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第5話 それって「魔王城」ってことだよね?

 結論から言おう。

魔王城に到着するまでの1週間で、ノイルは1回も死ななかった。

本当に本当に、1回も死なずに魔王城まで辿り着いたのだ。

かといって、1体でも魔物を倒したのかといえばそうでもない。

空離剣ナンバーフォーを使いまくり、1度も攻撃を受けずにラピリアを突き抜けたのだ。

そして今、魔王城の門の前に立っている。


 「着きましたね。」

「そうだな。まぁ、ここからはあまり空離剣ナンバーフォーを使うな。訓練にならなくなるからな。」

「分かりました。」


 魔王が既に滅び、無人の城となっているとはいえ、中には強力な魔物が多くいる。


-さて、出来るだけ死ぬ回数は減らさないとな…。


 ノイルの思考は、「いかに死なないか」ではなく「いかに死ぬ回数を減らすか」に切り替わっていた。

もはや、常人の思考を放棄しているのだ。


 「さて、魔王城に入る前にこれから学ぶ2つの技について説明しよう。」


 そう言って、サリシアは剣を抜いた。


 「来たぞ。」


 サリシアの視線を辿って上を見ると、巨大なドラゴンが向かって来ている。


 「空離剣ナンバーフォーを使え。そこから見ていろ。」

「分かりました!空離剣ナンバーフォー!」


-あのドラゴン、本で見たことがあるぞ!?

 確か、火属性のドラゴンの最強格「ゴールドファイアドラゴン」だ…っ!


 ゴールドファイアドラゴンは、真っ直ぐにサリシアに向かって飛んでくる。

そしてサリシア目掛けて、大きく口を開け巨大な金色の火炎魔法を吐き出した。

サリシアがぐっと剣を構える。


 「魔滅剣ナンバーワン!」


 サリシアが火炎を剣でなぎ払う。

と、サリシアを飲み込まんとしていた火炎が、一瞬にして消滅した。


 「馬鹿な…っ!?」


 安全地帯で見守っていたノイルも、思わず声を上げる。

しかし、サリシアの剣はまだ止まらなかった。


 「空滅剣ナンバースリー!」


 自分とゴールドファイアドラゴンとの間の空間を斬って消滅させ、一気に距離を詰める。

サリシアの体が、ゴールドファイアドラゴンの頭上1m程のところに現れた。


 「魔滅剣ナンバーワン!」


 そのまま、剣をゴールドファイアドラゴンの頭に突き立てる。


-グァァァァァ!!!!!


 断末魔の咆哮を上げ、ゴールドファイアドラゴンの体が消滅した。

サリシアは、そのまま綺麗に地面に着地する。


 「あ、ありえない…。」


 ドラゴンには、強い順に「ゴールド」、「シルバー」、「ブロンズ」、「アイアン」の名が付けられている。

「アイアン」よりさらに弱いドラゴンには、ただ単に属性ごとの「ファイアドラゴン」、「ウォータードラゴン」などの名が付けられる。

「ゴールドドラゴン」といえば、まさにドラゴンの最強種。

勇者学院のトップクラスの中のトップクラスが15人ほど束になってかかって、倒せるかどうかというレベルだ。

それを、サリシアはたった1人で、魔法も使わずに倒してしまった。


 「いつまでそこにいる。戻って来い。」


 サリシアの声ではっとしたノイルは、剣を振るって元の空間に戻る。

そして、サリシアの元へ駆け寄った。


 「す、すごかったです!めちゃくちゃかっこよかったです!」

「うむ。魔滅剣ナンバーワンはしっかりと見れたか?」

「はい!ただ、どういう技かいまいち掴めていません。」

「見れたならそれで良い。あとは言葉で解説しよう。」


 そう言うと、サリシアは自分とノイルの空間を空離剣ナンバーフォーで斬り離した。

ノイルに座るよう促し、自分も地面に座る。

そして、解説を始めた。


 「魔滅剣ナンバーワンに関しては、空滅剣ナンバースリーとあまり大差はない。空滅剣ナンバースリーが空間を斬って消滅させるのに対し、魔滅剣ナンバーワンは文字通り、魔法や魔物を斬って消滅させる技だ。これに関しては、空滅剣ナンバースリーの時の感覚を意識しつつ、修行すれば良い。」


 ノイルは頷く。

頭の中では、自分がドラゴンの攻撃を斬って消滅させるイメージを繰り返していた。


 「もう1つの技に関しては、先程見せる機会が無かった。機会があれば見せようと思うが、一応言葉で解説しておく。もう1つは魔増剣ナンバーツーという技だ。どうだ?イメージ出来るか?」

