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わたしもシオンハイトも、水分不足なのか、唇がかさついていたけれど、そんなことは気にならなかった。感触が悪くても、どうにも離れがたい。
「ん――んんっ!?」
もそ、と腰辺りに、変な感触がして、驚いたわたしは反射的に手を伸ばしてしまった。ふわふわの感触。……しっぽ?
シオンハイトのしっぽが、わたしの腰のあたりをくすぐっていたらしい。
寝間着が薄い生地だから、服越しにも感触がしたようだ。むしろ、服越しだから、余計にくすぐったく感じたのかも。
「……ララ、僕のしっぽ好きなの?」
「いや、急にくっついてくるからびっくりして、つい……」
前世も今世も人間、という、生粋の人間なわたしからしたら、しっぽが生えていて、それを自由に動かせるって、どんな感じなんだろう、という純粋な興味はあるけど……。
する、とわたしの腕をなぞるようにしっぽが動くものだから、「ふっ」と変な吐息が漏れてしまった。恥ずかしい。
わたしは思わず口を手で塞ぐ。その上から、シオンハイトが、かぷ、とわたしの手を甘噛みしてきた。――甘噛みしてきた!?
全然痛くはないけれど、誰にもされたことがないようなシチュエーションな上に、想定もしていなくて、わたしの心臓がバクバクと暴れる。
「手、どかしてよ。もっとララとキスしたい」
一度、キスしたはずなのに、シオンハイトの声が妙に甘ったるくて、羞恥の心がわたしの手を動かさせないでいた。
「い、いや、あの、もう寝たほうがいいんじゃない?」
わたしはそんなことを口走っていた。本気でシオンハイトを拒みたいわけじゃないけど、恥ずかしさが勝っている。それに、今が何時かは知らないけど、シオンハイトの目の下はクマが濃いし、わたしといちゃついているより睡眠を取った方がいいんじゃないだろうか。
「……まだ頭痛い?」
しかし、シオンハイトはわたしの心配をしてきた。
「それと、頬も。頬の怪我はララが寝ている間にだいぶ良くなったと思うけど……」
……正直、頬のことはすっかり忘れていた。『異能』で消された記憶が戻ってきたときのほうが段違いで痛かったので、すっかり頭から抜けていた。
口元に手があるので、ついで、とばかりに、叩かれたところを押してみたけれど、痛くない。
「それは、大丈夫。でも、シオンハイトのクマが酷いから。休んだ方がいいんじゃないの?」
「――ララが平気なら、もうちょっとだけ。ちゃんと休むから」
「折角全部思い出してくれたんだから」と言われてしまえば、わたしは抵抗できない。恥ずかしいという理由だけで、彼を無下にできないし、したくなかった。
わたしがおそるおそる手をどかすと、シオンハイトは、わたしにキスをした。
何度も、何度も。




