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「来年とか、再来年とか……まあ、いつでも行く機会はあるかな。戦争が終わるなら、死ぬ心配もないし――」
「ねえ、ララ」
わたしはシオンハイトに名前を呼ばれて、ケーキから彼の方へと視線を移す。
――と。
「ん!?」
ちゅう、と唇を奪われた。びっくりして、持っていたケーキの皿を落とすところだった。いきなりすぎて、目を閉じることもできない。目を閉じたシオンハイトのまつげが、長いということを、今、わたしは初めて知った。
「ど、どうしたの……?」
シオンハイトの唇が離れていくと、わたしは小さく、彼に聞いた。そんなタイミングだったっけ?
シオンハイトは、そのままわたしの手からケーキの乗った皿とフォークを奪い取ってテーブルの上に置くと、わたしの手に指を絡めてきた。なんだか、その手つきが少し、やらしい。
「し、シオンハイト……?」
じい、とわたしを見つめてくる目が、少し、熱っぽい。
「好きだな、って思って」
シオンハイトが、わたしの肩口に、すりすりと額をこすりつけるようにして甘えてくる。
「これからずっと、一緒にいてくれるんだね」
そう言うシオンハイトの声音は、酷く安心したような、そんな声だった。
わたしは思わず、「うん」と返事をする。
ふふ、と、シオンハイトは嬉しそうに笑い、再び、一度、二度、とわたしに口づけてくる。
……なんだか、段々、長くなってくるし、押し倒されていくような気がするんだけど?
「し、シオンハイト、まだ昼間だし……っ。この後、仕事残ってるんでしょ?」
実際、彼に仕事が残っているのかは知らないが……今日は一日休みだと聞いていないし、以前のことを考えたら、ある程度わたしと話をしたら仕事に戻っていたはず。
「でも、僕ら、新婚だよ? いろいろあって、何にもしてないけど――少しくらい、良くない?」
「だ、駄目だよ! 駄目!」
シオンハイトがどんなに誘惑してきても、こればっかりは流されたら駄目だ。仕事が溜まって大変になるのは彼なんだから。
わたしが突っぱねると、シオンハイトはくすくすと笑った。本気でどうこうしよう、というのではなく、わたしをからかいたかっただけなんだろう。
それが分かって、わたしの頬は一気に熱くなる。やられた。
「――……じゃあ、全部終わったら、また、頂戴」
そう言って、シオンハイトはわたしの唇を、人差し指で撫でた。
「そうだ、ララが描いた絵のお祭りに行きたいな。情勢が落ち着いたら一緒に行こう?」
「――うん、約束ね」
新しい約束が、また一つ、増えていく。
それでも、シオンハイトなら、きっと守ってくれるのだろうと、わたしも、彼との約束を守るために動くのだろうと、わたしは、信じられる。




