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レギーナ様と話をしたこと。
ライレグーンの話。
それから、爆発があって、女王様と取引をしてしまったこと。
そして、わたしの『異能』を使って別人になりすまし、わたし自身が行動すること。
帰国した夜、全てをシオンハイトに話すと――。
「絶対に駄目」
――と、バッサリ切り捨てられてしまった。とはいえ、この反応は想定内である。
わたしだって、もし、シオンハイトが「一人で調査してくるね」と言ったら、全力で引き留めると思う。
「黙って行動しなかっただけマシだけど、一人で行かせられないの、分かるでしょ」
シオンハイトの言葉に、わたしは反論できなかった。その通りだからである。
「……そのくらい、あの約束を大事にしてくれてるのは嬉しいよ。それだけじゃなくて、僕の国のためにも、ララの国のためにも、動かなきゃいけないって言うのは分かる。でも、それと同じくらい、ララが――ラペルラティアが大切なの」
何も言えない。わたしだって、土壇場で、シオンハイトを選んでしまったから。
「――……僕もついてく」
「えっ!?」
その反応は想像していなかった。てっきり、別の誰かに頼もう、と言い出すのかと思っていたのだ。……それこそ、フリードさんとかに。
「ララの理論なら、僕だって見た目を変えられるでしょ。なら僕も行く」
「僕もって、あぶ――」
危ないよ、と言おうとして、わたしは言葉をひっこめた。そう言ってしまえば、余計に「ほら危ないでしょ!?」とシオンハイトに言われるのが目に見えているのだ。
わたしは代わりになりそうな言葉をなんとか探してひねり出す。
「……わ、わたしは普段、部屋にこもってばかりだもの。でも、シオンハイトは仕事もあるし、いなくなったらバレちゃうでしょ」
「それを言うなら、逆に、部屋からあまり出ないんだから、地理が分かってないでしょ? ここから城下町まで、誰の案内もなく、誰にも見られないで、ばれないで、行ける?」
無理だった。行けるわけがない。つい先日、馬車で出国したから、城下町までは、多分、行けると思う。でも、誰にも見られないで、なんていうのは絶対に無理だ。わたしが通ったのは表の道で、人通りが激しい場所ばかりだった。
「……あんな爆発騒ぎがあった直後だから、僕が、ララも守るし、僕も守る、なんて言っても信用ないかもしれないけどさ。でも、何があっても、ララを一人で行かせたくないの。行動することが駄目なわけじゃないんだよ」
そして、一呼吸おいて。
「ララ、急ぐなら、今晩のうちに出た方がいいかも。終戦に向けての会議があんな風になってしまったら、夜の間に今後の動きが決まるだろうから、今以上に動きにくくなる。僕が怪我をしていなければ、僕だってその話し合いに駆り出されただろうしね」
シオンハイトの言うことはもっともだ。むしろ、あんな、国のトップクラスが狙われたにも関わらず、帰国して一晩、という猶予があるだけマシな気がする。
迷っている余裕は、本当になさそうだ。




