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4話 勇者VS女神②

その物体は1体だけではなかった。

いくつもの漆黒の物体が直立の姿勢で佇んでいた。


「こんなのデカイってレベルじゃないぞ・・・」


姿形は西洋の鎧姿の騎士に見えるが、大きさが尋常ではない!

1体1体が全て全長が100メートルはあろう大きさだ。

しかも!

その数!10体!


「きゃはははぁああああああああああああ!驚いた?驚くわよね!」


女神が口に手を当て大声で笑いだした。


「うふふ・・・、これはね、私達神が住む神域にある機動兵器なのよ。その名もギガンテス!私のところには10体割り当てられているのよ!それを全て召喚したわ!本来は現地人が手に負えない大型魔獣討伐用なんだけどね。あんたのようなちっぽけな存在はそのまプチッと踏み潰されなさい!プチッと惨めにねぇえええええええええええええ!」


しかし、勇気が驚いたのは最初だけですぐに落ち着いた表情になる。


「別に焦って驚いた訳じゃないぞ。あれだけ大きいロボットのようなのが自立している事に驚いただけだよ。しかもだ、海の上に浮いているのは空中に浮いているって事だな。今度の時に参考にさせてもらうわ。ホントに神の技術って凄いんだな!」


再びグッと拳を拳を握り締めギガンテスへと構えた。


「俺が大人しくプチッと潰されると思うか?でくの坊ごとき人形が俺に勝てるとでも?」



ブチッ!



どこかで何かが切れる音がする。


「どこまでもふざけた人間ねぇえええええええええええええええ!ここまで虚仮にされたのは初めてよ!」


ザッと右手を前にかざした。


「ギガンテス!このクソ生意気な小僧を踏み潰しなさい!あっ!一気にじゃ面白くないから、徐々にじわじわと圧殺よ!この私と神の技術の前にどれだけちっぽけな存在か分からせてあげるのよ!」



ブゥン!



10体のうち、先頭に1体の頭部にあたる部分の中央が赤く光る。


ズズズ・・・


ゆっくりと足を上げ海から大地へと足を下ろす。


全長が100メートルはありそうなので1歩の歩幅がとてつもなく大きい。

あっという間に勇気の前まで辿り着く。


「さぁさぁ!早くしないとぺっちゃんこになってしまうわよ!地面に頭を擦りつけこの私に謝るのよ!ほらほら!もうすぐに潰れるわ!」


ギガンテスが片足を上げゆっくりと勇気を踏み潰そうとした。


そんな状況でも勇気が興味無さそうにため息をついた。


「とことん腐った女神だよな。だけどなぁああああああああああ!俺を舐めるなぁあああああああああああああああああああ!」



カッ!



勇気の全身が青白く輝く。



「いっけぇえええええええええええええええええええええええええええええ!」



ゴシャァアアアアアア!



「はぁああああああああああああああああああああああああああああ!!!」



大きな破壊音が発生し、直後に女神の大声が響く。


「そ、そんなの・・・、神である私が夢でも見ているの?信じられない・・・」


ギガンテスが片足を上げ勇気を踏みつけようとした姿勢で固まっていた。

そして、上げた足自体も消滅している。

その足元には右手を上に掲げたポーズで勇気が立っていた。


「消滅させた?ギガンテスの足を?たかが人間ごときが素手で?」


呆然とした表情で女神が勇気を見ていた。


「これが俺の怒りだ!貴様に対してなぁあああああああああああ!」


グッと腰を屈め今度は左腕を引き一気に突き上げた。


「喰らえぇえええええええええええ!」



ドォオオオオオオオオオオオンンン!



勇気の目の前にいたギガンテスが跡形も無く消滅してしまった。



「そんなのぉおおおおおおおおおおおおお!嘘ぉおおおおおおおおおおおおおおお!」



女神の顎が地面に着く程に大きく開き、直後に絶叫してしまう。


だが、すぐにニヤリと笑い右手を掲げた。


「まだよ!ギガンテスは残り9体もいるのよ!それこそたかが人間ごときが巨大兵器の数の暴力に勝てる訳がないわ!」


ヒュン!ヒュン!


