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シオンハイトの話を聞いてみると、外、と言っても本当に部屋の外、というだけで、建物の外ではないようだった。いや、許可自体は、城の敷地内ならば自由にしていい、ということではあったが。
でも、なにせわたしたちは敵国の貴族令嬢。親しい友人や家族を、オアセマーレの人間に殺された人も、多くいるだろう。そんなわたしたちが、外に出て、狙われないことはないはずだ。
勿論、表面上は停戦しているのだが、そう簡単に割り切れない感情があるのだろう。
だからこそ、危険、とまではいかなくとも、あまり一人で出歩かないほうがいい、ということらしかった。
その話には全面的に同意である。正直この部屋からはあまり出たくない。
確かに、時間を持て余しているのは事実。それでも、明らかに嫌悪され、最悪危害が加えられるかもしれない場所に行く勇気はない。悪意ある視線に注目されるのを想像するだけでぞっとする。
それだったら、まだここで、オアセマーレに帰りたいな、とできもしないことを考えながら引きこもっているほうがマシである。
「この階だけでも出てみない? 使用人は全員人払いするからさ」
臣下に下った王子たちの家であるこの館で、今、わたしたちの部屋があるこの階はまるまるシオンハイトの支配下にある。基本的にシオンハイトが認めた直属の使用人しか立ち入ることを許されていない。そうわたしは聞いている。
だから、彼が人払いをする、と言うのなら、それを実行するのはそう難しくはない。
彼のことをいまいち信用しきれない半面、こちらに来て二か月になろうとしていて、その間、彼の要求をほとんど跳ねのけていることに対しての罪悪感が芽生え始めているのも事実。
獣人、というのは感情と、耳及びしっぽが直結しているのか、それともシオンハイトだけがそうなのかは分からないけど、分かりやすく耳としっぽが垂れさがり、しょんぼりとしている様子を見て、それでもなお何も感じず断り続けられるほど、わたしの精神は強くない。
……命の方が大事だから、それでも断ってきたんだけど。
まあ、でも、今回に限って、命の危険はない、かな……。仮に、わたしが外に出た瞬間、どこかへ無理やり連れて行かれるようなことがあったとしても、そもそも今、この状態でシオンハイトがわたしを連れ出せばいいだけだ。今やっていない、ということは、外に出てもやらない可能性が高い。
それに、嫌な目で見られるだけななら、すぐにこの部屋に帰ればいいし。
わたしは迷った後に、「少しだけなら」とシオンハイトの誘いを了承した。
彼が破顔したのは、言うまでもない。




