91
やってることが正反対すぎる……と思っていると、シオンハイトが急に抱き着きてきた。抱き着いてきた、というか、わたしを抱え込むようにして、机の下に隠れたというか。
突然のことに、わたしは驚いて声を上げそうになってしまう。慌てて口を手で塞いだ。たぶん、声にはなっていないはず、ギリセーフ。
シオンハイトの顔を見れば、目線はわたしの方ではなく、扉の方に向いている。誰か来たのかも。
二重の意味でドキドキしながら待っていると、わたしの耳にも足音が聞こえてくる。ぎくり、と体がこわばった。
シオンハイトがこういう行動に出たということは、人が来たのだろうと察することはできたけれど、いざ本当に足音が聞こえてくると、胃の底をきゅっと掴まれたような感覚がわたしを襲う。
バタバタと走り回るようなものではなく、普通に歩いている音だから、まだ、わたしたちが抜け出したことはバレてないよね、と思いながらも、不安をかき消すことができない。
口を塞いでいない方の手で、シオンハイトの服を掴めば、音が出ない程度に、軽く、シオンハイトが肩を撫でてくれた。
服越しのその感触に、少しだけ、気持ちが落ち着く。
扉が開かれることはなく、足音が遠のいていく。それに合わせて、せわしなく動いていたシオンハイトの耳の動きが落ち着き、ふっと、シオンハイトが息を吐いて、彼の体の緊張が解けたのが分かった。
無事にやりすごせたらしい。
それにしても、本当に心臓に悪いので、早いところ証拠を見つけてここを抜け出したい。
「無理に押し込んでごめん。体、痛くない?」
ぼそぼそと、シオンハイトがわたしの耳元でささやく。非常にくすぐったい。
「……大丈夫」
大人二人が机の下にもぐるにはギリギリだったが、どこか体を痛めているということはない。心臓が早く動きすぎて痛くはあるけれど。
わたしは机の下から這い出てようとして、机の天板の裏側に手を引っ掻けてしまう。
「いたっ」
まさかこんなところで怪我をするとは。天板の裏がささくれ立っていたのかと、思わず引っかけたであろう場所を見た。
「……?」
なんだか違和感がある。わたしは、怪我をしないようにそっと、その場所を触る。……何か、押し込めそうな場所がある。
わたしがその場所を押し込むと、カコッと軽い音がした。思わずシオンハイトの方を見てしまう。彼もこんな場所にこんなものがあるなんて、全く気が付いていなかったようで、目を丸くしていた。
わたしはもう一度、押し込んだ場所を見てみる。……天板、少し浮いてる?
えい、とわたしは押したまま天板を動かしてみると、厚い机の天板だと思っていた場所から、引き出しが現れた。




