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強盗に入ったら犯罪者の巣窟だった  作者: 二上たいら


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ハードル 07 ランオフ

 壁の手前で車を停止させる。


 周囲では警官隊が慌ただしく駆け回っている。


 私は車から降りて、壁と赤らんだ空を見上げた。


 後ろでチャキ、と金属音が鳴る。

 銃の安全装置を外した音だ。


「いま確信しました。協力者はあなただ。容疑者逃亡幇助の罪で拘束します」


「なぜそう思う?」


「容疑者は我々の動きを知っていたとしか思えません。確かあなたには妊娠した非合法市民を匿ったと疑われた過去がありましたね。結局証拠は見つからず無罪放免となったようですが、今回の件はあまりにも似ている。過去の贖罪ですか?」


「よく調べたものだ」


 新人ルーキーの言うことは間違っていない。

 私にはかつて妊娠した非合法市民を匿い逃がそうとして失敗した過去がある。

 証拠が残らないように注意深くやっていたため、罪には問われていないが。


 新人ルーキーは私に銃を向けたまま、無線のスイッチを入れた。


「逃亡した容疑者の協力者を見つけました。応援を要請します」


 周囲で忙しくしていた警官隊が慌ててこちらに駆けつけてくる。

 私たちを取り囲み、そして銃を構えた。


 新人ルーキーに向けて。


「なにを!? 違う! 協力者はこっちの男だ!」


「本当によく調べ、よく考えたものだ」


 私はため息を吐く。

 そうであって欲しくはなかったが、現実はいつでも非情だ。


「君は非合法市民を摘発するために捜査している最中に、とある一級市民が妊娠した非合法市民を匿っていることを知った。この時にもう絵図が完成していたんだろう」


「なにを!? なにを言って!」


「君はこの一級市民を強請り、金を受け取っていた。昨日も受け取りの日だったんだろう。しかしそこで何らかのトラブルが起きた。君は被害者たちと争いになり、故意かどうかはわからないが殺害してしまう。まあ最初から罪は私になすり付ける予定だったから、それでも良かったんだろ」


 新人ルーキーの顔色は真っ青で、膝はガクガクと揺れ、今にも倒れてしまいそうだ。


「だがそこで起きた予想外が今回の容疑者だ。事情はよくわからないが、彼に目撃された君は、罪をなすり付ける対象を彼に変更したんだ。現場をうまく整え、素知らぬ顔で署に戻った君は、こっそりと匿名で通報の電話をする。あとは現場に残した彼が逃げさえしてくれれば、捜査を引っかき回せる」


「違う! 本当に違うんだ!」


「銃を下ろして両手を上げろ! これは警告ではない! スリーカウントで強制的に拘束する!」


 警官隊が声を張り上げる。


「スリー!」


「彼の個人端末を! 容疑者と連絡を取り合った記録ログがあるはずだ!」


「君がするべきなのは今すぐ投降することだ」


「ツー!」


「自室から見つかった大量の金品について言い訳を今から考えておくといい」


「ワン!」


 新人ルーキーはたまらず銃を地面に置いて、両手を上げた。

 警官隊が駆け寄り、銃を蹴り飛ばして、新人ルーキーを拘束する。


「彼のことも調べるべきだ!」


「黙れ! 君の身柄は公安に送致され、そこで取り調べを受ける。君には黙秘権があり、何を話しても構わないが、発言はすべて裁判において不利な証拠として採用される可能性がある。君には弁護士を呼ぶ権利があるが、自分で呼ぶことができないのであれば公選弁護人が割り当てられる。連れて行け!」


 拘束された新人ルーキーが連行されていく。

 それを見送った私に警官隊のひとりが声をかけてくる。


「災難でしたね。とんでもないヤツがいたもんです」


「それで逃走者は?」


 彼は肩を竦め、小さな声で私だけに聞こえるように顛末を呟いた。

 私はそれを聞いてようやく安堵の息を吐く。


 これで今度こそ終わった。


「私も何かしら調べられるだろう。署に戻って大人しくしているよ」


「はい! お疲れさまです!」


 車を署に向かって走らせながら私は個人端末を操作し、そして窓から投げ捨てた。

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