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四人の昼休み

 沙原さんの頑張る姿を見守り続け、気付けば午前中の授業は終わり、昼休みになっていた


「うぅ~……結局午前中の授業は全部途中で寝てしまいました……。不甲斐ないです……黒木君、見損ないましたか……?」


 何とも申し訳なさそうな顔で僕に謝ってくる沙原さん。やれやれ……この娘は全くもう……


「沙原さんが頑張って起きようとしてたのは知ってるよ。だから、見損なったりしないよ。また頑張ってみようよ、ね?」


「黒木君……もう、本当に優しいんですから……。ありがとうございます、また頑張りますから……次も見守っていてくださいね?」


「うん、勿論」


 笑顔になってくれた沙原さんに、僕も笑い返す。何とも和やかな空気だ。

 と、二人で笑い合っていると


「あー……いちゃついてるとこすまん。そろそろ昼飯食いに行こうと思うんだが」


 控えめな声で古宮君が話しかけてきた……って!


「い、いちゃついてないよ! 急に何を言うのさ!」


「いやいや、流石にあんな空気出しといてそれは無理あるだろ。二人ともキラキラして見えたぞ」


 古宮君の言葉に沙原さんも反応する


「キラキラ……そうなんですね。黒木君と私は輝いていましたか?」


「ああ。光輝いて見えたぜ」


「すごいですね! 黒木君、私達輝いていたみたいですよ!」


「ちょっと! 沙原さんは純粋なんだから変な事吹き込まないで!」


 ああもう。沙原さんは何でも信じるんだから……ちゃんと目を光らせていないと本当に心配だ


「で、昼飯どうする? また学食行くか?」


「ああうん。そうしようか」


 話を戻した古宮君に僕も頷く。そして、二人で移動しようと思った時


「あっ、それなら私達も一緒に行って良いですか? 私と雪実ちゃんも学食で食べようと思っていたので」


 沙原さんがそんな提案をしてきた。まぁ昨日と違って桜良さんとも知り合いになれたし、彼女と仲が良い古宮君もいるしね。断る理由は特にないな


「僕は良いよ。古宮君は?」


「おう。俺も良いぜ」


「じゃあ雪実ちゃんを誘いに行きましょう!」


 嬉しそうに言って沙原さんが席を立った。そんな彼女に続いて僕と古宮君も教室を出た。







 桜良さんのいるクラスの教室に着くと、丁度教室から出てくる桜良さんの姿が見えた


「あら、今日は二人も一緒かしら?」


「はい。皆でお昼を食べようかと思いまして。良いですか?」


「ええ、勿論。黒木君とももっと話してみたかったし……古宮はいてもいなくても変わらないしね」


「おい!」


 桜良さんの言葉に噛みつく古宮君。そんな彼を楽しそうに見る桜良さん。……君達の方こそ二人だけの空間を作っているじゃないか


「えへへ、皆でお昼ですね! 楽しみです!」


「うん、僕も楽しみだよ」


 こうして、僕達は四人で学食に向かうのだった。






 ……で、無事に席は取れたんだけど


「えっと……座る位置はこれで良いのかな?」


 僕が聞くと、皆は頷いた。あ、これで良いんだ……


「何か気になるんですか? 黒木君」


「いや、てっきり男女に別れるものかと思ってたからさ」


 今の席の配置は僕と沙原さんが隣同士。対面に古宮君と桜良さんが座っている状況だ。僕はてっきり隣には古宮君が来ると思っていたんだけど……


「良いじゃねえか。黒木の隣に沙原さんがいるのは見慣れた光景だしな」


「はい、私も隣が黒木君だと落ち着きます」


 そう言って笑う沙原さん。そう言ってくれるのは素直に嬉しい、僕だって沙原さんの隣にいられて嬉しいんだけど……


(周りの視線が凄いんだよなぁ……)


 最近忘れかけていたけど、沙原さんは学校でも人気な美少女だ。僕達のクラスでは最早慣れ親しんだ光景であっても、それ以外の人達から見たら隣にいる男は何者だって話になる。

