11
ゾカさんが監禁され、ハロさんとヨオキさんは調理に戻っていく。
「では私は伍長の埋葬の続きをしてくる。イマノリさんに手伝ってもらうか」
断事もできず、僕はアンさんと外に出る。
「倉庫から薪を持ってきてくれ、こっちは私がやる」
「はい」
建物横で、テヲ・ライ伍長の下に炭を引き、薪して遺体を燃やしていた。
僕はずっと薪を何度にも分けて運ぶ。
ついでに今日使う分も持ってくるようにとのことだった。
「あとは、火が消えない様に見張ってるだけで良い」
「はい」
やっと終わった。
「もう手伝う事なんてない」
アンさんがそう言ったので、
「じゃあ、私は――」
「――いや、待ってくれ」
「えっ?」
「聞きたいことがある」
アンさんがこっちに振り向きながら言ってきた。
「ここに来た日の事だ、風呂上りに食堂で会ったのを覚えているな?」
「……」
……たしかに……会ったような気がする……。
「はい……なんとなくですが……」
「覚えていなくても良い、私が覚えている」
アンさんは早口に、
「あの時、あの時間は伍長の入浴時間だった。なぜイマノリさんが入浴していたんだ?」
そう詰問してきた。
……あの時、テヲ・ライ伍長と一緒に入ったんだ。
……本当のことは言えない。
完全に疑われる。
「順番を譲ってもらったんです」
思い出すふりをしながら言った。
「あの時、私が決まりを知らず入ってしまって、テヲ・ライ伍長は、私は後で良いゆっくり入れと、私に言って……」
アンさんが僕を見据えている。
どこかおかしいところあったかな……。
誤魔化されてない……のか……。
疑われているのか……?
「そうか……」
アンさんは僕から炎に目を移した。
僕はそっと息を吐く。
「……まだ、私達を疑っているんですか?」
「そうだ、ヨオキさんにも後で尋ねたい。どうも一緒に風呂に入ったようなんだ」
えっヨオキさんが?
「あなた方は2人で見つかり、ジャムに襲われてたからジャムではないと判断して、油断して一緒に入ったなんて、伍長の事だ、あり得る」
「全くその通りで……私達はジャムではありません」
「どうかな、見落としがあるのかも……」
「いえ、そんな事……」
疑いすぎだよ……。
「……私は、伍長に憧れていた……」
「ん?」
アンさんは静かに話し出した。
「仲間がみんな死んで、私だけ生き残った。当時私は基地で昇進試験を受けていたんだ、それで地下の部屋に隔離されていた……。皆応援してくれた……」
空を見上げる目に、涙がたまっている。
「部屋から出れなくなった……ジャムが入り込んでいて……でも……仲間は閉じられた扉越しに、集まってくれた。私の……試験結果を知りたいと尋ねてきた……結果を聞くと、喜んで、くれたんだ……食べ物も持ってきてくれて、後日、私だけ救助された……」
アンさんは必死に涙を堪えていた。
そして、、何もしゃべらなくなった。
目から涙がぽつりぽつりと落ちるのを、アンさんは必死で拭う。
しかし次から次にあふれ出る涙には何の効果もなかった。
沈黙が僕らを包む。
「……なんて言えば良いのか、その……」
僕はしどろもどろで口を開く。
「えっと……、……」
しかし、何も言えない。
「……すまない……話が、脱線してしまった」
アンさんは頭を振って切り替えようとしていた。
「その時だ、伍長に会ったのは。精神的にさいなまれ、味も感じなくなっていた私に、伍長は生きる力をくれた。私もこうなろうと、いつもあの人を見ていた、だから――」
語気強くそう言いながら、
「必ず、見つけ出す。伍長の仇は必ず打つ」
と、僕を見て言い放った。
これは宣言などではない。
僕に向け放たれた言葉だった。
「……私がジャムだとおもっているんですか?」
「そうだ、ゾカの方はハロの今後を見れば判明するからほっといて良い、感染していたらどちらかが゛シャムだ。生き残った方を殺せば良い。問題はあなた方2人だ」
――ザッ。
土を踏みしめる音なのはすぐわかった。
地面を蹴る音だ。
アンさんが突進して、なすすべなく組み伏せられる。
顔がわしづかみにされ、
「これで私が死ねば、誰がジャムかはっきりするな」
微笑んで言った。
アンさんは手袋をしていなかった。




