前略、道の上より-11
直樹は指さしながら言った。
「ほら、あそこに高速道路があるだろう。その先に二六号線がある。二六号線をずっと南に行くと、湾岸線につながってる」
「あ…あぁ」
「あの道をずっとマラソンする。どうだ?」
「マラソン?本気かい?オレは、マラソンは得意中の得意だぜ」
「知ってるよ」
「いいのか?」
「自分だけがランニングしてると思ってるのか?」
「……ん」
「サドンデスだ。行けるとこまで行く。先にぶっ倒れた方が負けだ」
「行けるとこ…って、どこまで?」
「どこまでも」
「ずっと?」
「そうさ」
「帰りはどうするんだよ」
「そんなことは考えない。とにかく、一歩でも、一センチでも、前に進めた方が勝ちだ。単純だろう」
「そ…そりゃ、それでもいいけど…、本気か?」
「もち」
平然とそう言い放つ直樹にイチローは少し戸惑ったが、頷いた。
「じゃあ、いいな。よくウォーミングアップしておけよ」
直樹は体を動かし始めた。イチローも慌てて体をほぐし出した。
「腹が減るな」
「まぁ、少しくらいなら奢ってやるさ」
「ションベンとか、どうするんだよ」
「そんなもん、どっかそこらですればいいだろ」
「ま、まあな」
イチローは柔軟体操をしながら考えた。ここから二六号線まで約一キロ、そこから南進して湾岸線までは、確かかなりある。
「あのさぁ」
「なんだ?」
「湾岸線ってかなり向こうじゃないか?」
「だけど、せいぜい四〇キロくらいだろ」
「…マラソンだな」
「そこからまだ先へ行くんだぜ」
「のたれ死ぬまで」
「そう」
「負けたら、放って行かれるんだな」
「そうさ。道端にのたれ死ぬって訳だ」
「負けられねえな」
「あぁ。死にたくなければな」
あっさりとそう言い放つ直樹にイチローはどこか感心していた。
「さぁ、準備はいいか?」
「いいぜ。勝負開始だ」




