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1話 勇者召喚

新作を始めました。


今回はかなり自由に書いているので、軽い気持ちで読んでいただければと思います。



「やっべぇええええええええ!遅刻する!」


1人の少年が道路の歩道を急いで走っている。


しかし急に不意と立ち止まった。


「あれ?」


歩道の脇に両側に高い塀がある細い路地が伸びていて、その分岐路のところに少年が立っている。


(ここに道なんてあったか?)


少し思案気にそのわき道を覗いていた。


(だけどなぁ~、この道がもし真っ直ぐだったら学校までえらいショートカットが出来るんじゃない?何かずっと先まで見えるし、上手くいけば間に合うかも?まぁ、ダメだったら遅刻確実だな。)


クルッと体を90°回転させた。


「もしショートカット出来るなら、その分だけ家を出る時間を遅く出来るんだ。試す価値はあるかもな?」


その細い路地へ一気に駆け出す。



「何だ?」



路地をずっと走り続けているが、路地の出口に辿り着かない。

体感的には余裕で学校へ到着しているくらいには走っているが、路地の出口がいまだに見えず永遠に続いているような錯覚に陥った。


(いくら何でも変だ?)


違和感を感じ立ち止まり後ろを振り返ると・・・


「う、嘘だろう?」


両側をブロック塀に囲まれた道だと思っていたが、すぐ後ろには両側のブロック塀と同じく塀が立っている。

ずっと走っていたはずなのに、真後ろも道が存在せず壁になっていた。


「僕の頭がおかしくなった?こんなの・・・」


慌てて壁を叩いたがビクともしない。

今度は足で何度も蹴飛ばしても同じだった。


(こんなの理解出来ないよ・・・)


諦めて元の方向へ振り向くと、変わらず奥へと路地が続いていた。


「行くしかないか・・・、楽しようと思ったら超常現象に巻き込まれるなんて・・・」


涙が出そうになったが、グッと堪えて前へと歩き始めた。

両側の壁の高さも進むにつれ徐々に高くなっていき、もう壁をよじ登って壁の上に逃げる元も不可能になっている。



しばらくすると、道の先が明るくなっている。


いや!


明るいというより、光が徐々に迫って来る!


「今度は何だよぉおおおおおおおおおおおおおおお!」


慌てて回れ右をして後ろを向いたが、すぐ後ろは壁が反り立っていた。



そのまま後ろから光に呑み込まれ視界が真っ白になった。



「うわぁあああああああああああああああああああああああああああああ!」



そして意識を失う。




「はぁはぁ・・・、ここはどこだ?」



少年の目が覚めると今までとは全く違う光景が広がっている。

全てが真っ白に塗り潰されて、床も天井も分らない。

はっきりと周りが見える程に明るいが、自分の足元には肝心の影すら存在しなかった。


(こんな景色はあり得ない・・・、気を失っている間、どこに連れ去られてしまった?)


あまりにも異様な光景に身構え、いつでも逃げ出せるようにしている。


(それ以前にだ!僕なんか誘拐して身代金を取ろうとしても、僕の家だとそんなにお金は無いよ。)


緊張からかゴクリと喉を鳴らすと、目の前の空間が次第に明るくなり始めた。

気を失う直前に呑み込まれてしまった光と似ている。


「う!眩しい!」


思わず目を閉じてしまったが、いきなり声が聞こえた。



【よくぞ私の召喚に応えてくれましたね。】



「はい?」


反射的に変な声が出てしまった。


眩しい光が徐々に収まり、その中から人影が見えてくる。


「な!な!何が?」



「はぁああああああああああああああああああああああああああああ!」



光の中から人影が現れてきたが、少年は顎が外れるかと思うほどに驚愕の表情をしていた。


(詐欺だ・・・)


声に出てしまいそうになったが、寸前のところで踏みとどまった。

絶対に目の前にいる人物の機嫌を損ねてはダメだと本能が訴えている。


目の前にいる人物は・・・


とても美しい腰まで伸びた金髪をたなびかせ、真っ白な貫頭衣のような服を着ていた。

その人物は人間とは全く違うのは、背中に大きな髪と同じ色の黄金の翼が生えていた事だ。

どう見てもこの人物は女性だろう。

女性でこの姿の存在は物語に出てくる女神に間違い無い!



しかしだ!



確かに女神なんだろうけど、その姿がとてもとても・・・


かなり年配、近所のおばちゃん達よりも年上に見えるし、その全身が物語に出てくる女神像とは全く違う!



