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勉強はやっぱり嫌い

 学校に着いた僕達は、二人で教室に向かう。そして、昨日と同じくクラスの皆と挨拶をかわす


「おはよう二人とも~。今日も二人の空間が出来るの楽しみにしてるよ」


「おはようございます。はい、頑張りますね」


「いや、頑張らなくて良いからね? ていうか二人の空間なんて出来てないってば!」


 僕が否定してもまたまたぁ、みたいな顔で見られる。女子は勿論、男子まで。何なんだこのクラスは。

 朝から疲れながらも、自分の席に着くと古宮君が声をかけてきた


「よっ、おはようお二人さん」


「おはよう、古宮君」


「おはようございます。相変わらず早いですね」


「ははっ、まぁ俺は桜良と一緒だからな」


 あ、やっぱり古宮君が毎日一緒に登校してるって言ってた友達って桜良さんの事だったんだ。本当に仲が良いんだな


「雪実ちゃんは早起きなんですね」


「ああ、あいつは優等生だからなぁ」


「うん、桜良さんは見た目も優等生っぽいもんね。……沙原さんも見た目は優等生なんだけどね」


「む、『見た目は』ってなんですか。それでは私が不真面目みたいじゃないですか」


 不満そうな顔で言ってくるけど……え、この娘、自分が不真面目って自覚ないのかな?


「いや、沙原さん。あの授業態度で優等生は無理があるよ」


「だって、勉強は嫌いですし」


「不真面目じゃないか」


 僕が少し呆れながら言うと、沙原さんはムッとした顔で


「むぅ……分かりました! じゃあ今日は真面目に授業を受けますよ!」


「えっ? 本当に?」


 出来れば今日だけじゃなくてこれから先も真面目に受けてほしいけど……あの授業態度を見る限り沙原さんにとっては大きな進歩に違いない


「はい! 私だって真面目な所くらいあるって見せてあげますよ!」


「沙原さん……分かった、なら見せてもらうよ」


「ええ。見ていてくださいね、黒木君」


 力強い笑顔でこっちを見つめる彼女に、僕も笑顔で返す。せっかく沙原さんがやる気になってくれたんだ。ここは静かに見守ろうじゃないか


「……早速二人だけの空間が出来てるぞー……。俺、途中からお前らの会話に入れる気がしなくなったし……」


 うん? 右側から小さな声が聞こえた気がしたけど……気のせいかな。







 そして、一時間目の授業が始まった。僕は先生の話を聞きながらも、チラッと左側を見てみた。すると……


「…………」


(おお……沙原さんがちゃんと前を向いてる……!)


 当たり前の事だけど、昨日までの姿を見てた僕としては奇跡の様な光景に見えてしまった。沙原さん、やれば出来るじゃないか……!

 そんな風に感動していると、沙原さんもこっちを見た


「……えへへ」


 目が合うと、嬉しそうに笑う沙原さん。可愛いなぁ……と思っていると


「はっ……! …………」


 慌てて前を向いてしまった。どうやら邪魔をしちゃったみたいだ。僕も前を向かないとね。

 そして、その後は沙原さんの方を向かずに真面目に授業を受けていた……のだけれど


「……ふわぁ……」


 隣から小さく欠伸する声が聞こえた。再び左側を見てみると……


(さ、沙原さん……頭がフラフラしてる……)


 授業に飽きて眠くなっているのだろう。頭を揺らしながら半目になっている沙原さんがいた。まずい、このままじゃ沙原さんが寝てしまう……!


「さ、沙原さん……! 寝ちゃ駄目だよ……!」


「……はぁい……寝てませんよ……」


 小声で注意したが、返ってきた返事が既に半分くらい寝てそうな声だった。こ、これは本当に駄目かもしれない!


「…………すぅ」


「ああ……! さ、沙原さん……」


 遂に限界を迎えた彼女は、項垂れるように眠りについてしまった。

 ……授業時間の半分くらいまでは耐えてたかな。最後まで起きていられるようになるのはいつになるだろうね……。








「起立」


「……はっ!?」


 結局沙原さんが起きたのは授業終わりの号令の時だった。号令の声に慌てて顔を上げて立ち上がっていた。

 そして、休み時間になると僕の方をおそるおそる見て


「く、黒木君……あの……」


「おはよう。よく眠れたかな?」


 僕が満面の笑みで返すと、ビクッとしてから頭を下げた


「うう……ごめんなさい……私、駄目でした……」


「うん、駄目だったね。まぁでも結構頑張ってたと思うけど」


「はい、頑張ったんですけど……寝ないように頑張りすぎて授業の内容が頭に入りませんでした……」


 そ、それじゃ授業を受けた意味が無いな………せっかく半分までは起きてたのに


「さっきの授業で覚えてるのは黒木君と目が合って嬉しかった事だけです……」


「何でそれは覚えてるのさ!? そんなの忘れて良いから!」


「いえ、私にとっては楽しい思い出なので。忘れませんよ」


 にっこりと笑いながら胸を張る沙原さん。この娘は……本当にもう……


「もう……まだ一時間目なんだからね。まだ授業はあるんだから次も頑張ってよ」


「はい、分かってます。次こそ、最後まで起きてみせます!」 


「うん、期待しないで待ってるよ」


「ひ、酷い! 少しは期待してくださいよ!」


 プンプンと怒る沙原さんに笑顔を向ける。この後も温かく見守ろうという思いを込めて。


 ーーー結局、その後の午前中の授業は全て途中で沙原さんがギブアップしてしまう結果となった。

 うん、でも頑張って起きようとしていた努力は感じた。これからもその努力を続けていってほしいな……頑張れ、沙原さん

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