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我ながら面倒臭い

 古宮君と一緒に帰った日の翌日。今日は沙原さんが僕の家に来て一緒に登校する日だ。

 呼び鈴が鳴り、僕は鞄を持ってドアを開けた


「おはようございます、黒木君」


「うん、おはよう。今日もちゃんと起きれたんだね」


「ふふ、もう寝坊なんてしませんよ。私はもう子供じゃないんですから」


 胸を張りながら宣言する沙原さんは残念ながら凄く子供っぽく見える。そういう所が彼女の魅力的な所でもあるんだけど


「そっか。じゃあそんな大人な沙原さんの頭を撫でたりとかはもうしない方が良いかな?」


「えっ!? そ、それはその……うぅ……」


「あははっ、ごめんごめん。冗談だよ」


「も、もう! 黒木君、最近意地悪です!」


 プンプンと怒る沙原さんの髪に手を伸ばす。

 そのまま優しく撫でていると


「……黒木君、なでなですれば私の機嫌が良くなると思ってませんか?」


「そんな事はないよ。本当に悪かったと思ってるからやってるんだよ。嫌ならここまでにしておく?」


「……い、嫌とは言ってません。私が良いって言うまで止めたら駄目ですからね」


 僕は沙原さんの言うがまま、彼女の頭を撫で続ける。

 ……あまり長時間やるとヤバイな、これ。撫で始めた時は子供っぽい沙原さん相手にやるからあんまり緊張してなかったけど……冷静になると……


「ふふっ……気持ち良い……」


 今、僕の目の前には目を細めて気持ち良さそうに笑う美少女がいる。さらに、そんな美少女のさらさらの髪を自分が撫でているんだ。

 ……こんなの、緊張するなっていう方が無理だろ……!


「……さ、沙原さん? まだやるの?」


「むっ、まだ止めて良いって言ってませんよ? さっきの意地悪の分と……昨日こっそりコロッケを食べた分、しっかりなでなでしてもらいますからね」


「昨日のあれ、まだ引きずってたの!?」


「私だってコロッケ食べたかったですよ! 黒木君も古宮君もズルいっ!」


 食いしん坊! やっぱり子供じゃないか!

 でも助かった。少し緊張が解れたぞ


「分かったよ……でも、これで遅刻とかは無しだよ?」


「大丈夫ですよ、まだ時間はありますから。ほらっ、手が止まってますよ?」


「はは、ごめんごめん」


 そのまま、僕は沙原さんの仰せのままに頭を撫で続けた。結局、彼女が満足したのは時間ギリギリだった。







「ちょっと急ぎ目で行きましょうか。遅刻したら大変です」


 うん、そうなった原因は君なんだけどね。という言葉は飲み込んで、僕はいつも通りに沙原さんと一緒に歩く。

 ……ん? そういえば……


(沙原さん、今日は手を繋ぎたいって言わないんだな)


 前は散々言ってきたのに、どうやら今日はその気はないらしい


(……まぁ、毎日手を繋ぐのも変だよね。僕達はそういう関係じゃないんだし……)


 どうやら、今日は普通に登校できそうだ。良かった。

 ……うん。本当に、良かった……


「ん? 黒木君、私の顔に何か付いてますか? 何だかじっとこっちを見てましたけど」


「え? い、いや? 何でもないよ」


「?」


 そもそも、この前あんなに嫌がったのに、僕から手を繋ぎたいって話をするのも変……うん?


(ま、待て。今僕は何を考えていたんだ……!?)


 何で沙原さんに手を繋ぎたいって言おうとしてるんだ!? 恥ずかしいから嫌だって思ってたじゃないか!

 ……でも、沙原さんと手を繋ぐのは……僕は本当は、嫌じゃないと思っている……?


(自分で自分が分からないよ。あんなに嫌がってた癖に今更何を……)


 ーーー僕がそうやって考えていた時だった


「……あっ! 黒木君、もしかして……また手を繋ぎたいんですか?」


「はっ!? い、いや僕はそんな事……!」


「もう、それなら言ってくれれば良いのに。それとも、言い出すのが恥ずかしかったんですか?」


 楽しそうに笑いながらからかってくる沙原さん。僕が何も言い返せずにいると


「はいっ。黒木君、手を出して?」


「あっ……う、うん」


 僕が言われた通りに手を出すと、沙原さんがその手をギュッと握ってきた


「えへへっ、さぁ行きましょうか」


「……うん、行こうか」


 ……本当に、我ながら面倒臭い性格をしている。沙原さんみたいに、素直に言えたら良かったのに。

 ーーー『君と手を繋ぎたい』って。





 ちなみにその後、教室に手を繋いだまま入った僕達は、クラスの女子にからかわれたのだが


「いつも通り仲が良いねぇ」


「はい。今日は黒木君の方から手を繋ぎたいって……」


「へぇ! やるねぇ、黒木君!」


「ち、ちがっ!? 僕はそんなっ!?」


 そこには突然の沙原さんの爆弾発言に慌てて弁解する僕の姿があった。

 ……僕が素直になるのはまだまだ先になりそうだ

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