設備もばっちりだから、夜の空いた時間にでも香奈ちゃん誘ってバスケができたらいいな。
割り当てられた部屋に入り荷物を置くと、早速初日の練習が始まった。
途中昼食と1時間ほどの休憩をはさんで、次は全体でのミーティング。やっと終わったと思っていたら、また今からグラウンドに出て午後の練習が始まるらしい。
「咲良ちゃんはこの後どうする? 今日はもういっぱい手伝ってもらったし、部屋で休んでいてくれてもいいよ?」
香奈ちゃんが日焼け止めを塗りながら笑顔を見せる。
「ううん、別に疲れてないし……。せっかくだから少し練習を見学させてもらってもいい? そのあと香奈ちゃんさえよければ、夕食は私が作っておくよ」
「それは助かるけど、一人では大変じゃない?」
「夜はカレーでしょ。お昼の支度でだいぶ慣れたし、何とかなるんじゃないかな」
料理なんてほとんどしないけど、さすがにカレーとサラダぐらいなら作れるよね。
香奈ちゃんと一緒にグラウンドへ向かう。白のアメフトパンツに白いTシャツ姿の一年生たちが、すでに練習の準備を始めていた。
きちんと一列に並べられたショルダーにも、大きく名前の書かれたお揃いの白いジャージが着せられている。これなら誰が一年生かってことが一目瞭然だ。
グラウンド横のベンチに荷物を置き、香奈ちゃんが大きなタンクを手に振り返る。
「咲良ちゃん、私ちょっとお水汲んでくるね」
「あ、私も――」
「香奈先輩、手伝いますよ」
『私も行く』と言いかけた言葉と視界を、横から出てきた巨大な影に遮られる。
今のって……どう考えても、わざと邪魔したよね?
「さぁ、行きましょう」
「ありがとう、雄大君。――咲良ちゃん、ちょっと待っててね」
香奈ちゃんが巨体の横からひょっこり笑顔を覗かせた。
「あ、うん」
呆気にとられつつも、とりあえず頷く。するとその巨大な子は私のことなど完璧に無視したまま、香奈ちゃんと共に歩き出した。
「――咲良ちゃん?」
「小太郎君……」
ショルダーとヘルメットを手にした小太郎君がこちらに歩み寄りつつ、香奈ちゃんたちに目を向ける。
「大丈夫? 雄大と香奈ちゃんがどうかした?」
「……香奈ちゃん取られた」
「えっ?」
「雄大って人に、香奈ちゃん取られちゃったの」
少しふてくされながらそう言うと、小太郎君が苦笑した。
「そっか、ごめんね。あいつ香奈ちゃん大好きだから」
「やっぱりそうなんだ。じゃあお兄ちゃんのライバルってこと?」
「うーん、ちょっと違うかな。雄大、司先輩のことは十分に認めているみたいだし」
お兄ちゃんはよくても、私が香奈ちゃんに近寄るのはダメなんだ……なんか変なの。
もう『取り巻き1号』って呼んでやる。
「咲良ちゃんも練習を手伝ってくれるの?」
「ん? あぁ、違うの。多分私じゃ使い物にならないだろうから、少し見学させてもらってから調理担当に回ろうと思って」
「そう、悪いね。暑いから気を付けて」
爽やかに微笑んだ小太郎君が木陰へ移動して腰を下ろす。そしてスパイクの紐を調節し始めた。
小太郎君って、やっぱりフェミニストだ。
この外見にこの性格……名づけてアメフトの王子様? 私にはちょっと男らしさが物足りない気がしてしまうけれど、きっと女の子にすごくモテるはず。
彼女はいるのかな? あんなに爽やかそうな顔をして、実は女の子をとっかえひっかえして遊んでいたりして……。
失礼な想像を勝手に膨らませると、人の増えてきたグラウンドへと目を向けた。
香奈ちゃんたちが戻ってきてしばらくすると、午後の練習が始まった。
まずは準備体操と、バスケでもやっていたラダー(縄梯子みたいなもの)を使った俊敏性を高めるトレーニング。
次は部員たちが7人ぐらいずつ列を作り、ホイッスルを咥えた香奈ちゃんが少し距離を置いてそれと向き合う。
「ピッ」
笛を合図に、最前列の部員たちが大きな声を上げながら足踏みを始めた。