微動だにしていなかった残りのギガンテスが一斉に動き出し、見た目の大きさから想像出来ない程に軽やかにジャンプをする。


「一斉攻撃よ!潰れろぉおおおおおおおおおおおおおおお!」



「甘いぃいいいいいいいい!」



またもや右腕を勢いよく振り上げる。



ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオッンンン!



ギガンテス達は勇気へと落ちる前に一気に打ち上げられ星となった。


「う~~~~~ん、花火としては地味だったな・・・」



「し、信じられない!」


ホムラが星となったギガンテス達を見つめながら半ば放心状態で呟いている。

隣にいるカーミラはもう完全に抜け殻状態でフリーズしたままだった。



しばらくすると、遥か遠くの地平線上でいくつもの光が見えた。



「アレって、王国の王都の方角じゃないか?」


勇気が目を細め遥か遠くの方を見つめていたが、確信したかのように女神に視線を移した。


「あんたを信仰していた国も無くなったみたいだな。」



ペタン・・・



放心状態になった女神がゆっくりと尻もちをついた。


全身がガクガクと震えている。


その様子を冷ややかな視線で勇気が見ていた。


「あんな巨大なものがいくつも落ちてくれば、どんな城も終わりだよな。

クソ王国らしい終わり方だよ。名前もルレーブツグス王国だっけ?反対から読んだ名前の通りにすぐ潰れる国だったな。

ご愁傷様だよ。

でもな、クソ王国をあんなクソ野郎の集まりにしたのもあんた女神のせいだよ!

あんたに唆されたのと一緒だ!

それにな!あんたが俺は無能だと神託をしたせいで俺は死ぬところだったんだよ!


これを何て言うか知っているか?

あんた女神は『殺人教唆』!あの国の王族は『殺人』を犯しているんだよ!」


そしてにやりと笑った。


「まぁ、俺も法律の専門家じゃないから合っているか分からんけど、それに近いようなものだろな。」


ビシッと人差し指を女神に突き出す。


「そしてぇえええええ!」


ジロッと勇気が女神を更に睨む。


「女神様って言えば絶世の美女ってのが相場だろうが!それをだなぁぁぁ、あんたのようなおばちゃんが出てくるって!立派な『詐欺罪』だよ!」


女神がその言葉でワナワナと震えている。


「おばちゃんだと?美しい私に向かってか?」


その言葉に勇気もホムラも唖然とした顔でお互いに見つめ合った。


その心は1つ!



『美しい?お前、何を言っているんだ?』



放心状態から再起動した勇気が再び女神へと向き直る。


「しかも!俺は嫌がっていたよな?異世界なんかに行きたくなかったって!それを強引に送ったからな!言わせてもらうよ!このクソババァアアアアア性悪ボンレスハム女神が!ダイエットを始めた方がいいんじゃないか?ついでにその傲慢な性根もそぎ落として、すっきり綺麗な心にしろぉおおおおおおおおおおおお!」



ガカッ!



女神の背後にいくつもの落雷が落ちる。

勇気の言葉で段々と俯いていったが、ゆっくり顔を上げると憤怒の表情で勇気を睨んでいた。

彼女が女神だとはとても思えない表情だ。

元々の姿もまぁ、アレだけど・・・




「クソババァだと?」




プルプルと女神が震えている。

お腹の三段腹も一緒にプルプルと揺れていた。




「この私、この世界におけける最高神でもある女神クラリスに何たる暴言を!もう許さん!どんなに謝っても許さんからな!」


女神が両手を広げ頭上に掲げると空に漆黒の闇が広がる。


「ディメンション・ゲート!次元の狭間に落ちて体も魂すらもすり潰されろぉおおおおおおおお!」


魔王であるホムラがクスクスと笑っている。


「あら?妾と違って世界の管理者である女神たるお主が直接この世界に干渉しても大丈夫なのか?まぁ、既にかなり干渉しているけどな。」


女神のこめかみがビキビキと青筋を立て震えている。


「うるさい!虫けらに侮辱された方が余計に質が悪いわ!もう神の制約なんて関係無い!このゴミカスが目の前にいる事自体が許せないのよぉおおおおおおおおおおおおおおお!私の全てを賭けて消滅させてやるぅううううううううううううううううううううううう!」



