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――気が付くと、いつの間にか朝になっていた。どうやらあのまま寝落ちしてしまったらしい。
わたしは抱き枕よろしくシオンハイトに引っ付いていたようで、腕の中にシオンハイトを見つけると、体が固まってしまった。
前世では抱き枕を愛用していてたからか妙に癖がぬけず、今世でもたびたび、頭の下にあったはずの枕を抱いて目が覚めることはあったけれど、シオンハイトを抱き枕のようにしたまま寝てしまうとは思わなかった。というか、結構強く抱きしめてしまっていたけれど、シオンハイト、ちゃんと息できてる? ……大丈夫そうだな、よかった。
ゆっくり手を放そうにも、片腕がシオンハイトの下に入っているから、簡単には彼と離れることはできない。
なんとかシオンハイトを起こさないように腕を引き抜こうと奮闘していると、するっと太ももにくすぐったい感触が。……見なくても分かる。たぶん、シオンハイトのしっぽだ。昨日、腰にすり寄ってきた感覚に似ている。
「……シオンハイト、起きてるでしょ」
わたしが思わず聞くと、「寝てる」と返事があった。しかもいかにも寝起きの声ではなく、目が覚めてから結構経ったようなしっかりした声。
「起きてたなら言ってよ……」
この様子だと、わたしが慌てて腕をひきぬこうとしていたときには目を覚ましていたに違いない。
くつくつと笑い声が聞こえてくる。シオンハイトの肩が震えていた。
「――楽しくて、つい。もう目が覚めたのに、まだ夢を見てるみたい」
彼にとっては、それこそ夢にまでみたこと、なのだろう。そう言われてしまうと、わたしは怒るに怒れない。……そうじゃなくても、こんなに嬉しそうにしていたら、されるがままに徹したくなるというものだ。
「――まあ、起きないといけないんだけどね。今日も仕事があるし。あーあ、ララが執務室にいてくれたらいつも以上に頑張れるのに」
シオンハイトは起き上がるものの、名残惜しそうに、しっぽはわたしの腕に寄り添っていた。
――わたしはつい、シオンハイトの服の裾を引っ張る。
「い、行ってもいいなら、シオンハイトの執務室、行ってみたい」
興味半分、というよりは、シオンハイトとの約束を守るのならば、この部屋にこもってばかりではいけないと思ったのだ。それでも、まだ、一人で出歩くのは怖い。
シオンハイトと一緒なら、多少はその恐怖も和らぐだろうか、と思って、声をかけた。
ぴょん、と彼のしっぽが立って、嬉しそうに目を輝かせたのは、言うまでもない。