(推定100キロは軽く超えているな・・・)



見た目年齢もそうだけど、とってもふくよかな体形をしていた。


(ラノベなんかに出てくる女神って絶世の美女って設定だよな?さっきは【召喚】って言葉も聞こえたし、これはどう考えても異世界召喚?しかも!こんな〇〇な女神に捕まるって、僕って何か悪い事をした?)


日頃の行いを振り返ってみたけど、思い当たる覚えが無い。

自分の運の悪さを思いっきり呪うしかなかった。


少年の気持ちはどこかに置いてしまったのか、目の前にいる女神?はにこやかに微笑みながら話を始めた。


「あなたは私に選ばれました。私の管理している世界『エトランゼ』を救う為にね。私達女神は世界には直接干渉出来ない制約があるの。だからね、私の代行者として世界の癌である魔王を倒してもらいたいの。分かる?」


「はぁ・・・」


(やっぱり異世界召喚かい!何で僕が選ばれた?)


少年の心が絶望に染まった。


「今から行く世界の人々にはね、さすがに魔王と戦うほどに強力な人はいないの。でもね、異世界から召喚した人には私から加護やギフトを授ける事が出来るのよ。そんな人だけが唯一魔王と戦える存在なの。だからといってもね、誰でも召喚する訳にいかないわ。今までの魔王との戦いでは全員勝てずに死んでしまったし、元の世界でも重要な人間はさすがにいなくなるとマズいでしょ?そんな制約の中でもあなたは元の世界ではモブの中のモブ、すなわち、キングオブモブ!うふふ・・・、あたなのような存在感が薄い人間ならば、世界からいなくなっても気が付かれるような事は無いでしょう。」


(モブって?いなくなっても大丈夫?ひ!酷い!そんな理由で?しかも!今までの人は全員死んだ?ギフトを貰っても勝てないのに、この女神は自分の世界さえ良ければ僕の事なんてどうでも良いのか?)


「あははは!私に選ばれた事は名誉と思いなさい。この美しい私に選ばれた事をね!」


(はい?この〇〇女神に?まぁ、時代によってはとってもふくよかな人が美人や美男子だと言われていたのもあったなぁ・・・)


遠い目で少年が空を仰ぐ。

空を見ても真っ白な風景しか目に入らないが・・・


「それによ!異世界召喚なんて数多くの人間が夢見ているのよ。そんな宝くじ以上に貴重な体験を出来るのですからね。まぁ、いくら何でも異世界へそのままで送る訳にいかないですし、ちゃんとそれなりの特典を付けてあげますよ。今までの勇者はその特典を使いこなせなかったみたいで死んじゃったし、ホント外ればかりで困ったわ。うふふ・・・、次こそあなたが上手く使ええればいいのにね。」


しかし、そんな事を言われても彼は全く嬉しくもない。


「あのぉぉぉ~~~、出来れば帰らせて欲しいのですが?異世界には行きたい人が行けば済む話では?僕は行きたくない!ハッキリと断言します!」



ビキッ!



女神のこめかみに青筋が立つ。

ブルブルと全身が震えるが、それ以上にお腹周りのお肉がユサユサと揺れていた。

あ!ついでに顎のタプンタプンのお肉も一緒に・・・


「このクソガキがぁぁぁ~~~、少し優しい言い方をすれば調子に乗りやがってぇぇぇ~~~」


とても冷たい視線で少年を睨んだ。



「もういいわ・・・」



少年の足元に黒い魔法陣が浮かび上がる。


「今回の勇者召喚は外れだったと、あの国には神託で伝えておくわ。」


徐々に少年の足元が消え始める。


「ちょ!ちょっと!」


慌てた表情の少年だったが、その少年を女神は侮蔑を込めた顔を向けた。


「下等な人間が女神たる私を敬わなかった罰よ。ジョブもスキルも無しの人間があの世界でどこまで生き続けられるかね?きゃはははぁああああああああああああ!」


少年の体がほとんど消えかかっていた。



「無様に死ぬ姿が見られないなんて・・・、それは残念だけど、あなたの最後はあの国に任せたわ。」




スッ!




少年の姿がその場から消えた。




「バイバイ・・・、無能な人間・・・」




女神がニタリと笑うとその場から消えた。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






「ここは?」


少年が目を開くと、見知らぬ石造りの広間の中心に立っている事に気付いた。


しかし!


周りには槍と剣を構えた鎧姿の男達に囲まれている。

何か中世ヨーロッパを題材にした映画に出てくるような姿の男達だ。


(コレって本当に異世界なの?)


