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「……ところでさ、ララの『異能』って、制限あるの? こう……色をつけられるものとつけられないものがある、とか」
「……空気以外だったら、何にでも使える。でも、色を変えられるわけじゃないから、色がちゃんと変わったのが分かるかどうかはまた別」
基本的には、わたしの目に見えているかどうかが基準なんだと思う。空気はどこにどうあるかがイメージしにくいから、『異能』が使えない。
ただ、例えば真っ黒な髪の上に、赤色をのせたところで、下の黒の方が勝ってしまうから、あんまり意味はない。それこそ、下の黒が見えなくなるまで白を重ね続けて、それから色を変えないといけないので、時間はかかる。それでも、完全に白いものの上に色をつけるより綺麗にはいかない。まあ、前世のように、薬液で脱色して、それでから染めるのと違って、髪にダメージはいかないが。
わたしの『異能』は、色をつけるだけなので、基本的にはなんの影響も出ない。例えば、食べ物に色をのせたところで、『異能』を使う前の状態と何一つ変わらない。味に変化はないし、プラスの効果もマイナスの効果も付属されない。
ただ、本当に色を重ねることしかできないのだ。
「――結構使い勝手よさそうだね」
わたしの説明を聞いて、シオンハイトがそんなことを言う。
……そんなこと、初めて言われた。
周りの人は、皆、わたしの『異能』をハズレ『異能』だと言うし、わたし自身も、ずっとそうだと思ってきた。侯爵家の跡継ぎにふさわしくないと、なんど言われたことか。
でも、シオンハイトの表情は、ハズレ『異能』が可哀想だと励ますのでも、こんな程度の『異能』なのか、と馬鹿にする様子もなく、純粋に、本気で使えそうな『異能』だと思っているようだった。
「たとえばさ、白い花をいくつか植えたら、その日の気分でいろんな色の花を見れるでしょ?」
……まあ、それは、確かに。花に色をつけたところで、痛むわけではないので、枯れるのが早まったりはしない。もし、わたしが『異能』を使った後にすぐ枯れたのなら、寿命だったか、管理が悪かったかのどちらかである。
「あとは、ハンコを偽装したり――変な話、兵士に血のような色をつけて、油断させることもできそうだし、血の色ができるなら、殴った風に色をつけて、慰謝料をでっちあげるとか。……悪い使い方ばっかり思いついちゃうな」
シオンハイトはごまかすように笑っているが、内容は全然可愛くない。でも――確かに、やれるかどうか、と言われれば、全然できる。色をつけることしかできないから、と、白いものに何かを彩ることばかり考えていたけれど、そう考えると、かなりの使い道が出てきそうだ。




