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わたしの『異能』について、シオンハイトが聞いてくるのはこれが初めてだ。こちらにきて、もう結構経つのにも関わらず、今日が初めて、ということは、彼が意図して話題を避けてくれたんだろう。
「急に言われても困るよね。ええと……とりあえずこれを見てほしいんだけど」
そう言って、シオンハイトは一枚の紙幣を渡してきた。見たことがないやつだ。
「これ、リンゼガッドのお札なんだけど……偽物なんだよね」
「えっ?」
わたしは思わず声を漏らす。見たことのないお札だから、その真偽は分からないが、でも、少なくとも偽物のようには見えない。
わたしは思わず、紙幣を透かして見た。この世界にも、透かし技術はあるようで、大抵の紙幣には透かしの模様が入っている。前世ほど、あちこちに細かく入っているわけではないけど……。うん、これにもちゃんと入っている。
偽造防止のために、透かし模様が入る印刷技術を勝手に使うことはどの国も一律で制限しているし、そういった印刷の機械を無断で所持していると、たとえ偽札を作っていなくとも、結構重い罰が下される。
例外として、過去の印刷機械を展示目的で博物館が所持することと、『異能』でそういう類のものが出てしまった場合は、届け出を出すことで存在が認められる。
『異能』は生まれながらの能力なので、他人はもちろん、本人ですら選ぶことができない。偽札云々以外にも、犯罪に使えそうな『異能』を持って生まれた子が、『異能』を使えるようになってその内容が分かった後に、『事故』として処理されることが世界的に問題になったため、現在ではどんな『異能』でも受け入れることが半ば義務のようになっている。
それでも、わたしのように当たりはずれがあるのだが。
――……偽札を作れる『異能』?
「これ、もしかして……」
わたしの言葉に、シオンハイトはうなずいた。
「兄上の妻になったディナーシャさんが作ったんだって」
わたしはその言葉を、信じられなかった。彼女が作った偽札は、一度見たことがある。子供のおもちゃのための偽札の方が、まだ本物に近い、と思わせるような出来だったはずなのに。
「一応、少し前の時代のものだから、もし流通したら目立つとは思うけれど、現代でも使えるものだから問題なく使えてしまうかもしれないんだ」
こんなものを見せられたら、シオンハイトがわたしの『異能』について聞きたくなるのも無理はない。
でも、どうして急に、彼女がちゃんとした偽札を作ることができるようになったんだろうか。
どうして、と考えると、ずき、と頭が痛んだような気がした。