武器を突き付けられていたが、その兵士達の一角が急に割れた。

その間から1人のドレスを纏った若い女性が前に出てくる。

とても美しく高貴な雰囲気を纏っていた。


しかし、その女性もあの女神と同じく冷たい視線で少年を睨んでいた。


「こいつが今回の勇者召喚で召喚した異世界人ですか・・・」


盛大な溜息を吐く。


「召喚で100人もの魔導士の命と引き換えにしたが外れだったとはね・・・、神託で先に教えてもらわなかったら、その後のバレードや夜会など更に無駄な事をしていたかもしれなかったわ。女神様に感謝ね。」


兵士の一人が女性の前に跪く。


「王女様、この無能はどうします?」


王女と呼ばれた女性が少年を一瞬だけ一瞥したが、すぐに体を翻しその場から立ち去ろうとする。


「今回の勇者召喚はこのルレーブツグス王国の国民に大体的に宣伝してしまうところだったわ。さすがに今この場で処分する訳にいかなわね。」



(処分って?)



少年の全身から冷や汗が吹き出す。


「ちょ!ちょっと待って下さい!」


少年が王女へ手を伸ばし足を踏み出そうとしたが、周りの兵士達に槍を突き付けられ、それ以上前に進めなくなった。


「ジョブもスキルも無い無能に話す気もあありません。ここに一緒にいるだけで気分が悪いわ。早々に魔王討伐に出発したと王国民に知らせを出しなさい。」



「ははぁあああああああああああ!」



数人の兵士が恭しく頭を下げる。


「万が一でもここにいた痕跡すら残してはいけません。早急に奈落の谷へ捨ててきなさい!分かりました?」


「「「はっ!」」」


恭しく頭を下げていた兵士が一斉に少年を取り囲んだ。


「そんなの横暴だ!待って下さい!」


少年が王女へ駆け寄ろうと兵士を突き飛ばそうとしたが、いきなり槍で殴られてしまう。


「が!」


しかも、1人だけでなく何人もの兵士から殴られていた。


「王女様に不敬な!」

「異世界人だろうが無能は必要無いんだよ!」

「お前のおかげで死んだ魔術師達に詫びろ!」



「や、やめてくれ・・・」



床に蹲って背を丸めながらひたすら耐えるしかなかった。






「おら!無能!」


少年が険しい崖の縁に立たされていた。

その後ろには槍を構えた兵士が何人も立っている。

目の前の風景は切り立った断崖と言えるほどに高い崖となっていて、底が全く見えず広大な峡谷が広がっている。


「あの場で殺されなかっただけでも感謝しろ。慈悲深い王女様は懺悔の機会を与えて下さったからな。貴様の為に無駄に死んだ我が同僚達に謝る機会をな!」


(何が懺悔だよ。勝手に僕を召喚して役に立たなかったから捨てる?でも、目の前の光景って完全に死刑に間違い無いよ。」


どう考えてもこの崖から落ちれば死亡間違い無し!生き残る事は不可能!

それだけはここが異世界だろうが確実に分かる。

女神から始まった理不尽な出来事に少年の腹の中から怒りが沸々と湧き上がる。

さっきまでは諦めの気持ちで何も考えられていなかったが、いざ崖の前に立たされ死の危険を察知し少し理性が戻ってきたようだった。


だが・・・


時すでに遅し・・・


少年の身には崖から落とされる死以外の選択は無かった。


「復讐してやる・・・」


ボソッと呟いた瞬間、少年が兵士達へと振り返った。


「恨んで恨んで!絶対にあんた達も殺・・・」



ドシュ!



「あ”」



言葉を言い終わる前に兵士の槍が少年の腹を貫いた。



「黙れ!この異世界人が!さっさと死ね!」



「あ”あ”あ”・・・」



ヨロヨロと足がもつれ、そのまま後ろへと倒れてしまう。




「落ちたか・・・、あの傷にこの高さだ、絶対に助からん・・・、それに誰もここに近寄る事もないからな。痕跡も残さず秘密裏に処分するのには本当に便利な場所だよ。」




少年がよろけながら崖から落ちたのを確認し、兵士がニヤリと笑い崖の下を覗いた。


「ん?何か黒い影が一瞬だけ崖の底の方に見えたが?」


しかし、すぐに顔を上げ崖から離れた。


「気のせいだろうな。ここは奈落の谷と言われているが、別名『死の谷』とも呼ばれまともな生き物はいないはずだしな。死体になったあいつも凶悪な魔獣の餌になるのがオチだ、はははぁあああああああ!」


基本はギャグなので細かい突っ込みは無しでお願いします。


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やる気倍増になります。


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