秋の夜明けは水に濡れ 秋の夜更けは光に濡れ
木々の枝に座り親元を離れる寂しさに心揺れてる花の実たちが
艶やかな白無垢を纏って頭を垂れる朝露の光
それは「あの子」の歌が残した温もりを包む優しい光
どこか「あの子」の踊りを思わせる燃えるような紅色の花たちが
薄闇の中を艶やかに妖しく舞い踊る夕暮れの光
それは地へと生命を返す彼方の岸へと見送る光
どちらも「あの子」が導く光
誰よりも何かに縛られることなく
誰よりも想いに縛られている「あの子」が皆に宿した光
そこには
「あの子」の優しさと激しさと
内に秘めた憂いと嘆きと
どちらも「あの人」が宿した光
近づけば焼き尽くすほどの激しさは
手が届かぬほどに遠くの誰かを思う裏返し
だからこそ
誰にも触れぬように身を隠さなければならない嘆きは
時に地を濡らす恵みとなって
光と共に生命を助く
夜の闇に半ばに裂かれ
月の兎に願いを託して光仄かに
共にと望む想いに反し
遠く遠くと離れる「あの人」は
休むことなくこの昏い海に浮かび続ける
誰よりも熱を持つ「あの子」の想いが
いつか訪れる雪の下まで届くように
誰よりも熱そのものの「あの人」の想いが
枯れ草のように果てぬように
私は代わりに涙を流す
長い夜の季節の先まで
「あの子」の想いが留まるように
私は代わりに熱を返す
「あの人」が与えた命の叫びが
十分育ち実ったと伝えるために
そのために私は側にいる
「あの子」の代わりに
彼女の代わりに
「あの人」に代わり涙を流す
内の闇と
外の光とが
分かたれぬよう
共にあるよう
今日は秋分。
太陽の出が真東から、入りが真西になる日で、
昼夜の長さがほぼ等しくなります。
二十四節気では、『立秋』からが「秋」になりますが、
天文学的には『秋分』の日から『冬至』の前日までが
「秋」となるそうです。
また、秋のお彼岸の中日にもあたりますね。
山際や田のあぜ道に目をやるとお彼岸の花が咲き始める頃にもなりました。
秋の桜もちらほらと。
未だ暑い日々は続いていますが
それでも季節は確実に移ろいゆくのですね。
【登場人物紹介】
○秋姫/春姫
秋姫。春姫でもあります。
彼女自身は熱を操る力をは持ちません。
彼女はただ、世界に水を与えることが出来るだけです。
命がより強く育つために長い時間をかけて熱された大地を
次の命が育つまでの間優しいゆりかごの温もりとなるように
雨と風で冷ましていきます。
彼女自身は温もりを持たないために、
陽ざしの君の事も冬姫の事も、そして夏姫の事も、
冷静な立場で眺めることが出来ます。
彼らが皆、一様にして生命を慈しみたいと思いながら、
思い通りにいかないことを悩んでいることを知り、
彼女はただ、その心が乾かないように、
潤いを与えたい、そう願っています。
○陽ざしの君
太陽です。
今回は「あの人」として登場。
生命を包み込む優しさと
生命が生きていくために必要な温もりの力を持ちながら、
全ての生命にその力を届けることが出来ないことと、
その力のために生命を苦しめる事があることを
不甲斐なく思っています。
遠くに届けようとすれば、近くを傷つけ、
近くを傷つけぬようにすれば、遠くには届かず。
そして、その力を制御できるかと言えば、
思い通りにもならず。
○夏姫
今回は「あの子」として登場。
空から照りつける光を熱と命に代える力を持ちます。
陽射しの君や冬姫同様、
自らに与えられた力を制御することは出来ません。
その力は多くの命を育てることができますが
時にその力が過剰となって、命を奪うこともあります。
どうにかしたいと願ってもどうしようもない現状ならば
少しでも今を受け入れていきたいと
その一瞬一瞬を楽しもうとしているのが彼女です。
誰かのためではないけれど
みんなのためにと願いながら、彼女は踊ります。