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男二人の話し合い

 ーーー二年生に上がり、沙原さんと出会って一週間が経った。……まだ一週間なんだね、そうは思えないほど距離があっという間に縮まったけど……。

 逆に、一気に距離が縮まったから、そこから大きな変化は無い。今日だって……


「黒木君! 今日は頑張って授業を受けられました!」


「そうだね。最後の十分間でリタイアしちゃったけど……うん、最初に比べたら大違いだよ。この調子で頑張ろうか」


「はい! 今度は寝ないように頑張ります!」


 こんなやり取りを彼女としていた。これも最早いつもの日常だ、慣れっていうのは恐ろしいね。

 と、いつもならこの後は沙原さんと帰るんだけど……


「じゃあ僕はそろそろ帰るよ。確か沙原さんは今日クラスの子達と帰るって言ってたよね?」


「はい、そうです」


 そういうわけで、今日は沙原さんとは別々の下校だ。前と同じ子達と帰るって話は朝に聞いていたんだ。

 さて、そうなると……古宮君はどうだろうか?


「古宮君、僕はもう帰るけど。一緒に帰る?」


「おう、良いぜ。今日は桜良も先に帰ってて良いって言ってたからな」


 お、じゃあ今日は古宮君と二人での下校か。何気に二人で帰るのは初めてだね


「じゃあ沙原さん。お先に失礼するよ」


「またな、沙原さん」


「はい。二人とも、また明日」


 僕達は挨拶を交わすと、二人で教室を出ていった。









「で? 最近はどんな感じなんだ?」


 二人で歩いていると、古宮君が唐突に聞いてきた


「うん? 何が?」


「沙原さんとの仲だよ。気付いたら当たり前みたいに手繋ぐ仲になってたじゃねえか? 何かきっかけでもあったのか?」


 そういうことか。前は昼休みにこういう話をしてたけど、最近は四人で学食に行ってるからね。古宮君にこういう報告をするのも久し振りだ


「きっかけかぁ……最初はあくまで沙原さんとはぐれない為に手を繋いでたんだけど……」


 僕がこの間の土曜日の話をすると、古宮君も面白そうに聞いていた


「ほう、お前らはそんな感じだったのか。なかなか楽しそうなデートじゃねえか」


「うん、そうだね……で、デート!?」


 何を言い出すんだ!? 僕はそんなつもりは無かったぞ!? ただ二人でお昼ご飯を食べて、クレープも食べて……最後に二人で手を繋ぎながら施設を歩いただけだよ!

