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隣の美少女は勉強が嫌い

 古宮君と仲良くなったり、沙原さんとの距離が恐ろしい早さで縮まったその翌日、僕は家を出て学校に向かっていた。

 ……その途中で昨日も見た沙原さんの家の前も通ったけど彼女に出会うことはなかった。まぁそんな偶然はそうそうないよね。


 その後、学校に着いた僕は教室に入って席に座ると、既に古宮君は隣の席に座っていた


「よっ、おはようさん」


「おはよう。早いね、古宮君」


 僕としてもちょっと早く家を出たと思っていたんだけど、古宮君は意外と早起きなのかな?


「あー、まぁな。毎日一緒に登校してる奴が早起きなもんでな。俺も自然とそうなったんだよ」


「へぇ、毎日一緒に登校してる友達がいるんだ。凄く仲が良いんだね」


「まぁ付き合い長い奴だからな。仲は良いぜ」


 凄いなぁ、そんな仲良しな友達がいるなんて。僕は毎日一緒に登校する程仲良くなった友達は出来たことないからちょっと羨ましいや


「あっ、もしかして昨日の用事ってその友達と?」


「そうそう。何か急に買い物付き合えとか言われてよ。昨日は一緒に帰れなくて悪かったな」


「いや、大丈夫だよ。昨日は沙原さんと一緒に帰ったから」


「へぇ、そうか……って沙原さんと?」


 あっ、つい言っちゃった。まぁでも良いか、何となく古宮君は沙原さんに好意を抱いてるってことは無さそうだし


「うん、実はね……」


 そして、僕は昨日あったことを古宮君に話した。ついでに沙原さんの僕との距離感が凄くおかしいことも


「ほぉ~、そりゃ凄いな。一日でそんなに距離が縮まるなんてな。他の男子が聞いたら羨むぜ?」


「僕も驚いたよ……。おまけに最後に連絡先まで……ん?」


 と、続けようとした時マナーモードにしていた僕の携帯が震えた。取り出してみると


『黒木君、もうお家出ちゃいましたか? 良かったら一緒に学校行きませんか?』


 ……沙原さん、今から家出るのか。結構遅いんだな。

 そう思いながら、僕はメッセージを返す


『ごめん、僕もう学校着いちゃってる』


『そうでしたか……。では、私もすぐに向かいますね』


『うん、待ってるね』


 沙原さんとのメッセージのやり取りを終えて、古宮君の方を見ると、ポカンとした顔でこちらを見ていた


「……え? まさか今やり取りしてた相手って沙原さんか?」


「そうだよ。一緒に登校したかったみたい」


「お、おお……マジで凄いな。お前ら一日で急接近し過ぎだろ」


「いや、沙原さんが凄いだけだと思うよ。僕も動揺しないよう頑張ってるけどさ」


「いやいや、それでも平然と沙原さんと過ごしてるだけ黒木は凄いと思うぜ? 他の男子だったら絶対テンパってるって」


 そうかな? まぁ確かに沙原さんも去年出会った男子はまともに話してくれなかったとか言ってたけど


「一応僕も内心慌てたりとかしてるんだけどね、上手く隠してるけど」


「まぁそのおかげで沙原さんと仲良くなれたんなら良かったんじゃね?」


「うん、まぁね」


 色々と言ったけど、僕だって沙原さんと仲良くなれたのは素直に嬉しい。あんな美少女と友達になれるなんて、ちょっと前までは想像もしていなかったしね


「お、沙原さん来たぞ」


 古宮君はそう言って教室の入り口に視線を向ける。僕もつられてそっちを見ると、確かに沙原さんが入ってくるのが見えた。

 クラスの女子達と挨拶を交わしてからこっちに歩いて来た


「おはようございます、黒木君」


「うん、おはよう沙原さん」


 笑顔で挨拶を終えると、彼女は自分の席に座った


「黒木君は朝早いんですね。一緒に登校できたら、と思ったんですけど……」


 ああ、さっきのメッセージの件か。本当に僕と登校する気だったんだね……出会って二日目とは思えない


「ごめんね、まさか沙原さんに誘われるとは思ってなくて」


「い、いえ! 私が勝手に誘っただけですから」


「じゃあ機会があったらまた誘ってよ。前の日に言ってくれれば沙原さんに合わせるからさ」


 ……言ってから気づいた。こんなこと言ったら速攻で誘われるんじゃね? と。

 案の定、僕の話を聞いて沙原さんは目を輝かせた


