13
「無理やり押し倒されて、素手で顔を掴まれたんです。この命を懸けてジャムを見つけ出し敵を討つ……狂気的な人ですが……ジャムがこんなことしないでしょう」
「……それが演技なんて事は……ないと考えて良いと思います」
タラバさんが相槌を打つ。
「じゃあアンさんは違う、と」
タラバさんが、僕の推理を聞いていた。
「あと、ゾカさんはドジな子なんです、背丈も小さいし、行動も子供っぽいというか、だからジャムではないんではないでしょうか?」
「確かジャムは進化中で、知能が低いと推測されています。それに前のジャムは子供だったわけでしょう、何の反論にもなりませんよ」
「……はぁ……ではゾカさんがハロさんを知っているという話も、信用できないか」
「そうなります、それから次は?」
「ヨオキさんも違うと思います」
「あの迎えに来たメイドですね……そうですね、顔見知りですから」
「はい」
「それから次は?」
「あとは、まったくわかりません」
「ええぇ……」
タラバさんがあらかさまに、なんだそれって、顔になった。
「うーん、これはダメだぁ、2人しかなんてぇ」
「そんなこと言われましてもね、こっちは今日、ジャム被害が出たばかりなんですよっ」
素人の僕にどうしろってんだ。
「それもそうですね……駆除部隊が田中さん達を駆除しに来るのも近いです、アンさんの言う死ぬのを待っての方法では遅すぎると思います」
「やはりそうですよね……」
「では田中さん、我々も手を尽くします、今日はここまでのようです」
「えっどうして?」
「長い時間のアクセスは禁じられて降ります、また明日。同じ時間に。失礼いたします」
窓があっという間に消えた。
「あっちょっと!……」
ベッドに寝転んだ。
なんだなんだよ、もうっ。
……ああ……。
……何にも……。
……僕の体に異常がない事がすべての前提だ……。
もし、僕が汚染されていたら……。
――やめよう!
頭を振る。
考えると怖くて仕方ない。
僕は目を瞑る。
ハロさんが死ねばゾカさんがジャム、逆ならハロさんがジャム、どちらも死ななかったら二人ともセーフ。
僕が死ねばアンさんがジャム、死ななければ二人ともセーフ。
そして全員セーフならサンロさんかヨオキさんがジャム……。
……アンさんの言う、この方法なら……結構絞れるのに……。
時間が……ないとは……。
本部の……駆除隊が……僕らを……駆除……。
なんか……眠たく……なって……きた……。
早く……見つけ……ないと……いけ……ない……のに……。
……。
目が覚めると、隣のベッドにヨオキさんがいた。
眠ってしまったらしい。
「イマノリさん、ぐっすりでしたね」
起きたのに気づいて、ヨオキさんが笑って言ってきた。
「ああ、寝ちゃってた」
……副作用とか言ってたな。
「ご飯作って待ってましたのに、あまりに気持ちよく寝ているから、起こさずにしておきました」
「……お腹減りました……」
さすがに1日食べてないと、こんな時でも食べたくてしょうがない。
「でもイマノリさんの入浴の時間ですから、先に入った方がよろしいと思います」
「そんなに寝てたんですか……」
丁度良い、さっぱりしたいし、入るかな。
「ヨオキさん、テヲ・ライ伍長と一緒に風呂に入りました?」
ちょっと聞いてみた。
ヨオキさんが俯く。
「……はい、入りました……」
「ああ、やっぱり」
やっぱ、僕だけじゃなかったか。
「……実は私も入ったんです」
「イマノリさんも!」
「それで感染してないのかって不安だったけど、大丈夫みたいです。もう7日目の夜です」
「もう……安心して良いんでしょうか?」
「誤差は10時間、僕らは大丈夫です」
ヨオキさんが安心した顔になる。
「私、ずっと不安だったんです……私、この中にジャムなんていないと、気にすることなんてなかったので、料理の時なんて、いつも素手でしたし、そんなに接触も気にしてなかったんです。だからホントに驚いてしまって……」
「そうですね……私もそうでした……」
部屋を出て風呂場に向かう。
しかし、
楽しげな声が風呂場から聞こえた。
……この声は……。
……ハロさんとゾカさん?
脱衣所の入り口に立って中を覗く。
「誰!そこにいるのは!」
ハロさんの声が響いた。
剣を片手に持って切っ先を向けてくる。
僕は咄嗟に両手を上げた。
「イマノリ?」
バシャバシャと水音がして、ゾカさんが衝立越しに見える。
「私の番だから入りに来たんですが……」
「すいません、失念しておりましたわ」
ハロさんが剣をしまう。
僕の目はさっきから2つの巨峰にくぎ付けだ。
「ふ、2人で、はっ入っているんですか?」
しどろもどろになって尋ねる。
「そうっす」
「もう気にすることはないですから」
ハロさんは微笑んで冗談めかして言った。
「ヨオキのように、もっと早くから気にすることなかったっす」
ゾカさんが突っ込むように言う。
「監禁の事は、黙っておいてくれませんか……?」
「へ、ああ、黙っときますよ」
「ありがとう、イマノリさん」
「今度はヨオキも連れて入るっす」
「そうですわね」
ヨオキさんはダメだろ、接触しちゃ、まったくゾカさんは……。
……でも、良いなぁ。
何でも良いけど、僕も一緒に入りたいなぁ。
「じゃあ私、出るまで待ってますね」
そう言って踵を返そうとすると、
「いえ、もう出ますわ」
「もうそんなに経っていたとはっす」
「そうですか?」
僕は交代で僕は風呂に入る。
そして今日初めての食事を、もう何も考えず一気に平らげた。
もう明日から考えよう。
と、昼にも寝たってのに、夜も寝付けない事なく、ぐっすり眠ってしまった。
「イマノリさん!」
「……うん……?」
「イマノリさん!起きてください!」
寝ていた僕をヨオキさんが起こしてくる。
「イマノリさん!ゾカさんが!」
「ゾカさん……?」
「死んでしまいました!ゾカさんが!ジャムに!」




