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そう思うと、なんだか少し、納得できるような気がした。
こうして一杯お菓子を用意するのも、わたしに好感があるからというより、ただ可愛がりたい、というだけなのかも……。わたしは、人の形をしている獣人を、無意識に同じような種族だと思ってしまっているけれど、獣人からしたら人間はそういう対象でないのかもしれない。結婚するといえど、あくまで世界的な基準が対等である風になっているからでしかない、とか。
いや、でも、そういう感じならば、ロマンス小説に出てくるような恋愛っぽいことで喜ぶものなのかな……。食べさせたり、間接キスであの反応、ということは、少なくともわたしを恋愛対象として見ている、と思ってもいいだろう。ペットのように可愛がる相手に、恋愛らしいことを求めたりはしないだろう。獣人がどうかは知らないけど、少なくとも、わたしはそう。
……分からなくなってきてしまった。
たぶん、シオンハイトに「どうしてわたしに好意的なの?」と聞けば、素直に答えてくれるだろう。
でも、今、その返答を受け入れるだけの信用度が、彼にない。どんな返事が返ってきても、どうせ何かたくらみがあるのでは、とわたしは疑ってしまうことだろう。
……この悪癖を、治したいという気持ちはあるんだけど。だって、あれこれ考えるの面倒だし、人を自分から信用しないと、わたし自身だって他人から信じてもらえない。
そんなことは分かり切っている。
――でも、平和な国で、能天気な日常で、愛情ある家庭で育った前世の記憶と比べてしまうと、この世界はどうにも真逆すぎて落ち着かない。
前世の記憶がある方が、異常なのに。
「――……食べてくれて、ありがとう」
わたしが一人、もんもんと考え事をしていたら、いつの間にかシオンハイトが復活して、座り直していた。
「次は全部完食してもらえるように頑張るよ」
そういうシオンハイトは、穏やかに笑っていた。わたしが、何か盛られているのではないかと、警戒して、プリンを全部食べなかったのを見抜かれたんだろうか。いや、これだけ分かりやすく、上を全部シオンハイトに食べさせ、底の方は残していたら、わたしの意図は分かってしまうか。
それでも、気分を害されているような様子は一切見せず、むしろ、にこにこと、わたしがプリンを二口食べたことに喜びを感じているようにしか見えない。
……いつも笑顔なのに、シオンハイトの笑顔は嘘くさくない。わたしが、そう感じてしまうだけかもしれないけど。
たまになら、プリンを一口、二口食べるだけならいいのかな、と、わたしは少しだけ思った。




