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レギーナ様のお抱えだという侍女の『異能』を使って、わたしたちは世界中央機構へと向かう。
レギーナ様の侍女の『異能』で転移した先は、『異能』による転移専用のスペースがあるのか、こぢんまりとした部屋にわたしたちは姿を表すことになった。広さこそ狭いものの、装飾は華美なので、『世界中央』という名前に反した貧相さは感じない。
『異能』を使ったレギーナ様の侍女は、狭い部屋から出るために扉を開けた。
扉の先にはかなりの大きさのホールが広がっていた。ここに、何千人と人が押しかけても問題がなさそうなくらいの広さ。広すぎて、逆に歩くのが大変そうなくらいだ。
世界中央機構に、わたしは初めて足を運んだ。いくら侯爵令嬢とはいえ、用もないのにこんなところへはこない。
逆にレギーナ様も、シオンハイトも、王族として何度か足を運んだことがあるのか、それとも、王族の教育としてこういう場所の利用方法を学ぶのか、そのどちらかは分からないけれど、なんだか慣れているような雰囲気を感じた。
わたしたちが出た扉から遠い場所に、受付らしいものがある。
あそこで受付してこの書類を提出するんだろうか? いや、でも、王族が直接出向いたのだから、どこか別室に案内されるのだろうか?
この後の流れが全然分からないまま、わたしは迷いなく歩くシオンハイト達の後をついていく。
オアセマーレ王国の王族と、リンゼガッド王国の王族が揃って歩いているからか、妙に注目されているような気がした。いくら停戦中とはいえ、完全に戦争が終わったわけではない上に、ついこの間、リンゼガッドの王族が、オアセマーレの王城に訪問した際、爆発騒ぎが起きている。
しかも、護衛らしき護衛は一人もいない。
はっきり言って、何も知らない人から見たら、異常事態もいいところだろう。どうなるのか、という行く末を、注目してしまうのも無理はない。
受付にたどり着くと、レギーナ様が受付の女性と何かを話している。ここまで来れば、もう、安心だろうか。
わたしは、ほっと息を吐きながら、何もすることがないので、なんとなく、受付カウンターの上を見ていた。
いたるところの装飾が華美で豪華で、いかにも異世界、という不思議な場所なのに、こういう受付カウンターの形状はどこも対して変わらないんだな、と思って。リンゼガッド王国では、デジタル機器が結構流通していたようだが、ここはアナログ派らしい。レギーナ様との受付をしている女性が、何かを書き込んでいるのが見えた。
まあ、獣人率が低い国では、あまり電子機器って普及していないから、『世界中央』という立場上、完全デジタルにするのも難しいんだろうな、なんて考えながら見ていると――ちり、とうなじが熱くなるような、不気味な視線を背後から感じた。




