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廊下に飾られている絵を見ながら、シオンハイトの話を聞くだけ。
たったそれだけのことなのに、ずっと部屋にこもっていたわたしには、酷く疲れた。懐かしい絵を見て、プレゼントしたのに売られてしまった、なんて、嫌なことに気が付いたからかもしれない。
「じゃあまた」と、仕事に戻るのだろうシオンハイトを見送って、わたしはソファに寝そべった。
一歩進んで二歩下がった気分だ。
今回ばかりはシオンハイトは悪くない。……多分。
あの祭りの絵が売られてしまったのは、わたしがあげた人から言い出したのかもしれないし、シオンハイトが無理を言ったのかもしれない。直接現場を見たわけじゃないから、わたしには分からないが、それでも、わたしがあの絵をあげた誰かはシオンハイトに絵を譲ってしまったのは事実。
――……誰か?
「――っ」
あの絵って誰にあげたんだっけ、と思い出そうとして、頭に激痛が走る。でも、それは一瞬のことで、あっという間に激痛が嘘のように引いていく。
「……そんな、昔、実は会ってました、なんて少女漫画みたいなこと、あるわけ……」
そんなことを言いながらも、わたしは、激しい頭の痛みに見舞われたことで、自分の記憶に自信をなくしていた。
有能でアタリの『異能』の中には、記憶操作をするものもある。わたしには、そんな『異能』を持っている人が周りにいた記憶はない。ただ、オアセマーレの国内には、少なからず、記憶操作の『異能』を持つ人間はいる。絶対に。
一人として同じ『異能』を持つ者はいない、とされているが、完全に同じ『異能』がないだけで似たようなものになるということはよくある。例えば、特定の記憶を忘れさせるのか、過去を改変してなかったことにさせるのか、完全に消去させるのか。
忘れさせたとて思い出すことはあるのか、捏造されて記憶が擦り替わるのか、本当にスコンとそこだけ記憶がなくなるのか、そういう差はあれど、記憶を操作する『異能』という点では似ている。
もしかして、本当は、会っていた、のか?
自信はない。そんな少女漫画みたいなこと、と笑いたくもなる。
でも、前世の記憶を持って、『異能』なんて特殊能力があるファンタジーな世界に生まれている以上、漫画っぽい現象を全て、漫画じゃないんだから、と言うことはできない。
今までは、わたしが、自我を持って生まれたその瞬間から、今にいたるまでの記憶がしっかりしているという自信があったからから、そんなことはないと思っていたけれど――。
「――いた、い」
もう一度、あの絵を送ったのは誰だったかを思い出そうとしたら、激痛が頭に走った。そして、すぐに痛みが引く。……さっきと同じように。
これはもしや、本当に、その少女漫画みたいなイベントが、過去にあったというのだろうか。