 その結果、周囲から滅茶苦茶見られてしまっている。こんな風に目立った事がないから落ち着かない。沙原さんは気付いてないみたいだけど


「……黒木君、大丈夫? 辛いなら席変わるわよ?」


 そんな僕を見て心配そうに桜良さんが言ってくれる。とってもありがたい提案だけど……


「ありがとう、でも大丈夫だよ。僕はこれからも沙原さんと仲良くしたいからね、今のうちにこういう視線にも慣れておかないと」


 遅かれ早かれ、沙原さんと仲良くしている所を見られたら注目される事は確実だったんだ。こんな視線に負けて沙原さんとの縁が無くなるなんて絶対に嫌だ


「僕は平気だよ。こんな視線、いくらでも浴びてやるさ」


「……ふふ、強いのね。改めて貴方が朱凛さんの隣の席で良かったと思ったわ」


 桜良さんが優しい表情で僕に言う。

 強い、か。それはどうか分からないけど、腹は括った。僕は沙原さんの友達である事を絶対にやめない


「? 二人とも何を話してたんですか?」


 不思議そうな顔で聞いてくる沙原さんに、僕は笑いかける


「はは、何でもないよ。ほら、お昼にしようよ」


「あっ、そうですね。ではいただきましょうか」


 どこまでも純粋な彼女に僕も自然と表情が緩む。そんな彼女に続いて、僕達もお昼を食べ始めるのだった。






「にしても午前中は沙原さん頑張ってたよな。授業中に寝ないようにしてたんだろ?」


 昼食が終わって四人で喋っていると、古宮君が午前中の話をする。

 そんな彼の言葉に、沙原さんは恥ずかしそうに


「そんな、全然駄目でしたよ。結局半分くらいしか起きれませんでしたし……」


「半分、ね。……まだまだ先は長そうね、朱凛さん?」


「あう……」


 苦笑しながら言う桜良さんに、沙原さんは俯いてしまう


「そんなに落ち込むことねえって。それに、これからも黒木が見てくれるんだろ? ならまだまだ頑張れるって。なぁ?」


「あら、そうなの。なら黒木君に任せれば大丈夫かしら?」


 古宮君と桜良さんが楽しそうにこっちを見る。全く……僕が沙原さんを慰める流れが出来てしまったな


「さっきも言ったけど……僕は沙原さんが努力するならちゃんと見守るし、寝そうになったら起こそうとするよ。……今日は失敗しちゃったけど」


 次は肩を揺するとかしようかな、と思いながら言うと、沙原さんが顔を上げて嬉しそうに笑った


「えへへ……黒木君が隣なら大丈夫ですよね。私、本当に黒木君と友達になれて良かったと思います」


「僕も同じ気持ちだよ。沙原さんを助けられるように頑張るね」


「ふふ、嬉しいです。頼りにしてますね」


 僕達がそんな風ににこやかに話していると


「……何だか途中から話に入れなくなったわね。まるで二人だけの空間が出来たような……」


「見たか。これがうちのクラスの名物の『二人だけのほんわか空間』だ。俺は毎日隣でこれを見てるんだぜ?」


「これがそうなのね。でも見ていて微笑ましいわ……ちょっと古宮が羨ましいかも」


「そうだろそうだろ。結構見てて楽しいんだぜ。羨ましいだろ?」


「羨ましいのは確かだけど。とりあえず古宮のどや顔がムカつくわ、こっちは見ていてただただ腹立つわね、殴るわよ?」


「そこまで言うか!?」


 正面が騒がしくなってきたので前を見ると、二人が痴話喧嘩を始めていた。

 うん、これは……


「何だか話しかけにくいね、二人だけの空間が出来てるみたいだ」


「そうですね。でも、二人とも何だか楽しそうに見えます」


「はは、そうだね。見ていて微笑ましいかも」


 ……こうして、少し騒がしくなりながらも、四人の昼休みは終わった。

 ちなみに、教室に帰る途中に古宮君に


「桜良さんと二人だけの空間が出来てたよ」


 って言ったら


「先にお前らが作ってたけどな」


 って言い返された。

 記憶に無いんだけど……いつ作ったんだ? そんなの

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