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ただ純粋にわたしのためを思って用意してくれたものなんだろうか。
……本当に?
こういうとき、わたしの『異能』が、人の嘘を見抜けるようなものだったら良かったのにな、と思う。もしくは、毒が効かない『異能』とか。
「……」
わたしは一番近い場所にあったケーキの角をすくうと、ためらいなくシオンハイトの口につっこんだ。
もし、何かよくないものが混ざっていたら、彼の反応で分かるかな、と思って。口に突っ込んだ後、もし本当になにか混ざってたら大事になるのかな、なんて気がついた。
困惑するかな、と予想していたのだが、シオンハイトの反応は全然違った。最初こそ、口へ急にケーキを押し込まれて驚いているようだったが、すぐに状況を理解したのか、頬が赤くなる。
ケーキを飲み込んだ後、彼は「ララが食べさせてくれた……! ロマンス小説で読んだやつだ!」と感動していた。ロマンス小説とか読むのか、この男。
「……ああ、もしかして毒見が必要だった?」
ひとしきり騒いだ後、シオンハイトがようやく気がついたように話す。
「いいよ。どれが食べたい? 僕が毒見する」
シオンハイトはなんのためらいも見せず、当たり前のように言ってのける。王子がそれでいいのか。
わたしの目線を追っているのか、「これ? それともこっち?」とあれこれシオンハイトが聞いてくる。
でも、食べさせるのはわたしがやりたい。
わたしも少女漫画のような食べさせあいに興味がある、ということではなく、単純に、もしかしたらシオンハイトは毒がない部分を知っているのかも、と思ったからだ。
わたしは少し悩んだ末、プリンを手に取る。ガラスの瓶に入ったやつだ。上の方と下の方はともかく、真ん中の層に何かを仕込むのは相当難しいだろう、と思って。
わたしは、スプーンを深く差し込み、なるべく真ん中の部分よりも上を全てすくって、それをシオンハイトの口にまた入れた。
「はい、食べたよ。心配なら、口の中も見る?」
……他人の口の中とか見たくないんだけど。でも、食べたふりとかされてもな。
他人の口内を見たくない、という気持ちと、本当に食べたのかという確認をしたい気持ちがせめぎ合う。わたしが迷っているうちに、シオンハイトが軽く口を開けた。
……パッと見た限り、プリンはない。
プリンはない、けど、目を引くものがあった。
――牙だ。
この世界の獣人を見たのは、リンゼガッドに来てからが初めて。姿絵や写真ですら見たことがない。だから、獣のしっぽと耳があるだけなのかな、なんて漠然と考えていたのだが、どうやらそうではないらしい。