「うるせぇえええええええええええええええええええええええええ!」



勇気が叫んだ!


「勝手に人を召喚して気に入らないからって、死ぬような状況までにしやがってぇえええええええええ!それでも懸命に生き延びてきたけどなぁああああああああああ!」


グッと拳を握る。


「また俺を殺そうってか?もう泣いて謝ろうが許さん!」


ブン!


勇気の全身が金色に輝いた。


「身体強化フルパワー!」


腰を捻り右拳を後ろへを下げた。




「吹っ飛べぇええええええええええええええええええええええええ!」




シュン!




バリィイイイイイイイイインンン!




空に広がっていた漆黒の闇が粉々に吹き飛び、元のきれいな青い空が広がっている。



「そんな・・・、次元をも超越する禁忌の魔法がパンチ一発で吹き飛ぶ?これは悪い夢だわ・・・、あはははぁぁぁぁぁ・・・」


再び女神が力なく地面へとへたり込んでしまった。

今度こそ心が完全に折れたようだ。


「私はもう終りね・・・」


諦めの表情になった女神の体が仄かに輝き徐々に輪郭がぼやけてくる。


「制約を破った戒めで私の存在は無くなってしまうわ。でもね・・・、最後にお願いがあるの・・・」


「何だ?」


「あなたの顔をよく見せて。私を倒した人間をこの目に焼き付けたいの・・・」


「分かった。」


勇気が頷きゆっくりと近づく。


そして女神の目の前に立つ。



ピりッ!



何かの圧力が女神から発せられた。


「ユウキィイイイ!急いで女神から離れるのだ!こいつはまだ何か隠しているぞ!」


「遅いわ!」


血走った女神の目が勇気を睨んだ。


「こうなったら!あんたも道連れよぉおおおおおおおおおおおおおおお!」


勇気と女神の間に漆黒の球体が浮かび上がる。

一気に大きくなり2人を呑み込み始めた。


「超重力の嵐に呑み込まれろぉおおおおおおおおおおお!いくら竜王の力を持った貴様でもこればかりはどうしようもない!きゃはははぁああああああああああああ!ブラックホールに醜く潰されて死ねぇええええええええええええ!」


叫び声を上げながら女神が先に呑み込まれ消えてしまう。


「ぐっ!」


勇気も下半身を呑み込まれてしまい、一気に全身も呑み込まれ始めた。


「ユウキィイイイイイイイイイ!」


そのような状態の勇気に1人の影が近づく。

その人影が勇気へと手を伸ばした。


「ホムラ!来るな!お前まで巻き込まれる!」


ホムラが勇気の手を握ったが、漆黒の玉は更に大きくなり2人を一気に呑み込んだ。


「カーミラよ!後はお前に任せた!妾はいつかは必ず帰ってくる!それまでこの国を頼んだぞ!」


直後に勇気とホムラが完全に呑み込まれ、漆黒の玉が徐々に小さくなり消えてしまった。


そこには何も残っていない・・・



カーミラだけが1人取り残され、涙を流しながら佇んでいた。


「魔王様・・・、あなた様のお言葉を信じます・・・、そしてそのお言葉は最後ではないと信じます・・・、魔王様が戻られるまで・・・、必ず・・・、私が必ずこの国を守り通します・・・」


気になったり面白いと思いましたら、評価やブックマークをポチッとお願いします。


やる気倍増になります。

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