74
あれこれと話を進め、やること等を決めていく。リンゼガッドの方へ戻るときは、双子の妹の方であるフィアを連れていくことになった。
リンゼガッドへ嫁ぐことが決まり、他の令嬢はわたしと違い、数名、信用できる侍女を連れて行っていたが、わたしには該当する人物がいなかったので、誰も連れて行っていない。
しかし、実はレギーナ様の元へ行ってしまったメイドがわたしの信頼できる侍女であり、今回、オアセマーレに戻ったときにレギーナ様から返してもらった、という設定でいくらしい。
ちなみに、彼女たちの『異能』については、半径五キロ圏内に相手がいれば交信できる、という、説明をすることになった。こうすればレギーナ様との連絡役ということは、ある程度隠せるだろう。オアセマーレの人間に対しては時間稼ぎになるか怪しいものの、リンゼガッドに対してはある程度騙せるはず。
完全に違う『異能』を設定してしまうと、バレる可能性が高くなる、ということで、嘘半分、真実半分、という『異能』になった。
「――……あの」
決めていくことがあらかた落ち着いたところで、わたしは声を上げた。
「このことは、誰にも言わない方がよいのですよね?」
「……君の配偶者のことか」
わたしの言いたいことが分かったらしい。きっと、シオンハイトにこのことを話せば、協力してくれるだろう。
でも、そう思うのは、彼のことを知っているわたしだからで、何も知らないレギーナ様からしたら、シオンハイトは敵国の王子。警戒するべき人物だ。
「君は、シオンハイト殿が今回の一件に協力してくれると思うのか?」
「――……はい」
わたしは、うなずく。
レギーナ様は腕を組んで、少し考え込むようにしてから、「君が信用に足る人物だと思うのであれば、話しても構わない」と言った。
「ただ――真実を明らかにし、終戦に至るまで、その行動を成功させ続けねば、『不慮の事故』が起きると思ったうえで、話すといい」
『不慮の事故』。つまりは、口封じのために、事故に見せかけた殺害のこと。
ここから先、信用する人物は、同時に、わたしたちの命を預ける人物にもなりえるということだ。
人を信じようと思い始めた人間には、信用するための対価が重すぎる。
それでも、わたしはシオンハイトにこのことを話すつもりでいた。
その決意が表情に出ていたのか、王女様が、ふっと笑った。
「敵国の人質としてしまうような婚姻ではあったが、君にとって良い出会いになったようでなによりだ」
……オアセマーレにいた頃、レギーナ様とは、そこまで交流をした記憶がないのだが。そんな彼女にまで、わたしの人間不信っぷりが伝わっているのかと思うと、今更ながら恥ずかしくなってきた。
「君の信用を裏切らない私でいられるよう、最善の努力をしよう」
レギーナ様は、力強くうなずいた。