魔増剣ナンバーツー…。『魔』を『増』やすってことだから、魔力を上げるんですか?」

「違うな。それでは、私や君が習得する意味が無い。」


-確かに、その通りだ。

 だとしたらどんな技なのだろう。


 ノイルが答えを出せずにいると、サリシアがさっさと解説してしまった。


 「『魔』を『増』やすという考えは間違っていない。問題は何を増やすかだ。魔増剣ナンバーツーの場合、増やすのは『魔法』の数。例えば、1つの火炎魔法を斬って2つに増やすということだな。」

「それって、半分にするってことですか?」

「いや、そうじゃない。複製という言葉が適当かもしれないな。同じ魔力で同じ強度の魔法を、1回斬ったなら2つ、2回斬ったなら3つという風に増やしていくのだ。」


 つまり、味方が放った何かしらの攻撃魔法を斬って増やし、敵に当たる確率を高めたり避けにくくしたりするということだ。


 「大体は、分かりました。」

「うむ。あとは実践で感覚を掴んでいくのみだ。さぁ、城に入るぞ。」


 サリシアが魔王城の門を開く。

ノイルはサリシアの後に続いて、魔王城に入っていった。


---------------------------

 またまた2ヶ月が経った。

これでノイルの修行開始から半年になり、ちょうど折り返し。

ノイルが今対峙しているのは、水属性のドラゴンの最強種である「ゴールドウォータードラゴン」だ。


-ゴァァァァァ!!


 咆哮と共に、ゴールドウォータードラゴンの口から高速の水の弾丸が発射される。

それも一気に4発。

しかし、ノイルは全ての弾丸を完璧に見切っていた。


 「魔滅剣ナンバーワン!」


 ノイルが剣を4回振るう。

全ての弾丸が、ノイルの剣に斬られ消滅した。


 「空滅剣ナンバースリー!」


 サリシアがゴールドファイアドラゴンを倒した時のように、ノイルの体がゴールドウォータードラゴンの頭上に現れる。


-よし!あとは頭に剣を突き立てるだけだ!


 「魔滅…」


-ゴァァァァ!!


 「な…っ!?」


 ゴールドウォータードラゴンが、本能のままにノイルの動きに反応する。

その目が、しっかりとノイルを捉えた。


-ゴァァァァ!!


 またしても、水の弾丸が発射される。

しかも今度は一気に6発だ。


-まずい!空中では捌ききれない!


 「空離剣ナンバーフォー!」


 ノイルは咄嗟に、自らの周りの空間を斬り離した。

弾丸がノイルの体をすり抜けていく。

全ての弾丸が通り過ぎたところで、ノイルは剣を振って元の空間に戻った。


-さっきと同じようにはいかないぞ!


 「空滅剣ナンバースリー!」


 ノイルが再びゴールドウォータードラゴンとの距離を詰める。

今度はその頭上に直接降り立った。

これでは、いくら水の弾丸を撃とうと届かない。


 「魔滅剣ナンバーワン!」


 ノイルが思いっきり力を込めて、剣をゴールドウォータードラゴンの頭に突き立てる。


-ゴァァァァァァ!!!!!


 一際大きな咆哮と共に、ゴールドウォータードラゴンの体が消滅した。


 地面に着地したノイルを、サリシアが出迎える。


 「素晴らしい。ゴールドドラゴンはもう余裕だな。」

「いや、少し焦りましたよ。急に2度目の攻撃が来たので。」

「いや、正しい対応が出来ていた。あの状況で魔滅剣ナンバーワンを使おうとしていれば、捌ききれずに397回目の死を迎えるところだったな。」


 そう、ノイルはこの半年で396回死んでいるのである。


 ちなみに、今の会話を一般の人間が聞けば頭がおかしくなったと思うに違いない。

ゴールドドラゴンが「余裕」で倒せる人間など、この世界にいるはずがないのだ。

それも、一切の魔法を使わずに。

しかし、魔王城での修行という極限の状況に置かれたことで、元々影響されやすかったノイルの感覚は異常な域に達している。


 「この様子なら、魔滅剣ナンバーワンは習得したと言っていいだろう。昨日見せてもらった魔増剣ナンバーツーも、なかなか良い出来だった。」

「本当ですか!?」

「ああ、合格だ。どうだ、あとの2つの技の習得に入るか?それとも、もう少し魔王城で修行するか?」

「そうですね…」


-どうするかな。

 魔王城はちょうどいい魔物が沢山いて訓練になるしな。

 ただ、あとの2つの技も早く覚えたいし…。


 繰り返しになるが、魔王城にいる魔物が「ちょうどいい」訳がない。

残念なことに、ノイルもサリシアも感覚がズレすぎているため、ツッコミ役がいないのだ。


 「あと3日だけ、魔王城にいていいですか?」

「いいだろう。では、私は寝てくるよ。」

「はい。おやすみなさい。」


 …繰り返すが。

普通は魔王城で「おやすみなさい」などと、なるはずがないのである。

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