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その後、わたしは十日ほど寝込んで、風邪を完治させた。たかが風邪に十日も、と思うが、薬もなしに治そうとしたのだから、逆に早い方かもしれない。『異能』で治すと一瞬なので、本来風邪ってどのくらいで治るものなのか、その感覚を忘れ気味である。
完治をしたはずなのに、まだ少し、けだるくはある。元より、こちらにきて部屋にこもりっぱなしで運動不足だった上に、十日もほぼ寝た切りだったのだ。そりゃあ、風邪とはいえ体力も限界まで落ちるもの。
部屋の中でストレッチくらいはしておいた方がいいだろうか。果たしてストレッチが運動になるのかは分からないが……何もしないよりも十分だろう。筋トレは……どうなんだろう。今のわたしじゃ、腹筋一回もできないような気がする。体力が底辺もいいところなので、筋トレなんて、できっこない。
「――ララ? 何か別の考えごと?」
ケーキの載った皿を置き、シオンハイトがわたしの顔を覗き込んで切る。最近のシオンハイトは、全部わたしが食べない、と分かっているようで、彼も少しお菓子に手をつけるようになった。そうなっても、わたしがプリンやゼリー以外のスイーツに手を出すのを諦めていないようで、全部を食べることはないのだが。
それにしても、わたしが考えごとをしているって、よく気が付いたな。いつも、ほとんど無表情で黙っているつもりなのに、シオンハイトには見分けがつくんだろうか。
でも――。
「それは、貴方のほうじゃないの?」
わたしは思わず言っていた。
いつもわたしの方を気にかけ、しつこいくらいに話しかけてくるシオンハイトの口数が、今日は妙に少なかった。わたしの考えごとに気が付くくらいだから、完全に意識を飛ばしているわけじゃないだろうけど。
「えへへ、気が付いた?」
何故かそこで嬉しそうな顔をするシオンハイト。わたしが少しでも彼を気にかけていたら、それでいいとでも言うのだろうか。
しかし、その笑顔も、すぐにぎこちないものに変わった。珍しく表情がこわばっている。
「あの――あのね。ララに聞きたいことがあって……」
歯切れが悪い。その上、「答えたくなかったらそう言って」だとか、「無理に聞きたいわけじゃないんだ」だとか、前置きが長い。一体、何を聞くつもりなんだろうか。
前置きをしてもなお、シオンハイトはすぐに話始めない。気まずそうに、「あの」だとか「えっと」だとか、言葉を濁して時間を稼いでいる。
しかし、少しして、意を決したように唾を飲み込むと、わたしに問うてきた。
「ら、ララの『異能』の話、教えて欲しいな、って……」
と。