香奈ちゃんの笛と手の動きに合わせ、全員が素早く右へ、左へと移動する。
香奈ちゃんが両手を上げればジャンプをし、両手を下げればその場に伏せる。最後に両手の親指を立てると、全員が前に向かってダッシュした。
――こんなアジリティもしているんだ……面白そう、私もちょっとやってみたいかも。
もうすでに午前の練習をこなしていたせいか、軽いウォーミングアップが終わると、今度は全体練習が始まった。
部員たちが休憩している間も、香奈ちゃんはお水を配ったり誰かの治療をしたりと忙しく動き回る。その表情は真剣そのもので、お兄ちゃんとのアイコンタクトどころか、あれだけ仲がよさそうだった小太郎君たちともほとんど会話することはなかった。
章吾さんやお兄ちゃんが容赦なく部員たちを叱りつける。みんながそれに一生懸命応え、ホイッスルを吹く香奈ちゃんの髪から汗がしたたり落ちる。
――私、ものすごく失礼なことを考えていたのかも。
このハードな毎日の積み重ねがあってこその、あの仲の良さなんだよね……。
気合の入った練習風景をしばらく眺め、夕食の支度をするために合宿所へと向かった。
* * * *
合宿二日目。
今日は楽しみにしていた香奈ちゃんとの自由時間がある日。
朝から晴天にも恵まれ、さぁ楽しむぞ、と思っていたんだけど――。
「さてと、これで洗い物は終わりかな。ねぇ香奈ちゃん、夜のバーベキューの準備まではまだ時間あるし、私達も海にいこうよ!」
「……やっぱり水着を着ていくの?」
「もちろん。章吾先輩との約束でしょう?」
明らかに乗り気ではない香奈ちゃんの手を引き、部屋へと向かう。
香奈ちゃんが渋る理由は私にもよく分かっている。
下手なことをしてお兄ちゃんに怒られたくない、というのがまず一つ。そしてもう一つの理由は、自分にはそんな恰好が似合わないと頑なに思い込んでいるせいだ。
たまに香奈ちゃんは胸が小さいとかブサイクだとか自分を卑下するようなことを言うけれど、私はそれがあまり好きじゃない。女の子らしい小さな身体、色白な肌、そして周りを和ませるような人懐っこい笑顔は、私から見たらとても可愛らしくて憧れですらある。
もしかしたらお兄ちゃんにはちょっぴり叱られちゃうかもしれないけれど、可愛い水着姿の香奈ちゃんを目の当たりにした時のお兄ちゃんや男の子たちの反応を見れば、香奈ちゃんの頑固なコンプレックスも少しは軽くなるんじゃないだろうか。
合宿所の玄関を出ようとしたところでちょうど香奈ちゃんを探しに来た間宮君に出会い、香奈ちゃんは買い出しのため一足先にビーチへ向かうことになった。
私は一人残り、頼まれたクーラーボックスを準備して出ようとしていたんだけど――
「もう、どこにあるの? この辺だって聞いていたのに……あっ、あった!」
やっとお目当てのクーラーボックスを発見し、一人で歓声を上げる。
よく洗って製氷機の氷をたっぷり入れると、結構重たいそれを肩にかけて合宿所を出た。
かなり時間が遅くなってしまったから、もう香奈ちゃんは買い出しを終えてお兄ちゃんのところに行ってしまったかな……。
この合宿で一番の楽しみを見逃した気がして、残念でしょうがない。あとで章吾さんから詳しく話を聞かせてもらうしかないか。
気を取り直して歩き出したとき、ビーチへと続く防風林の中を誰かがこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
――お兄ちゃんだ。それと、香奈ちゃん?
一瞬声をかけようかと思ったものの、二人の様子を見て急いで近くの木立の間に隠れる。
息をひそめる私の横を、泣きそうな顔した香奈ちゃんがお兄ちゃんに引きずられるようにして通り過ぎて行く。二人の姿が合宿所に消えるのを待って、大きく息を吐きだした。
うわぁ、どうしよう。あれは明らかにキレてたよね!? ここは香奈ちゃんを助けに行くべき?
