107
レギーナ様に連絡がついた、という報告だろうか、と思って扉を開けると、その先には実母だけでなく、レギーナ様までもがいた。まさかの人物に、わたしは思わず振り返ってシオンハイトの方を見る。
彼もまた、驚いている表情をしていた。寝不足のわたしの見間違い、ではないらしい。
髪や瞳の変わったわたしたちを見て、王女様は「なるほど」と納得した様子を見せた。わたしの『異能』を覚えていたらしい。
貴族や王族は『異能』の内容を鑑定することが義務づけられているし、王族に至っては、王城勤めの使用人、王族、貴族、全ての女性が使える『異能』を把握しておくものだという話は聞いたことがある。それが事実だとは思わなかったが。だって、何人いると思っているのだ。
でも、それはわたしの勝手な思い込みだったようだ。
「リンゼガッドではどうか知らないが。我が国の王族が抱えている侍女は移動系の『異能』を持っていることはごく当たり前のことだ」
レギーナ様の説明に、わたしはぎくり、と体がこわばった。
ライレグーンの一件を嗅ぎつけていることは、女王様にはバレている。それなのに、今、その王族内では当たり前である、侍女の持つ移動系の『異能』を使ってしまったら――わたしたちが動いていることが、ばれてしまうのではないだろうか。
それとも、もはやそんなことも気にしていられないほど、時間との勝負になっているのか。
わたしは不安になり、レギーナ様を見るが、彼女の表情は以前会ったときのまま。弱音を吐きそうな様子からは、一番遠いところにいるように見える。
「問題はない。フィア経由で、私の行動が母様にばれていることは知っている」
爆発事件のとき、わたし以外には女王様が見えていなかった風だったのに。王族の情報網は凄い。
「確かに、母様は私を失脚させようと動いているようだな。しかし、それには時間がかかる。確実に私を一発で陥れるには、それなりに準備がかかるというもの」
一歩間違えれば自らの人生が終わるというのにも関わらず、堂々としている。
きっと、レギーナ様は、何よりも信じているのだろう。自分ならできる、と。
「母様が行動を起こす前に、私たちが『中央』へ証拠の提出を完遂してしまえば、私たちの勝ちだ」
レギーナ様は、そう言い切った。
確かに、それは事実なのだが――実行するのが難しい、と思うのは、きっとわたしだけなんだろう。
彼女自身はそれができると、思っている。
わたしには、そう『信じる』のは難しいな、と思い、少しだけ、彼女のことがうらやましくなった。




