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「――……ララ、本当に、兄上から何を言われたの?」
ベッドに腰かけるわたしに目線を合わせるように、シオンハイトが膝をつく。
「何を言われたのか知らないけど、気にしなくていいんだよ。ララは何もしなくたって大丈夫。子供だって、僕の子は跡継ぎになるわけじゃないから、絶対必要ってわけでもないし」
……ん?
「僕は欲しいけど、無理にとは言わないし」と、小さな声で言うシオンハイトは顔が赤い。
……シオンハイトは一体、わたしがあの男から何を言われたと思ったんだろう。わたしがあまりにも心を開かないから、嫁いできた意味を思い出せ、とか、言われたと思ったのか? ……いや、わたしからしたら、こうしてこっちにやってきてとどまっている時点で義務を果たしたと思っているのだが。
こっちで寝たら? という提案が、そこまで変に解釈されるものだろうか。
いや、でも、勘違い……する、ものか?キングサイズの物を二人で使っているにもかからわず、そういうことはしたことがないし、なんならベッドの端と端で、物理的にも距離のある睡眠を取っていた。急に結婚することになった男と寄り添って寝られるかと、睡眠時にシオンハイトから離れて使っていたけれど……だからといって、こんな顔色の悪い人を放って一人で寝ると思われてるんだろうか。思われてるんだろうな。
だってわたしがしてきたのは、そういうことだし。
「……別に、そういう話はされてない。単純に、貴方の顔色が悪いから、ベッドで寝た方がいいんじゃないかって……」
わたしがそう言うと、ぴょこ、とシオンハイトの耳が動いた。
「……いいの?」
「別に、わたしだけのベッドじゃないし……」
「でも……」
――気絶する前。激しくわたしがシオンハイトを拒絶したのを、彼は覚えているのだろう。確かに、あのときのわたしは、もう何も信じられないとばかりに、彼をつっぱねた。何も解決しないまま、弁明等もないままに、わたしが気絶してうやむやになったのだ。
あのままのわたしだったら、ベッドから出て行って、とは言わずとも、逆に、こっちで寝れば、と提案することもなかっただろう。
――あのままの、わたしだったら。
「あの人は関係ない。……お、思い出したの。思い出した、っていうか、『異能』で消された記憶を取り戻したっていう――わぁっ!?」
全部言い終わる前に、押し倒された。ばす、と背中がベッドにくっつく。
「――本当に?」
不安げな表情で聞いてくるシオンハイトの表情は、まさしく、記憶の中の『シオンくん』の面影があった。