嫌がる香奈ちゃんを章吾さんと私が無理やり説得したっていえば、少しはお兄ちゃんの怒りも収まるかもしれない。でも……。
迷いながら、二人が消えた合宿所にもう一度目を向ける。
真夏の海。誰もいない合宿所。
彼女の水着姿をほかの男に見られて激怒しているお兄ちゃんと、可愛い水着姿の弱りきった香奈ちゃん。
この状況で、次に起こりうることは―――。
「……うん、ほっとこう」
ごめんね、香奈ちゃん。頑張ってお兄ちゃんの機嫌を直してあげてください。
うっかり助けに入って、今度はキス以上の現場に遭遇しちゃったらシャレにならないもんね。
クーラーボックスを抱えなおし、またビーチに向かって歩き出す。
「それにしても……香奈ちゃんってば青春してるなぁ」
お兄ちゃんの超不機嫌な顔を思い出し、香奈ちゃんに悪いとは思いつつも、つい顔が緩んでしまう。
私にもいつか、あのくらい私のことを想ってくれる人が見つかるのかな?
甘く切なく心揺さぶられるほどの想いを、誰かに対して抱くことができるんだろうか――?
それはとても難しい事のように思えて、そんな自分を想像してみることすらできない。
「まだまだ、当分先になりそう……」
しかたない。今は人の恋愛話を聞いて、幸せをちょっぴり分けてもらっておこうか。
バーベキューのときにでも香奈ちゃんを酔わせて、詳しく話を聞きだそうっと。
緩む頬をひきしめつつ小道を抜ける。
たくさんの人で賑わうビーチへと出て、久しぶりの砂の感触を楽しみながら歩いていると、ふいに誰かから腕を掴まれた。
「こんにちは」
――誰だろう、この人。
見覚えのない男の子数人が、とり囲むように話しかけてくる。
歳は私たちと同じぐらい。全員体格が良くて何かのスポーツをしているのは明らかだけど……ガラが悪いし、アメフト部の人じゃない気がする。
「どこに行くの? 誰かと待ち合わせ?」
やっぱり違う。
あからさまにイヤらしい視線で身体を見られ、軽蔑の気持ちを込めて睨み付けた。
「放してください。友達が待ってるの。これを見ればわかるでしょう?」
クーラーボックスを目で指し示す。
「友達って女の子? その子も一緒に遊べばいいじゃん」
「男の子です」
「じゃあ行かなくていいよ。このまま俺たちと一緒にいよう」
「嫌だってば」
「そう怒るなよ。すぐに楽しくなるって」
掴まれたままの腕を振りほどこうとしたけれど、かえって力を込めて掴まれる。
どうしよう。人気のないさっきの道にでも引きずり込まれたらおしまいだ。
もう少し先まで逃げられたら、たくさんの人の目があるしアメフト部の人たちもいるはずだから、何とかなると思うんだけど――。
いっそ股間でも蹴りあげて逃げようかと思ったちょうどその時、聞き覚えのある声が耳に飛び込んできた。
「その子、返してもらえますか」
走ってきてくれたのか、少し息を切らした小太郎君が険しい顔で男の腕を掴む。
「くっ……」
男が痛みに顔をしかめ私の腕を放すと、小太郎君が素早く私を自分の後ろへと引き寄せた。
「何だよ、お前。俺らのツレに手ぇだすな!」
「それはないね。もともとこの子は俺のツレだし」
小太郎君がきっぱりと答える。そして男たちから目を離さないまま、小さな声で囁いた。
「咲良ちゃん、悪いけど章吾先輩たちを呼んできてくれる?」
「でもっ」
「俺なら大丈夫。これでも一応アメフト部員だよ。食い止めるのは得意なんだ」
行って、と笑顔で促されるけれど、動くことができない。
――どうしよう、無関係な小太郎を巻き込んだまま、一人で逃げたりなんてできないよ。
泣きたい気分で辺りを見回した時、少し遠くを歩いている男の子が目に入った。
あのひときわ大きい子、香奈ちゃんの「取り巻き1号」だ! 名前は確か、
「雄大くんっ!!」
眉間にしわを寄せた雄大君が、くるりと振り向く。
「お願い、ちょっと来て!」
誰だこいつ、とでも言いたげに私を見ていた雄大君が小太郎君に気づき、わずかに表情を緩める。
そして男たちに目を移し、また恐ろしい顔に戻ってこちらへと歩き出した。
「……おい、あれはヤバくね?」
どう頑張っても一般人には見えない雄大君の登場に、男たちが焦りはじめる。
悪態をつきつつも逃げるように立ち去る姿を見て、小太郎君が小さく息をついた。