「本当ですか? じゃあ明日が良いです! 一緒に学校行きましょう?」


 ああ、やっぱり。しかも即日決行とは……本当にこの娘は友達相手だと遠慮しないんだな……。

 しかし、ここで断ってしまったら沙原さんは悲しむだろう。つまり、もう選択肢は一択しかない


「うん、分かった。じゃあ明日は一緒に登校しようか」


「はい! 約束ですよ?」


 と、嬉しそうな沙原さんと明日の約束を交わしながらチラッと反対側を見てみると、古宮君が苦笑しながらこっちを見ていた。

 うん、言いたいことは分かる。『お前ら、本当に出会ったばかりか?』っていう心の声が聞こえてくるから。

 どうだ、驚いただろう。これが出会って二日目の沙原さんの距離の近さだ


「ふふっ、明日が楽しみですね、黒木君」


「まだ今日が始まったばかりだけどね」


 そんな風にやり取りをしていると、先生が入ってきて朝のHRが始まった






 その後、HRが終わった後も沙原さんと駄弁っていたのだが休み時間が終わり、最初の授業が始まった。

 僕が授業を受けていた時だった。視線を感じた……左の方から


「…………」


(さ、沙原さん、こっち見てる……?)


 授業中にも関わらず、こっちに視線を向けてくる。流石に気になって、僕は小声で声をかけた


「な、何かな沙原さん?」


「いえ、授業って退屈だなぁと思いまして。暇だったので黒木君の顔を見てました」


 い、いやいや!? 暇だからって僕の顔を見られても!? というか落ち着かないよ、そんなに見つめられたら! お願いだから沙原さんは自分が美少女だって自覚してほしい……


「だ、駄目だよ。授業は真面目に受けないと」


「勉強、好きじゃないです」


 お、おお。沙原さんって勉強嫌いだったんだ。確かに成績が良いとかって噂は聞いたことなかったけど……普段の態度は清楚な優等生に見えるのに、意外だな


「大丈夫だって。勉強だって頑張れば成績も良くなるしさ」


「いえ、結構です。頑張りたくありません」


「で、でもせめて授業くらいは真面目に……」


「嫌です」


 こ、子供だ……! 勉強するのを嫌がる沙原さんを見て少し前まで抱いていた礼儀正しく、清楚なイメージが完膚なきまでに壊れた。

 誰だ、沙原さんを清楚な優等生って言ったのは。こんなに勉強するのを拒否して授業を放棄する優等生がどこにいるんだ。


 結局、その後も沙原さんは欠伸をしたり、僕の方を見て笑顔を向けてくるばかりで全然真面目に授業を受けずに終わった。

 うん、欠伸は良いんだけどこっちをにこにこしながら見つめてくるのは止めてくれないかな、可愛すぎてこっちが死んでしまう


「沙原さんって去年もそんな感じで授業受けてたの?」


 休み時間になり、気になったことを沙原さんに聞いてみる


「いえ、去年は隣の席の人と仲良くなれなかったので。我慢して前を向いて授業を受けてましたよ」


 まぁそうだろうね。さっきみたいな感じで来られたら男子だったら緊張で死ぬだろうし。女子だったとしても相当仲の良い子じゃないとあんな事はしないだろう


「えへへ、やっぱり隣が黒木君で良かったです。これなら授業中も話し相手に困りませんし」


「いや、先生に怒られるから駄目だって!」


「む、じゃあ顔を見るだけで我慢します」


「それも勘弁してほしいなぁ……暇潰しにもならないでしょ?」


 というか僕の顔を見て何が楽しいんだ。至って平凡な男子高校生だぞ僕は


「退屈な授業よりは楽しいですよ? 黒木君の顔を見てるの」


 あああ、やめてくれ! 勘違いしそうになるから! 美少女が気軽に平凡な男子の心をかき乱すの禁止!




 結局、その後の授業も沙原さんに見つめられまくり、全然集中できずに終わった。

 誰か、助けてくれ。反対側で面白そうに見ている古宮君でも良いから助けてくれ

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― 新着の感想 ―
[良い点] 清楚で美少女、しかも優等生。その優等生が大間違いだった。これは普通のラノベの世界とは全く異次元で面白そう。黒木との接し方を見ると男子アレルギーはない、コミュニケーション力もある。優等生だと…
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