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第31話 恐怖の朝part3

「ん……」

 まどろみの中、枕とは違うなんだかごつごつした感触に気付き、目を閉じたまま手を滑らせる。


 ――これ、なんだろう? すべすべしていて温かい……あれれ、今動いた?

 うっすらと目を開け、ぼんやりと考え込む。

 なんで目の前に人肌があるのかな?

 あぁ、そっか、夢の続きね。やだなぁ、こんな生々しい夢を見るなんて、私のエッチ。


 くすりと笑い、もう一度寝なおそうと目を閉じた時だった。

「起きたか? 平川」

 少し掠れた司先輩の声が耳元で聞こえ、かっと目を見開く。

 ゆ、夢じゃない? 

 びしりと硬直したまま、目だけを動かし大急ぎで周りの状況を確認する。

 上半身裸の司先輩と、その腕の中にいる素っ裸の自分……。


 どっ、どうしてぇぇ―――!!!


 血の気が一気に引きすぎて、強い眩暈と吐き気がした。




 あまりの衝撃に、司先輩の腕の中に納まったまま身動きが取れない。

 司先輩はそんな私をじっと無表情で見つめている。


 昨日、何があったんだっけ!? ラグビー部の人たちとご飯を食べて、確かいろんな質問されて……。

 でも司先輩はあの場にいなかったよね。どういうこと? 私、司先輩に会いたい一心でここに来ちゃったの!?

 ――ああっ、もっ、もしかしてっ!! 

 そうだよ、このありがちなシチュエーション、それしかないじゃん!!

 

「平川、あのな」

 司先輩が私の身体に回していた腕をとく。

 その瞬間、二人の上にかけられていたタオルケットを速攻で身体に巻きつけると、ベッドから飛び降りた。

「おい、ちょっと待て!」

 慌てて起き上がった司先輩の足元に、びしりと正座する。


「司先輩、すみませんでしたっ! お、お、お酒に酔っていたとはいえ、取り返しのつかないことをっ!!」

 司先輩がいぶかしげに眉を寄せる。

「――どういう意味だ?」

「私、酔っぱらった勢いで、司先輩に、よっ……よっ……」

「よ、なんだ」

「よっ、夜這いをかけちゃったんですよねっ!? ううっ!」

 いくら大好きだからって、なんてことをしちゃったんだろう。

 襲ったのが女の子の場合、いったいどうやって責任をとれば……!? 


 全力で土下座している私の頭上で、司先輩が小さくため息をつく。

「――お前な、この体格差で俺がお前に襲われるわけないだろうが。そもそも、経験もない女が男を襲うか?」

「襲ってないですか? ――いきなり部屋に突入して、抱きついたりなんてことも?」

「やってねぇ」

 そ、そうなんだ。とりあえず最悪の状況だけは免れたらしい。

 でも、そしたらなんで? どうしてこんなことになってるの?


「襲ったのはこっちで、襲われかけたのがお前だ」

「先輩が襲った? この私を? ――なぜですか?」

 こんなにカッコよくて色気たっぷりの先輩が、ブサイクで色気ゼロな私を襲う……。そんなことが起こり得るのだろうか。

「なんでだろうな」

 そう、本当になんでだろう。もしかして、急に奇跡が起こって……

「お色気ムンムン?」

「それはない」

「ですよねぇ……あっ、何かの罰ゲームですか?」

「それも違う」


 分からない。全てが謎すぎる。

 あの店からここに来るまでに一体何が起こったんだろう。

 こんな状況を引き起こすような、どんな出来事が――?


「すみません、どうか状況説明をお願いします」

「……お前、昨日泉川に誘われてラグビー部の飲み会に行っただろう?」

「はい」

「もう行くな」

「え? あ、はい」

「それから――色気は後回しにしてやる。俺と付き合え」

「えっ?」


 今の、聞き間違い? それとも冗談?

 でも司先輩の顔はいたって真面目で――


「平川、返事!」

「はっ、はいっ!!」


 ……先輩、本気だよね? からかっているんじゃないよね?

 どうしてこんなことになっているのか、さっぱりちっとも分からないけれど……私、もう司先輩の彼女なの?


「先輩……本当ですか?」

 ああ、だめ。涙が止まんないや。

 みっともなく泣き出した私を見て、司先輩が優しく笑う。

「あぁ。――来い、香奈。昨日の続きだ」

 夢見心地のまま、その腕の中に引き寄せられた。





次で第一部完結です。

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