オセロ編
「っだぁぁあ!また負けたぁ!」
「はっはっは!伊達に何年もこの知育遊具を遊んできたわけじゃないのだよ!」
「あぁ……5連敗ぃぃ……悔しいぃぃぃ……!」
「ふぅ……それにしても、何でまた『オセロをやりたい!』なんて言い出したんだい?」
「むぅ……それ、分かって聞いてますよね?今度のクラスマッチで、オセロに出場するんです。」
「あれ?君、運動神経良いじゃないか。何でバトミントンとかバスケとかにしなかったんだ?」
「そうしたかったんですけど、部活関連の人たちとその友人方に早々に枠を埋められてしまいまして、渋々残ったオセロをとった次第です。」
「そう言われると、オセロに救われている僕にとっては少々肩身が狭いな……」
「あ、そんなつもりは、ないんです!」
「いや、君がそういう者ではない事は、よくわかっているつもりだよ。で、君はあまり慣れていないオセロの練習をしているってところか。」
「はい、その通りです。渋々でも出場するのなら、徹底的に相手をぶちのめしたいじゃないですか!」
「うん、良い心掛けだ。して、この五連敗でなにか掴んだ事はあるかい?」
「……特にないです。ただ『最初の方は取らないようにする』『隅は取るようにする』『隅の周囲三マスは取らないようにする』という戦略だけは知っています。」
「確かにこの五戦とも、その戦い方を意識した戦い方をしていたな。」
「でも、神様の方がまだ上手なのです……」
「僕もキチンと戦えてる訳ではないけど、抑えるべきポイントを抑えているからだろうな。」
「それは、どのようなポイントで……?」
「うーん……教えても良いが……君の強みは何だった?」
「『気づき』に気付ける点です。」
「うん、そのとおりだ。ならば、ヒントだけ教えてやるから、あとは自分で気づいて体に覚え込ませるんだな!」
「……本音は?」
「君から、もうしばらくマウントを取っていたい……」
「神様……」
「なにも言うな。情けないことくらい自分でも分かっている……!」
「では、ヒントを教えてください神様!」
「良いだろう。ならば、教えよう。ヒントは……『相手の打つ手を増やさない』」
「……それだけですか?」
「それだけだ。」
「もっとこう、具体的なヒントとかは……?」
「ない。」
「神様……」
「いや、勘違いしないでくれ。これが、基本的かつ、ほぼ全ての戦略の基礎的な考え方なんだからな。」
「むう……そういうことにしておきましょう……。」
「そういうな。君は『気付きに気付ける』上に飲み込みも早い。もうあと十戦もすれば、僕なんて相手にならなくなるだろうさ。」
「……分かりました。では早速手合わせ願います!」
「……ここでこうして、次にこうすれば……あ!神様、私気づいちゃいました!」
「ほう、辺を取ることを覚えたか……だが、それだけでは勝てないぞ?」
「えぇ、二戦目も敗色濃厚ですが、次こそ勝ってみせます!」
「そうそう負けてやらんぞ?」
「まぁ、見ててください!」
「っだぁぁぁぁ!ウソだろぉおお!?」
「ぃやったー!また勝ったぁ!」
「二戦目で成長し始めたとは思っていたが、そこから一気ににコツを掴んだ感じだったな……で結局、七連敗か……」
「ありがとうございました神様!これなら十二分に活躍できそうです!」
「そ、そうか。なら良かった……」
「でも、まだ成長の余地がありそうなので、来週のクラスマッチまで毎日お手合わせ願えませんか?」
「……いや、もう勘弁してくれぇ!?」