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用意して貰った部屋に案内され、わたしたちは一息つく。ソファに座ると、予想以上に気が抜ける。さっきも、実母と話すために席へついたけれど、それとも違う感じ。どっと疲れが追い付いたような気分だ。
それはシオンハイトも同じなのか、彼の表情はどことなく元気がない。まあ、シオンハイトに至っては、わたしを抱きかかえて高所から飛び降りたり、走り回ったりしていたからなあ。わたしがこれだけ疲れているのだから、わたし以上に動いたシオンハイトの方が疲れているに決まっている。
くあ、とシオンハイトがあくびをする。手で隠しているつもりなのだろうが、彼も彼なりに気を抜いているのか、微妙に隠せていない。指の隙間から、シオンハイトの牙が見えている。
「――ララ」
「っ、な、なに?」
じい、とその牙を見てしまったのがバレたのか。わたしは慌てて返事をする。
でも、そんなわたしに気が付いていないのか、シオンハイトは「三十分だけ、先に寝てもいい?」と問うてきた。
「先に仮眠させてもらったら、その後は僕が起きておくから、ララはギリギリまで寝ていて」
「それは、別にいいけど……」
疲れ切っているから、正直すぐに立ち上がったり、動いたりしたくないな、という気持ちはあるのだが、妙に目が覚めてしまって、わたしの方はすぐに寝られそうにない。いや、いざ目を閉じたら眠ってしまうのかもしれないけど。
でも、起きているのも辛くないので、シオンハイトが先に仮眠を取りたいというのなら、譲るのは問題ない。
「何かあったらすぐ起こして。……ちょっとだけ、肩、借りるね……」
そう言って、シオンハイトはわたしの肩に、頭を載せる。毛でふわふわした耳が頬に当たって、少しくすぐったい。
わたしの肩にシオンハイトの重みを感じて、体感で、数分も経たない内に寝息が聞こえてきた。……本当に、結構限界だったらしい。まさかこんなに早く寝てしまうとは。
それとも、騎士団の人間にもなれば、仮眠を取ろうと思ったらすぐ寝られるものなのだろうか。わたしはシオンハイトの他に、フリードさんと、確か……シシィと呼ばれていた人が一人、あの執務室にいた二人しか知らないが……、どちらもすぐに寝られそう。
限られた時間の中で、最大限体力を回復させるための訓練とかあるんだろうか。
――なんて、くだらないことばかり考えてみるが、わたしの心臓はバクバクと激しく動くままだ。
じんわりと温かい肩が、わたしを妙に緊張させる。
……三十分後、シオンハイトと交代で仮眠を取ることになっても、ちゃんと寝られる自信がない。




