とあるオジサンたちの日常 歯医者
関西訛りのおじさんのポンポンリズム感ある会話が書きたいから始まったこの短編。
結果幼いキャラみたいな行動をさせてしまった。一人称「ワシ」に感謝と謝罪を。
コントのように日常の一コマが描けていれば幸いです。
「行こか」
「行かれまっか? ほな」
「あぁ、ほな。……いや、何やっとんじゃ。お前も来るんじゃぼけぇ」
「ワシはまだボケてない」
「いいから来んか。一緒に行くんじゃ」
「いやや」
「いややじゃない」
「いや、ワシがおらんでもお前だけで何とかなるだろう。安心しろ、お前ならできる」
「おぉ、そうか、俺ならできるか? 何かわからんが、認められたようで嬉しいな、それ。よし、いっちょいったろか」
「ほなな」
「あぁ、ほな」
「あいつはすごいやっちゃで」
「うんうん、そやろ。って馬鹿か! 歯医者行くんやろうが! お前が受けるのに、お前が居なくてどうすんだ!! たわけ」
「何言う。お前はそれほど凄いやっちゃということやないか、ワシが行かんでもどうにかなる!」
「ならすか! アホも大概にせなあかんで! ホンマに、ワレー」
「行きとうないもん。怖い」
「どっかの子供か?! 俺とお前は同い年やろうが」
「そうなんでかワシこんなふけてまって。どうしたらいい」
「アンチエイジングせい」
「そんなことやないんや、根本から違うんや」
「そうか、それは大変やのう。って違うがな!」
「何が違うっていうのよ!」
「何オネー言葉になっとるんじゃ、われは。拍子抜けじゃ」
「違う、うち悪くない。あの人が美味しい料理作るんが悪いのよ」
「お前嫁さんのせいにしてどないするねん!」
「アチキのせいと違うのに」
「……おまえの怖いから行きたないって愚図って奥さんが大変だっていうから俺がこうしてわざわざ歯医者に予約して迎えに来てやってるっていうのに、お前はー、まったくー」
「だって、キーイーイイーンが怖いねん」
「大丈夫や、今の人は昔と違って上手にしてはるから。なんだったら麻酔でも一発かましてもらえ」
「は……」
「針やないのがあるから」
「ホント?」
「ホントに決まっとるやろう。奥さん何も感も調べて予約してあるからって俺に頼みに来たんだぞ。全く」
「ワシ、幸せもんだ」
「ようやく俺たちのありがたみが分かったか」
「な、なんで泣くの?」
「なんでって、だぁあー!! どれほどそのセリフがお前の口から発せられるのを待ち望んでおったことか! ようやく実ったわ!!」
「そんな鼻水までたらさんでも、どうしよう。瑞樹ちゃん、顔拭くもん貸して」
「は゛い」
「えっ?! 瑞樹ちゃんまでなんで泣いとんの?」
「あはは」
「あははって。瑞樹ちゃんも拭きや」
「う゛ん、ありがとう」
「なんか、こちらこそ、ありがとうやないこれ? そういうことでしょ」
「そういうこと、そういうこと。あー、かー。」
「ふたりともありがとう。付いてきてくれるか」
「分かったから、ほな財布と身分証明書持ったか?」
「は゛い、持ちました」
「ほな行くで。二人とも後部座席座って手でも握っとけ」
「うん、そうする。瑞樹ちゃんそうしよう。そうしたい」
「分かった」
ーバタン。バタン。
ーバタン。
「あーどうなる事かと思ったわ」
「30分もかからずに車に乗り込めましたね」
「流石、瑞樹ちゃん。しっかりしてはる。主婦の鏡や、お母さんやなぁ」
「涙流しながら、冷静って。ワシ奥さんとんでもなく凄い人ちゃうの?」
「今頃気づいたか。馬鹿め」
「それ、司馬懿ですか?」
「そう、ワシがゲームに出てくるそのセリフにハマったときあってな」
「「ネタやねん」」
「ほな、行くで」
「出発進行! 宜しくお願いします」
「いつも思うけれど、丁寧やね」
「そやろ、俺たちはこうして言うようにしてんねん。運転手さんに”ありがとう”ってな」
「いいね」
「「ええ、やろう」」
「「「あははははは」」」
「このままドライブ行っとこー!」
「アホたわけ! 歯医者じゃ! それ終わってからじゃー!」
「いやったー!!」
「「ははははは」」
「現金なやっちゃなぁー」
「もう着きよるでぇ」
「早くないか? ええ、ところだったやろう?」
「はいはい。後からもっと楽しくなるから。先ずは歯医者に行って、それからドライブして遊ぼうね」
ーバタン
ーバタン
ーバタン
「着いたぁ」
「手ー繋いで入ろうね?」
「そこまで子供やない」
「何言うてんの、今まで散々子供のように駄々こねてたやつが。呆れてものも言えんくなるわ」
「あぁ、あー。ごめんて。ホンマに怖いねん」
「分かっとるで、はよ入るぞ」
大人になっても怖いものありますよね。今回は歯医者でした。
奥さんと親友という存在の有難さがにじみ出ていたら嬉しいです。
こうして苦手なこと、進めたくても進めれなかったことを手伝ってもらって進む。
存在の有難さを描いてみました。




