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翌日。シオンハイトが「人払いしたから、今日はしばらく使用人はいないよ!」というので、わたしは部屋の外へと出ることとなる。
わたしがこの部屋の外を見たのは、ここに来たときぶり。二か月前のことなんかすっかり忘れてしまった。あのときは、今以上に周りを警戒していたから、周囲の内装を見る余裕なんて、全くなかった。
廊下は流石王城、綺麗に保たれていて、豪華である。でも、どことなく、古びた印象を受けるのは、それだけ、このリンゼガッド王国が歴史あるものだ、ということなのだろう。この館が、臣下に下った王子達の居住空間として使われているのは古くからのことらしいし。
廊下に、等間隔で絵が飾られているのに目が止まる。
「絵を集めるのが趣味なんだ」
わたしが絵を見ていたのに気が付いたらしいシオンハイトが、そんな説明をしてくれる。
飾られている絵画は、人物画だったり、風景画だったり、あるいは明らかに想像で書かれたものなど、ジャンルに制限がない。加えて、作家もバラバラなので、絵を集めるのが趣味でも、特別こだわりのようなものはないらしい。
これが敵国の王城の中、ということを忘れてしまえば、豪華な美術館に来ているような気分だった。
一つひとつ、解説をしながら、シオンハイトが絵を見せてくれる。どこの作家で、どんな背景で描かれたものなのか、とか。
中には、オアセマーレの同盟国の画家の絵もいくつか飾ってあった。戦争と芸術を切り離して考えているらしく、たとえ敵国でも素晴らしいものは素晴らしいと考えるタイプの人間のようだ。親しい人を直接殺した人物以外に恨みは持たないらしい。
ただ、そういうものを集めるのが、周りからどう見られるかは気になるようで、この絵の作家名は全て周りの人には隠しているそうだ。まあ、わたしでも知っているような有名画家の絵もあって、こんなところに無造作に飾っていいような絵ではないものもあるし、バレたら盗まれる可能性もあるから、確かにその方がいいのかも。
美術館で、警備員が横に立っていて、一定の距離近付けないように対処しないとといけないような、高額の絵画が、ただ額縁に飾られて、パネルで保護もされずに飾られているのには驚きしかない。
「――で、これが僕の一番のお気に入り」
そう言って、シオンハイトは、並べて飾ってある絵の中でも、ひと際小さめな絵画を一枚指さした。
随分と見覚えのある絵に、わたしは思わず、息を飲んだ。
見覚えがある? そんなの、当然だ。
――だって、これは、子供の頃のわたしが描いた絵だからだ。




