6. 《チート・シングル》の新たなる力(12月24日22時)
「ニコラス、美味しいねこれ」
俺は今、護衛任務の最中だ。
「ニコラスって好きな食べ物とかあるの?」
繰り返す。護衛任務の最中だ。
「あ、このハンバーグ見て! すごい肉汁!」
肉汁のナイアガラや!
――って、俺は今、護衛任務の最中だ!
「ねぇニコラス……楽しく、ない……?」
「いやいやいや、そんなことないですよ! すごく楽しいです! ただ、まさか皇女様と食事をすることになるだなんて、思ってもいなくて」
「そうなんです? 私は、いつかしたいと思ってましたけど」
「えっ……?」
「あ、いや、ちがっ……! 今のは忘れて! いや、その、あんなに有能な書類を提出する人ってどんな人なんだろう、って興味を持っただけで!」
「あぁ、なるほど!」
そういうことか!
一瞬ドキッとしてしまった……。
「ねえ、デザートは何頼む?私は――」
ドンッ。
「きゃっ!」
「おい、テメェどこ見てんだよ」
見ると、カップルの男がぶつかったらしい。
「うわ、私のダーリンにぶつかるとか最低~!」
「待っててくれよなハニー、こいつちょっと分からせるから」
男の手がマリーに伸びる
「そこまでだ」
「あ? お前何者だ?」
「この人の――」
護衛だ、とは言ってはいけないのか。
じゃあ、俺とマリーの関係は、一体なんと説明すればいいんだ……
「――友達だ」
「はあ? 友達が俺らラブラブカップルに敵うと思ってんのか? なーハニー?」
「そうよダーリン、こんなやつなんかやっちゃいなよ!」
……なんだこいつら。
「あ? 何とか言えよ?」
……ったく。
「友達を守っちゃ悪いか? 大事な友達なんだよ」
「っ――!」
マリーがなぜか嬉しそうな顔をしたが、今は後だ
「あぁ、何だテメェ! やろうってんのか? ボコボコにしてやんよ!」
「ニコラス危ない!」
相手のパンチを躱す。
ったく、ここは店内だぞ……!
……喧嘩は嫌いなんだけどな。
「《チート・シングル》。攻撃力上昇」
攻撃力上昇は、攻撃力がわずかに上がるというものだ。
わずかに上がる程度なので、きっと殴るだけなら問題ないだろう。
相手のパンチを掻い潜ってお腹に一発お見舞いする。
「うああああぁぁぁぁ!」
バコン!
バコン!
天井を突き抜けて飛んでいく男。
天井を突き抜けて飛んでいく男、だと?
いや、ちょっと殴っただけなのに……
「ぁぁぁぁああああ!」
やばい、この高さから落ちると大怪我だ!
「《チート・シングル》!回復!」
落下して床にぶつかった直後の男に回復魔法を使う。
「貴様この野郎! 痛ってぇじゃねぇか! 痛った……くない?」
見ると、男には傷一つない。
「お、お、お、お前、何なんだよ! 何なんだよぉぉぉぉ!」
「待ってダーリン!」
店から逃げ出した男を追うように、女性も店を出る。
「……えっと」
俺は困惑するばかりだった。
「いやあ、助かりましたよ! あの客は、よくうちに来て他の客にイチャモンを付けてたんです。追い出そうにも、男の方のパンチが強くて。ぎゃふんと言わせられたみたいで、こっちまでスッキリしましたよ!」
店の奥から店長と思しき人が出てくる。
「すみません、天井を壊してしまって。店の評判も、もしかしたら……」
「まさか! 天井が壊れたことくらい、あの客を追い払えたことに比べれば軽いものですよ。あの客がいなくなったことで、この店の評判も上がるでしょうし!」
むしろサービスしますよ、と言われてしまった。
「ねぇニコラス、今何やったの? 天井を突き破るなんて……」
「攻撃力をわずかに上げただけだけど……」
「あれだけの高さから落ちて無傷だったのは」
「わずかに回復しただけだけど……」
……これ、思った以上にえげつないスキルなのかもしれないな。
俺は一人そう思ったのだった。
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