 ……あれ、振り返ってみると……


「……え? で、デートだったのかな、あれって……?」


 多分、お互いに意識してなかったけどやってることは確かに恋人同士のデートみたいだった。なんて事だ


「ぼ、僕、沙原さんとデートしたのか……? いや、でも沙原さんはそんなつもりじゃなかったはずだし……」


「おーい黒木? 大丈夫か?」


「はっ!? ご、ごめん古宮君。考え込んじゃって…」


「いや、こっちこそ悪かったな。急に変なこと言ってよ。お前らは自然体で過ごしてればそれが一番良いだろうから、あんまり深く考えなくて良いと思うぜ?」


 そうなのかな……まぁ確かに、お互い何も意識してなかったならあれほデートじゃないよね。うん、あれは友達同士で仲良く遊んだだけだ、そうに違いない


「あっ、そういえばあの日古宮君も桜良さんと一緒にいたよね?」


「おう。学校が終わってから桜良の買い物に付き合ってたんだ。これもよくある事だけどな」


「そうなんだ。やっぱり仲が良いんだね、二人とも」


「はは、まぁお前らみたいに手は繋いでなかったけどな」


 ぐっ、にやにやしながら言われると何だか悔しい。古宮君も何とか慌てさせたいな……


「でも、最後は桜良さんと手を繋いでたよね」


「ああ、無理矢理だったけどな」


「良かったじゃないか。好きな人と手を繋げて」


「ああ、そうだ……ぶっ!?」


 僕が笑顔で言うと、古宮君が動揺した。

 ふっ、ようやくそのにやけ面を崩せたぞ


「お、お前何で……!?」


「古宮君、前に言ってたじゃないか。好きな人がいるって。それって桜良さんの事でしょ?」


「な、何で分かるんだよそんな事!?」


「いや、端から見たら丸分かりだよ。桜良さんに対する態度とかですぐに分かったもん」


「な、何てこった……!?」


 ガクッと項垂れる古宮君。どうやら本当に気付いていないと思っていたらしい


「な、なぁ、黒木が気付いたって事は桜良のやつにもバレてんのかな……?」


「どうだろうね? こればっかりは本人じゃないと分からないよ」


「そうだよなぁ……」


 まぁ二人の仲は見てるだけで分かるぐらい良いし、桜良さんの方も古宮君の事を特別に想ってる感じがするけど……これは本人には言わないでおこうか


「それで? 古宮君はいつから桜良さんの事が好きなのさ? やっぱり中学の時から?」


 僕が聞くと、古宮君は頭をかきながら照れ臭そうに答えた


「あぁ……はっきりとは覚えてねえけど、多分中学の時からだよ。気付いたらあいつと一緒にいるのが楽しくて、もっと一緒にいたいと思って……それで……」


「好きだって気付いたんだ?」


「ぐっ……こっ恥ずかしい話させやがって……。あぁそうだよ、そっからずっと俺の片想いだよ」


「そっか」


 片想いか……桜良さんの気持ちも気になる所だけど、これからどうなるかは二人次第だ。僕が首を突っ込む必要もないだろう


「そういう黒木はどうなんだよ? 沙原さんの事はどう思ってんだ?」


「僕? うーん……」


 さっきもデートって聞いて動揺しちゃったけど……僕が沙原さんをどう思ってるか……そうだなぁ……


「……今はまだよく分からない、かな。あの娘と一緒にいるのは好きだよ。でも、それが恋愛感情かは……まだ分からないな」


「そうかい。ま、俺みたいにある日急に気付く時もあるかもしれないからな。その時は相談に乗るぜ?」


「古宮君……はは、ありがとう」


 なんだかんだ言って、古宮君は優しい人だ。困った時は相談すれば助けてくれるだろう。逆に、彼の相談にも乗れる時が来るかもしれない。

 よし、そうなった時の為にも連絡はいつでも出来るように……はっ!?


「そうだ! 僕、古宮君と連絡先を交換してないんだった!」


「おお、そういえばそうだったな。んじゃ、折角気付いたんだし今交換しちまおうぜ」


 やっと古宮君の連絡先を知れた……! 何で男友達より先に学校一の美少女の連絡先を手に入れてるんだ僕は、色々とおかしいだろ


「ありがとう。今度、桜良さんとも交換しないと」


「おう、今度会ったら聞いてみろよ。黒木の事は気に入ってたからすぐに教えてくれると思うぜ」


 そっか、それなら今度聞いてみよう。

 と、考えていると


「よっし! なら連絡先交換記念って事で……あそこのコンビニでコロッケでも買って食おうぜ!」


「また唐突だね……それって古宮君が食べたいだけでしょ?」


「何だ? 黒木はいらねえのか?」


「……食べないとは言ってないさ」


「はははっ! そう来なくっちゃな!」


 その後、僕達はコロッケを一個ずつ買い、コンビニの前で駄弁りながらも美味しく頂いた。

 食べ終わり、少し歩いた所で


「お、ここまでだな。じゃあまた明日な、黒木」


「うん、またね」


 こうして、男二人の下校は終わった。うん、古宮君と帰るのも楽しかったな。やっぱり話しやすい友達との帰り道は楽しい。





 ……ちなみに、その後


『今帰りました。黒木君ももうお家ですか?』


 家に帰ったら沙原さんからメッセージが届いていた。コンビニに寄っていたからいつの間にか抜かされていたらしい。コロッケを食べていたからメッセージに気付けなかったみたいだ


『ごめん、今気付いた。僕は今帰った所だよ』


『あれ? 黒木君と古宮君、私達より先に教室を出ていきましたよね?』


『ちょっと寄り道しててね。帰り道の途中で二人でコロッケ買って食べてたんだ』


 と、送ると……携帯が鳴り出した。え、電話?


「も、もしもし?」


『ずるいです! 黒木君、私と帰る時は買い食いなんてしないじゃないですかっ!』


「い、いや今日はたまたまそういう流れになっただけだよ」


『むぅ……! 私も黒木君と一緒にコロッケ食べたいです!』


「わ、分かった分かった。じゃあ今度一緒に行こう」


『……約束ですよ?』


「うん、約束」


 何とか沙原さんを宥めて、しばらく話してから電話を切った。機嫌を直してくれたことにホッとする。

 ……うん、やっぱりまだ分からないな。彼女へどんな感情を抱いているかは……僕にも、まだ

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