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「今日はオアセマーレのお菓子を用意してもらったよ!」
にこにこと笑うシオンハイト。テーブルには、確かに馴染み深いお菓子が並んでいる。
シオンハイトは二日に一度くらい、わたしの部屋にやってきては、こうして何かを与え、一方的に話していく。
「レシピがなかなか手に入らなくて、再現に時間がかかっちゃった。ごめんね」
何が楽しいのか、と聞きたくなるくらい、能天気そうな笑顔を浮かべるシオンハイト。わたしがこっちに来てから、一度だって、最低限の食事や衣類以外、手を出していないのに、よくもまあ、ここまでやれるものだ。
今回もどうせ手をつけないだろう、とか、思わないんだろうか。
わたしがリンゼガッドに来て約一か月が経とうとしている。しかし、その日々に変わりはない。
シオンハイトが時間を作って遊びに来て、お菓子やら娯楽のものやらを並べて、どれがいい? って聞いて。でもわたしは手を出さない。
そんな日々。
けれど、シオンハイトが折れることはなかったし、わたしのために、と並べられた物の質が下がったり量が減ったりすることはない。
いい加減、嫌にならないんだろうか。
それとも、王子様って、そんなに暇なの? そんなことないよね?
「ララはどのお菓子が好き? 僕も一緒に食べたいな」
そう言いながらわたしを見て、にっこりとするシオンハイト。その様子は、まるで、久々に会った恋人に話しかけるよう。
お菓子をあげるから、態度を改めろ、とか、そういう圧はない。
純粋に、彼自身がそうしたいからそうしている、という風に見える。現に、わたしが何も言わなくても、シオンハイトの笑顔が曇ることはない。
「……なんで、そんなにお菓子を食べさせたがるの」
シオンハイトの熱量に押し負けて、わたしはついに聞いてしまった。流石に一か月、最低でも二日に一回、時には毎日来ている状況に耐えられなくなった。
久々に独り言以外で喋ったので、口の中が妙に乾燥する。随分と不機嫌そうな声音になってしまったが――シオンハイトから、それを責めるような言葉はない。
というか、むしろ返事自体がない。
「……?」
怒らせたか、不快にさせたか。どっちだろう、と彼の顔をちらっと見ると、そのどちらでもなかった。
目を丸くして、ちょっと頬を赤くしている。その表情は、たぶん、見た人全員が、喜んでいるだろうと分かるようなものだ。耳もしっぽも、ぴんと立っている。
何、その反応。ただ一言、声をかけただけなのに。予想外の反応に、わたしの方が驚いてしまった。




