Blue Print
ゆといが混ざってる
普通に生きてきた と思っていた。
いつからだろう、自分の思い描いていた人生とずれだしたのは。
思い描いたといっても、なにもお金持ちになりたいと思ったわけでも、たくさんの人からちやほやされ、賞賛を受けるような人生を送りたかったわけでもない。
よくある、大学を卒業し、中規模の安定した会社に就職し、恋愛して1~2年付き合った人と27歳から29歳くらいの間で結婚して子供をもうけ産休、育休を取得し職場復帰、共働きで家事も分担し家族仲良く楽しく暮らす。
これが普通だと思っていた。日本人の大多数はこれを幸せだと信じて生きているとまでおもっている。
世間からはみでると、はじかれると、このレールに乗らなければ、なぜかかわいそうな人か問題ありの人になってしまう。生きづらくなってしまう。みんなが思う普通の幸せ通りを生きていこうと、そうやって生きてきたし、生きていけるとも思っていた。
小学校、中学校、高校、大学、特に成績がいいわけでもないが悪いわけでもなく、多少ごたごたはあったが許容範囲で友達もいてご飯にいったり、旅行に行ったり、わりと楽しく過ごしていた。理想通りに順調に進んでるはずだった。
入社3年目
オフィスで電話がなる。誰もでないので私が出る。
「お電話ありがとうございます。カルトレリア相田です。」
電話の相手は取引先だ
「マークの田中と申します。磯田さまいらっしゃいますか?」
「お繋ぎいたしますので少々お待ちください」
保留にして磯田にまわす。
「磯田さんマークの田中さんからお電話です」
はぁーー
とため息をついて磯田が電話にでる。
電話をまわすと返事もなくただただため息をつかれる。
磯田が電話にでるのが嫌なわけではなく私に対しては毎回この反応だ。
私はここでは居場所がない。居場所がないとゆうよりも、そもそも存在しているのかすら、わからない。
理想通りの中規模の会社に就職したはずだった。営業事務で主に電話・メール対応や資料・書類作成、雑用など営業の人のサポートをしている。難しい作業もなく定時退社できるわりとホワイトな企業だ。けれど、入社してすぐ不景気になり新卒の採用が見送られ、私は常に一番下の社員になった。
先輩たちは歴のながいお局、そのお局に媚びる派手目な仲良し3人組。
すでに人間関係が構築されており、私が入る隙間などみじんもない。話すときはたいてい仕事を押し付けられる時だ。
学生時代は友達もいてあまり気にしていなかったのだが、私はどちらかとゆうと地味らしい。
先輩たちは大きい声でしゃべっているので色々聞こえてくるが大体は社内の人間の悪口か、狙っている社員のプライベート情報なので参加したいとも思わない。
まぁ、これは私のつよがりかもしれないけれど。
営業はそのほとんどが男性社員で営業事務のすぐとなりに営業の人たちの机がある。
その営業の男性陣からも私は地味で存在しない空気のような扱いになっている。それならまだいいが、時々あざ笑うかのようになにか悪口をゆわれているようだ。
まぁ、もう3年。なれた。今は不景気。転職して就職先を探すほうが大変だ。
とりあえず空気でいい。存在しなくていいから、平穏に。下手にかかわると心が乱されるので、できるだけ誰ともかかわらないように過ごす。
PCの右下の時刻が17:00になった瞬間片付けてすぐ会社を出る。電車にのり最寄り駅で降り、そのまま帰宅する。週に2回スーパーに寄ることもあるが、ほぼ毎日、家と会社を往復するだけの生活を送っている。
休日もスーパーやたまに買い物に行くくらいでほぼ自宅にいる。友達はいるにはいるが、みんな結婚したり、彼氏がいるのでたまに食事にいくくらいで、予定がある休日の方がとても少ない。
充実した生活を送りたいとは思うが、どうしていいかわからない。趣味もないし、することがない。映画やドラマの配信を見て1日が過ぎていく。
安定した企業ではあるが、不景気なこともあって給料は安い。ただ、家賃と生活費以外にお金を使うことがほぼないので、将来結婚した時の為に貯金は多いほうがいいと思って、まじめにコツコツ貯金をしている。
機械のように、毎日同じことを繰り返す代わり映えのない生活
17時、いつものように定時で会社を出て駅に向かうと、突然声をかけられた。
営業の藤田さんだ。藤田さんは30歳で営業の中でも若手のエースで、背も高く、顔もシュッとしていて、頼りになるし、とても優しい社内でもかなり人気が高い人物だ。
あまりかかわることは少ないが、私のことも空気のように扱うことはなく、丁寧に対応してくれる。
彼女は今のところいないらしい。なぜこの情報をわたしが知っているかというと、仲良し3人組のうちの一人は藤田さんを狙っている。毎日のように藤田さん情報を大声でしゃべっているのでいやでも耳に入ってくる。
