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前略、道の上より-9

          *


 「たいへんなのよ!」

あやがジローの部屋に飛び込んできた。

「どうしたの?」

「イチロー君が、直樹さんに呼び出されたのよ!」

 休日の土曜の昼だった。ジローは驚いて、一瞬言葉を失ったままあやの顔を見つめた。

この間の一件だ。そう思いながらも、次の行動に出ることができなかった。

「どうしよう…」

あやが心配そうな顔を見せたとき、ようやくジローは決断できた。

「とりあえず、由起子先生に連絡して。それから、中川なら何かわかるかもしれない。ボクはどこか探してみるから。あ、兄さんは、どんな格好で出て行った?」

「いつもとおんなじ。自主トレに行こうとしてたときに、電話が掛かってきて、それで、そのまま」

「じゃあ、いつものトレーニング・ウェアだね。わかった。あやちゃん、後のことはお願い」

 ジローはそのまま飛び出した。とりあえず緑地公園へ向かうことにした。


 あやは学校に駆け込んだ。そして職員室に入ると由起子先生を探したが、面識のない数人の先生がいるだけで由起子先生は見当たらなかった。仕方ないので次に新聞部を目指した。新聞部には、大勢の部員がいた。あやはほっとして泣きついた。

「イチロー君がたいへんなの!」


 ジローは緑地公園をあちこち駆け回ったが、イチローも直樹も見つけ出すことはできなかった。仕方ないので学校へ戻ろうとすると、学校の方から江川たち数人がやってきた。

「おい、ジロー。イチローがたいへんなんだって?」

「そうらしいんだ」

「いたのか?」

「んん。見つからない」

「みんなで手分けして探そう」

「あやちゃんは?」

「グラウンドに来たんだ。イチローと直樹さんが決闘するって言って。本当か?」

「……たぶん」

「たいへんだよ、そんなの」

「由起子先生は?」

「今日は来てないみたいだから、電話するって」

「そう。中川は?」

「いるよ。今、学校で捜査本部を作ってる」

「捜査本部?」

「あっちこっちに電話して、見掛けてないか問い合わせてる」

「ありがたいな、こういうときに、あいつは」

「あぁ」

「じゃあ、とりあえず、公園を探してみるか」

「うん」

「おまえら、そっち、回れ。俺たちは、こっち行く」


 「いたか?」

「いない!」

 公園を駆け回る少年たち。

 緑道を駆け抜ける少年たち。

 携帯で連絡を取り合う少女たち。

 誰も、二人を見つけられない。


 「中川君!」

新聞部部室に駆け込んできたのは由起子だった。

「イチロー君と直樹君が決闘って、本当?」

「らしいよ」

「どこ?」

「みんな探してるけど、全然手掛かりがないんだ」

「…そう」

「まいったな……」

「でも、たぶん、大丈夫よ」

「え?」

部室内にいた全員が由起子に注目した。

「直樹君なら、バカなことはしないわ」

「ま…まぁ、そうかもしれないけど」

「待ちましょ、誰かから連絡が来るのを」


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