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わたしたちが見つけないといけないのは、ライレグーンという国があることの証明、そして、そのライレグーンが奴隷売買を違法に行っていること、それにリンゼガッドとオアセマーレの両国が関わっていること、その証拠だ。
奴隷売買の証拠探しはそれほど難しくないはず。
ここが奴隷売買の本拠地だというのなら、商品リストや出荷先のリストがどこかにあるはず。島自体を『異能』の力で隠しているのであれば、意外と管理がずさんなことが期待できる。
リストや顧客情報は非情に重要な情報なはずだから、厳重な管理の下にある可能性もあるにはあるが、この島自体が隠蔽されているなら、と管理が甘くなることも十分にある。流石にその辺へ、ぽいと置かれていることはないだろうが、何重にも鍵がかかっている金庫に収められている、ということもないかもしれない。
ライレグーンは共通語と違う言語を使っているが、オアセマーレやリンゼガッドが関わっているというのならば、いずれにせよ、共通語に翻訳されたものがある可能性が高い。
探すものが多いので、二手に別れた方が効率はいいかもしれないが、危険すぎるので、提案するのはやめておく。
シオンハイトは耳がいいから、足音をいち早く聞くことができるだろうし、扉の向こう側に誰がいるか確認することも可能なはず。
わたしが脳内で探すものの整理をしていると――。
「ティア」
偽名を呼ばれて振り返ると、シオンハイトが拘束を抜けて立っていた。……えっ、両手を縛られていたのに、簡単にほどけるものなの?
一応、ライレグーンについたら、様子を見て拘束をほどき、行動しよう、とシオンハイトは言っていたけど……。
わたしがびっくりしている合間にも、シオンハイトはするするとわたしの腕の縄をほどいていく。
「こういうのはコツがあるんだよ」
わたしが言いたいことを察したのか、シオンハイトがそう教えてくれた。騎士団って言うのは、そういう訓練までするのか……。
あっという間にわたしの手は自由になる。手首についた縄の跡を、シオンハイトがなぞった。
「……痛くない?」
心配そうな声音。実際はそこまで痛くはない。こんなに赤くなっているとは全然思わなかったくらいだ。
「大丈夫だから、今、外に人がいないなら行っちゃおう」
わたしの言葉に、シオンハイトは未だ心配そうな顔をしつつも、扉に耳をつけ、外の様子をうかがっている。ぴくぴくと彼の獣の耳が小さく動く。
「……うん、大丈夫」
そう言いながら、シオンハイトがゆっくりと扉を少しあけ、廊下を確認し、サッと出た。
証拠探しの始まりである。