そして、私が藤田さんとあまりかかわることが少ないのは、藤田さんの案件に関しては、その狙っている先輩が全部対応するのと、下手に関わると攻撃されるので、穏便に過ごすために最低限関わらないようにしているからだ。
「お疲れ様です。相田さん今帰り??」
「お疲れ様です。お先に失礼します。」
「あ、ちょっと待って、この資料作ってくれたの相田さんだよね?? さっき取引先ですごくわかりやすいって褒められて助かったよ、ありがとう」
「いえ、お役に立ててよかったです」
「そうだ、今度時間があったらご飯でもどう??」
「え・・??」
「ごめん、急にびっくりするよね、でも相田さんとあんまり話したことないから、一回話してみたいなって思って」
「私で、よければ」
「じゃぁ、あとで連絡するね!おつかれさま!」
「お疲れ様です」
なにが起こっているのだ。
資料が褒められたまでは、まだありえる。
ごはん??空気のような存在の私がごはんに誘われるなんてありえることではない。
とゆうより、あの資料は確かに先輩に押し付けられ私が作ったものだが、先輩は自分が作ったといって藤田さんに渡しているはず。なぜ私が作ったことを知っているのだろう。
ありえない状況に嘘かもしれない、社交辞令かもしれないとゆう思いと、あの藤田さんと先輩をさしおいてご飯にいけるかもしれない、ちゃんと自分のことを見てくれる人がいたんだとゆう思いが入り混じって頭がこんがらがり、スーパーによるのを忘れて帰った。
家に帰ってからも、頭が落ち着かない。テレビをつけても何も頭に入ってこない。
ただの社交辞令だし、同僚として誘われただけだとゆう思いと、先輩からの誘いを断っているところを見たことがあるので、もしかしたら、もしかしたら、1%くらいかもしれないけど、何かあるかもしれないとゆう淡い期待が交差し、そう思うたびに顔がにやついた。
そんな時、藤田から、メッセージが届いた。部署ごとに緊急連絡用のグループメールがあるので、そこから連絡先を確認して送ってきたのだろう。
『お疲れさまです。さっきのご飯なんだけど、来週の木曜日なら早く帰れそうなので、木曜日はどうですか??』
本当だったんだ。うれしい反面、失礼のないように返信しなくては、どう返信したらいいのだろう、木曜日なにを着ていこう、そんなことでまた頭がいっぱいになり、気が付いたらソファーで悩み1時間がたっていた。さすがにそろそろ返さないと失礼だと意を決して返信した。
『お疲れ様です。木曜日大丈夫です。』
1時間も悩んでおいてこの文章しか出てこなかった、なんて愛想のない返信なんだ。自分で見返してもそう思う。
世の女性たちはみんなどんなメッセージのやり取りをしているんだ。そう考えているとすぐに返信が来た。
『よかった。実は行ってみたいお店があって、ここなんだけど、18:30に予約しておくから当日そこで待ち合わせでもいい??』
とゆうメッセージとともにお店のURLが張られていた。
開くと、おしゃれでカジュアルなイタリアン居酒屋だった。おしゃれすぎる。私は場違いになりそうだと思いながら返信した。
『了解しました。美味しそうですね。よろしくお願いします。』
頑張った。まだ、愛想はないかもしれないけど、美味しそうですねと入れたのを褒めてほしいくらい頑張った。
それより、どうしよう。木曜日におしゃれしていくとほかの社員に何かあると感づかれるし、あまり気合を入れた服をきていくと藤田さんに引かれるかもしれない。ただ、いつもの服でいくと地味すぎてお店で浮いてしまうかもしれない。
考えることが多すぎて疲れた。とりあえず休日に洋服を探しに行こう。
次の日、藤田はいつも通り挨拶程度で話すことはなかったが、先輩が珍しく私に話しかけてきた。
「相田さん。こないだ手伝ってくれた資料のおかげで藤田さんに褒められたんだー。ありがとう。だからまた今度何かあったら手伝ってね。でも、相田さんが手伝ったことは藤田さんに内緒にしておいてね。よろしく。」
ありがとう?? びっくりした。先輩からありがとうなんてゆわれたのは初めてだ。手伝ってくれてって、、、、、、あの資料はすべて私が作りましたけど??
とは思ったが、藤田さんはすでに私が作ったことに気付いているし、なんなら来週ご飯に行く約束をしているので、なんの怒りも沸いてこず。むしろ若干の優越感すら感じていた。
そして休日、服を買い行くために着ていく服がない。クローゼットをあさり何年前に買ったかわからないちょっとましな服をきて買い物に出かける。
どんな服がいいか、どんなことを話すのか、木曜日のことで頭がいっぱいで、たくさん悩んでおかしくなりそうだったが久しぶりに充実感に満ちた休日になった。