「小太郎先輩、大丈夫ですか? あいつら捕まえてきましょうか」
「いや、いいんだ。ありがとう雄大、助かった」
「そうですか? じゃあ俺、用事あるんで」
雄大君が軽く頭を下げ歩き出す。
「あの、雄大君! 急にごめんね、ありがとう!」
雄大君は一応振り返ってはくれたものの、ニコリともせずに小さく頭を下げると、さっさと行ってしまった。
「私……やっぱり雄大君に嫌われてる?」
昨日もわざと邪魔されちゃったし。
「違うよ。あいつ香奈ちゃん以外の女の子には誰にでもあぁだから」
「そうなの? ……あっ、ごめんね小太郎君。さっきは助けてくれてありがとう」
「いや、気にしないで。結局俺は何もしてないし。――ダメだな、俺。もっと見えるところに筋肉つけないと」
Tシャツ海パン姿の小太郎君が冗談っぽく言って笑う。
「違うの! 小太郎君だけじゃ頼りなかったとか、そんなのじゃなくて……大事な時期なんでしょう? いま暴力事件とかに巻き込まれたら試合に出場できなくなるから、もしかして章吾さんたちが来るまで、小太郎君黙って殴られるつもりなんじゃないかと思って」
「――よくわかったね。実はそうしようと思ってた」
一瞬驚いた顔をした小太郎君が、爽やかな笑顔でさらりと怖いことを言った。
「やっぱり。そんなことをしたら、小太郎君が怪我して試合に出られなくなっちゃうよ?」
「大丈夫。さっきも言ったけど一応これでも鍛えているからね、多少殴られたぐらいどうってことないよ。でも雄大を呼んでくれたのは大正解。一気にカタがついて助かったよ。――俺のことより、咲良ちゃんは大丈夫?」
「え?」
「腕、赤くなってる」
さっき掴まれていたところに目を向ける。よほど強い力だったのか、そこには手の跡がくっきり赤く刻まれていた。
「……気持ち悪い」
あんな変な人に触られたなんて気持ち悪い。バイ菌がいっぱいついていて、ここから腕が腐ってきそうだ。
不快感も露わにごしごし擦る。海に行って洗ってこようかと思った時、小太郎君がいきなり自分の着ていたTシャツを脱ぎだした。
思っていた以上に引き締まった男らしい体を目の当たりにして、息をのむ。
「まだ着たばかりだから、多分汗臭くないとは思うんだけど……。よかったらこれ着ておきなよ。腕まで隠れると思うよ」
「……あ、ありがとう」
「そういえば、さっき香奈ちゃんの水着姿を見て司先輩がキレちゃってさ。咲良ちゃんも、何か上に着たままでいた方がいいかもね」
お兄ちゃんに怒られるよ、と小太郎君が微笑む。
「実はさっき、合宿所の前で二人とすれ違ったの」
「そっか。先輩、香奈ちゃんを着替えさせに行ったんだ」
「え、そっち?」
「そっちって?」
「いや、つい……合宿所には誰もいないし、怒った勢いでひと夏の思い出作りをしているものかと」
小太郎君が目を丸くする。そして、ぷっと吹き出した。
「見かけによらず、すごいことを言うね、咲良ちゃん!」
「そう? 漫画や小説では結構ありがちなパターンなんだけどな」
「本当に? まぁ、もしそうだとしても、あの二人に限ってそれはないね」
「わかんないよ。だってあんなに熱いキスをしちゃう二人だし」
「それってあの夜のこと? あれは部活外の時間だし、俺たちもいないと思ってのことだろう? いくら自由時間とはいえ、合宿中にってのはありえないよ。押し倒すよりもむしろ、正座させて説教している可能性の方がはるかに高いね」
自信たっぷりに言い切られ、それもそうかと納得する。
「……これ、本当に借りてもいいの?」
「もちろん」
小太郎君が頷くのを待ってTシャツを着る。それは私には大きすぎて、腕のあざはもちろん、腿までたっぷり隠れるぐらいだった。
「なんかドキドキするね。男の子の服を借りるなんて初めて」
「そう?」
「この夏一番の思い出になるかも。本当にありがとう」
冗談ではなく、きっと一生忘れられない思い出になるだろう。
生まれて初めて男の子に身を挺して守ってもらったことも、こんな風に服を貸してもらったことも……。
「咲良ちゃん、大げさ。そろそろみんなのところに戻ろうか」
小太郎君が優しく笑い、クーラーボックスを手に歩きだす。
その後ろ姿がとても頼もしく見えて……なぜだか嬉しくてたまらなくて、貸してもらったTシャツの裾を、きゅっと握りしめた。