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わたしがある程度、咳き込むのが終わると、布団の外からシオンハイトが再び声をかけてくる。
「オアセマーレは薬草が基本らしいから、一応、持ってきたんだけど……本当にこれでいいの?」
そう言うので、ちらっと、布団に隙間を開けて、外の様子を見る。
シオンハイトが、ゼナミントを持っていた。ゼナミントは名前通り、前世にあったミントに見た目と味が似ている。
すーっとしていて、これを食むと、鼻の通りが良くなるので、鼻詰まりを起こしたときに食べるといいと言われている薬草だ。後は一応、気休め程度に咳止めの効果もある。
ちなみに、似ているのは味と見た目だけで、生命力が馬鹿みたいに強かったり、繁殖力が強かったりはしない。
確かにゼナミントを食べることはあるが、風邪のひきはじめに効くものであり、ここまで本格的に風邪を引いたときは『異能』のお世話になるので、今効くかは分からない。
――いや、そんなことより。
「……なんで、植木鉢ごと……?」
自分が思っている以上に、カスカスの鼻声、という病人っぽい声が出た。
でも、突っ込まずにはいられないのだ。植木鉢を持っているシオンハイトに。しかも、机の上にも飾れるような小さめのサイズではなく、結構ちゃんとしたサイズの、引きずる程ではないけど、かなり大きな観葉植物サイズの植木鉢。両手じゃないと持ち運べなさそうなやつ。
わたしが布団から顔を出すと、シオンハイトが少し慌てたように言い訳をし始めた。
「だ、だって、こっちの方がゼナミントってすぐ分かるだろうし、葉っぱだけを渡すよりは安心度高いかなって、思って……」
そりゃあ、そうだけど。だからって、植木鉢ごと持ってくるか?
「貴方が運んできたの?」
「う、うん! ゼナミントは兄上がお茶にするのが好きで、温室で育てさせてるんだ。いつでもゼナミントが使えるように結構な数を育ててるっていうから、一つもらってきた」
「兄上のために育てさせているものだし、僕がちゃんと運んできたから、変なことにはならないよ」とシオンハイトが弁明する。
一国の王子がわざわざ温室から、ここまで運んできたというのか。いや、この城の温室がどこにあるのかは知らないけれど。
でも、オアセマーレの温室は使用人の領域で、王族の居住区域からは遠い場所にある。王族や貴族が植物を楽しむのはもっぱら庭園だ。
リンゼガッドもそうならば、結構な距離を歩いたに違いない。
生えている方が安心だ、と言ったって、使用人に任せればいいのに。それとも、自分が運んできた方が安全だと思ってくれる、とシオンハイトは考えたんだろうか。
わたしは思わず、ちょっとだけ笑ってしまった。




