①
夏の日の空は、いつも青く、眩いばかりに輝いていて好きだ。
けれども地球から1億4960万km離れた太陽から届けられる熱線は凄まじく、温室効果ガスの充満した地球をかつてないほどに温めてゆく。
とくに7月中旬から8月末までの日差しは、肌を突き挿すだけでなく、その内側にある心にも影響を与える。
心への影響は人により様々。
開放的に感じる人も居れば、冒険心に心を揺さぶられる人も居るだろう。
けれども僕の場合は、それがプラスに現れることは無く全てはマイナスに作用する。
夏は嫌いだ。
とくに今年の夏は。
全て、アイツのせい。
僕には、憎むべき幼馴染がいる……。
***~君がくれた夏~***
キーンコーンカーンコーン♪
授業終了のチャイムが鳴ると同時に、椅子の脚が床を擦る音が慌ただしく響いたかと思うと、そのあとには聞き取れないほど幾つもの話し声が教室中に降り注ぐ。
まるで雷の後に訪れるゲリラ豪雨……。
ドスン‼
教科書とノートをカバンに仕舞っていると、その空いた机のスペースを目掛けて水色のバッグが投げつけるように置かれた。
「ゴメン、わたしこの後部活だから、コレお母さんに渡しといて‼」
「え、えっ!? で、でも、コレって……」
「直美、早く、早く! 吹奏楽部の練習に遅れちゃうよ!」
「OK!じゃあヨロシク!」
僕の話など聞く耳も持たないかのように、森村直美は同じ部活の女子に急かされるまま恨めしい気持ちでその後ろ姿を見る僕の目などお構いなしに、少し短めのスカートの裾を揺らして足早に教室を出て行った。
「おぉ~! 三木! コレってアレじゃねぇっ!?」
「森村直美の使用済みスクール水着の入った、スイムバッグ!」
「アイツ3年になって少し胸膨らんだよな」
「貸して!」
「中、開けてみようぜ!」
「せめて、匂いだけでもっ!」
直美が去ったあと、入れ替わるように群がって来た野犬の群れ。
日頃は僕に話しかける事もほぼない、クラスメートたち。
「駄目だ。コレは森村さんから僕が預かった物だから、森村さんの同意なしに人に預けることは民法上の委託物横領罪に引っ掛かる恐れがあるばかりか、中に入っているものが使用済みの水着だと分かりながら取り出そうとする行為は「公然わいせつ罪」もしくは「わいせつ物頒布等の罪」に問われかねない」
「なんだ、ソレ!??」
「公然わいせつ罪なら6ヶ月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料で済むが、わいせつ物頒布等の罪の場合2年以下の懲役又は250万円以下の罰金若しくは科料又はその両方となる。そしてどちらの罪に問われようとも、そのことで森村さんが受けるであろう“精神的および社会的なストレス”への損害賠償が民事で争われる。更にそのことで万が一にも森村さんが虐めを理由に自殺でもすれば、僕らは皆14歳以上だから最悪の場合逮捕される可能性もあり、少年法改定により無期刑の適応もあることを忘れないで欲しい」
森村直美のスイムバッグに群がって来た狼どもは、僕の面倒な話が理解できずに機嫌を損ね「ちっ、相変わらず面倒臭いな、オメー」と言う捨て台詞と共に、僕の前から去っていった。
“僕が面倒くさい?”
僕からしてみれば、君たちの方が余程面倒くさい人間に思えてならないのだが……。