表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/89

06

 わたしが転生したこの世界には、『異能』と呼ばれる、特殊な能力があった。バトル漫画に出てきそうな、殺傷能力が高いものから、異世界転生漫画にありそうな使いようによってはチート級にもなるようなもの、果ては本当にどう活用しようと努力してもどうしようもないくらい下らない能力まで、様々だ。

 そして、その『異能』は、不思議なことに、人間の女性にしか発現しない。だから、前世に比べてちょっとだけ、女性の扱いが違う。


 男尊女卑の逆、女尊男卑、とまではいかないが、女性の方が優遇されがちだし、家を継ぐのは女性だと決まっている。極まれに男性でも『異能』を持つ人もいるけれど、あんまり扱いは良くない。ハーレム漫画のように特別扱いをされることはなくて、どちらかというと、本当は女に生まれるはずだったんじゃないか、と腫れもの扱いされることが多い。

 わたしがやってきたこの国、リンゼガッド王国は、住民の九割以上が獣人だ。人間は、ほとんどいない。だから、人間しかいない国々に比べたら、『異能』持ちなんて、本当に数えるくらいしかいないだろう。


 もちろん、『異能』持ちがいないからといって、この国が劣っているわけじゃない。むしろ、『異能』持ちがいないにも関わらず、わたしたち人間の国と長期に渡って戦争をするだけの能力があるのだから、『異能』以外の技術が、かなり優れていることの証明である。

 前線に立つ女軍人の中には、どんな物でも一刀両断してしまう、といった類の『異能』を持っていたり、どんな大怪我でも一瞬で治してしまうような『異能』を使える人もいる。戦闘力も回復力も、文字通り桁違いのはずなのだ。


 それでも、この、獣人ばかりのリンゼガッド王国は、わたしたち人間の国と戦っていた。

 たとえ停戦だとしても、『異能』という力を欲するのは無理もない。戦争を通して見た『異能』は、きっと強大な力に感じたことだろう。

 ……でも、わたしの『異能』って、戦闘にはなんの役にも立たないようなものなんだよな。いや、戦闘どころではない。活用方法を見いだせない、いわゆるハズレ『異能』という奴だ。

 オアセマーレの女王様も馬鹿じゃないから、たぶん、わたし以外の嫁いだ令嬢たちも、似たり寄ったりのハズレ『異能』だろう。


 ……先にわたしの『異能』のこと、シオンハイトに話してしまった方がいいのかなあ。隠していたところで、切り札にもならないし、『異能』をつまびらかにしてしまって、下手な期待をなくしたほうのがまだメリットとして大きいまである。

 いつまでも黙っているのが通用するとは思えないし、もしかしたら、わたしの『異能』が使えないハズレだとしたら、さっきみたいに、わたしに構ってこなくなるかも。


 ……いや、でも、逆に、使えない人間だとばれたら、扱いが悪くなることも考えられる、のかな。使えないハズレなら、おだてる必要もない、みたいな。

 ど、どっちが正解なの……?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