第1話 いい事をして猫に付いて行くと
俺は翔平、知り合いからは「ショウ」と呼ばれている。
夕方音をたてないように荷物を担いでアパートからでて来ると「森のキャンプ場」という看板に向かって車で進む。
途中にある「ルマスエート」というカタカナ名のお蕎麦屋さんは十年来の行きつけのお店だ。
「いらっしゃいませ」
昔友達に紹介されて食べに行ったけど いつのことだったか?
友達って誰だっただろう?
「ご注文は?」
そうそう 注文をしないと。蕎麦屋なのに経理のお姉さんのような服装の店員だな。
「浜舞の1LDK一つと・・持ち帰りでソバを一つ頼む」
「かしこまりました。ご注文を繰り返し・・」
ぐ~っと俺のお腹の音が鳴りお姉さんは復唱中にクスリと笑う
「中島」というプレートに頭にちょこんと乗っけたような白い帽子が目に入ってきた。
ドン!
「お待たせしました」
「待ってたよ これこれ」
テーブルの上に置かれたお蕎麦はカツオと海の香りが立ち昇る熱々のお蕎麦。
トッピングは 1LDKのかき揚げでエビや卵なんかで家具で配置されている。
「お客様 浜舞は決まっちゃいした」
「そうか これが最後だな」
厨房のある壁の向こうから声がする
「おーい 中島 ちょっと手伝ってくれ」
「は~い 今行きまニャー・・・今行きます! それではお客様 ごゆっくり」
はつらつと元気いっぱいの中島さんを見送って一人になった俺は気兼ねなく音を立ててソバをすすった。
会計を済ませようとレジに行くと 少し息を切らした中島さんが出てきてお会計と持ち帰り用のお蕎麦を渡してくれる。
「ありがとうございますニャー」
「中島さんって どこ出身なの?」
「フフフ・・」
「ははは」
可愛い照れ笑いを見られて俺はラッキーだ。
バイクを走らせて「森のキャンプ場」の看板を進む。
「明日わ~♪ きっと ラッキーマン~♪ 明日わ~ 当たるぜ宝くじ♪ 急騰するぜ バリュー株♪」
キャンプ場に到着してテントを張って寝床を確保する。
お湯を沸かしてコーヒーの支度をしていると「ニャー ニャー」猫が近寄ってきた。
明日の朝食のお蕎麦を数本鍋に入れてゆでる。
「ほ~ら お食べ・・お前も面好きなんだな。1LDKだ美味しいだろ?ははは」
満足した様子の猫は「ニャー ニャー」と鳴くと何度も後ろを振り返る。
「俺に付いてこいって言ってるのか?」
「ニャー ニャー」
茂みをかき分けて獣道を抜ける。
猫ならすんなり通れる隙間を枝をかき分けながら付いて行くと
バサ!
開けた場所の出た。そして 目にした光景は異様だ。
「や・・やめるんだ!!」
目に入ったのは 女性と女の子。
ロープを首にかけて 何をしているんだ。
「無駄だ。諦めろ そんなことをしたってすぐに助けてやる!」
重たく暗い二つの顔が持ち上がると意識のない瞳がこちらを見据えた
「私たちはもう・・諦めています・・。」
女の子はコクリとうなずく。
「ニャー ニャー」
猫は俺の足に擦り寄り頬ずりをしてきた。
そうだ。
「お蕎麦があるんだ。食べてけよ」
「おそばですか?」
母親と思われる女性は 女の子を顔を見つめる
「そうね・・最後はお蕎麦でいい?」
「うん ミオはママと一緒がいい・・」
二人はロープから手を放した。