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VRゲーム編

「神様!神様!神様!」

「なんだい。今日はやけに賑やかだねぇ。」

「神様はVRゲームというのをご存じですか!?」

「あぁ、そんな言葉が出て久しいねぇ。」

「流石神様!ご存じなのですね!では遊んだことは!?」

「あぁ、ゲームセンターでだが、何度か遊んだことはあるよ。」

「さすがです!私も先日、ゲームセンターで遊んだのですが、あれはすごいですね!」

「今更感はあるけど、僕もそう思う。あの臨場感は、ただの画面越しのゲームでは味わえない物だね。」

「それで気づいたのですが、『VRゲーム』こそゲームという娯楽の最終形態だと思うのです。」

「なに?」

「あの鬼気迫るモンスターや、汚れがこびりついた壁の質感……何処をとっても、あまりにリアルで、没入感がありました!」

「ふむ。」

「まず、ゲームの本懐はなんと言っても、『日常を忘れ、誰かになる』ところにあると思います。」

「そこは僕も同じ意見だ。」

「だからこそ、その誰かになる最たるジャンルであるRPGや、バトルロワイヤル系、さらにスローライフ系に建設・設計を重視されるゲームも最近になって人気を博しています。」

「少し違うが、かねてより人気だったTRPGが人気なのも『誰かになれる』からだろうね。」

「そう!そこなのです!これまでのゲームの最大の欠点だったのは、現実と仮想を隔てる第四の壁『画面』との距離でした。」

「……。」

「この壁との距離を埋めるべく、各クリエイターは様々な創意工夫でプレイヤーと壁との距離を縮めようとしてきました。」

「確かに、その傾向はあるように思うね。ある会社はゲームにそれ専用の器具……例えば剣を模した器具を用意し、画面との間を縮めようとしたな。あとは似たものでいえば、汎用性の高いリモコンを同梱させたりしていたか。」

「そんの通りです!他にも重厚な絵やシナリオを以て、心の距離を近づけたり、操作のしやすくする事で、違和感を減らしてゲーム自体への没入感を高めたりと、実に涙ぐましい努力をされてきました……!」

「考えてみれば、タッチパネルの存在も、かなりなりきり感があったな……特に魔法陣書くときとか。」

「そして、その努力の末の境地が、今日のVRゲームです……!」

「そう考えると、一種の技術革新だな。」

「この『VR技術』の特徴はなんと言っても、その第四の壁を目の前まで近づけたことにあります!」

「ふむ。」

「極限まで目の前まで近づけたことによって、それまで見えなかった範囲の景色が自由に確認できるようになりました。また、『ゴーグル』として装着することで、設定によっては、プレイヤーの装備の一つにすることができます。」

「たしかに『ゲームキャラのための装備』ではなく、『プレイヤー本人のための装備』だから、本当に設定によっては没入感が増すんだよなぁ。」

「そうなんです!例え、装備に何の効果がなかったとしても、プレイヤーは『これから行う行動のために装着するんだから仕方がない』と納得するんです!そして、臨場感あふれるダンジョン探索やモンスターとの死闘……!はたまた巨大兵器を操縦したり、羽のついた自転車で空を飛んだりと……!没入感・臨場感これらの要素を圧縮した『VRゲーム』こそゲームの最終形態だと思うのです。」

「なるほどな……」

「いかがですか神様?」

「さすが君だ。良い見解を持っている。」

「ありがとうございます!」

「だが、それでは甘い。」

「え。」

「たしかに『VRゲーム』は現状の最終形態と言える。しかしだ!この『VRゲーム』は、発展途上。この娯楽における究極形態への通過点の一つだと言わざるを得ない。」

「ど、どうしてですか?」

「まず、あのゴーグルの存在だ。僕は普段眼鏡をかけて過ごしているが、ゴーグルをつけるときにも眼鏡を付けなければならないのは、感覚的に違和感がある。それにより没入感が得づらい。つぎに、解像度の低さだ。現実の見た目と比べると、まだまだ画が荒い。プレイしていると気にならなくなるが、第一印象が『画が荒い』というのは、なかなかに間抜けだと思うのだよ!」

(神様いつにも増して饒舌だなぁ。)

「まぁ、ここまで上げてきた問題は、これからの技術の向上により次第に改善されていくことだ。だが!あらゆる問題がクリアされ、いくら没入感が上がったとしても『VRゲーム』は発展途上だ。なぜかわかるか!?」

「え!?あ、あの、なぜですか?」

「簡単な事さ、ゲームは『日常を忘れ、誰かになる』事こそが本懐だ。ならば、ゲームにおける究極の形は、『夢の中にいるような状態』ではなかろうか!確かに『VRゲーム』は『誰かになりきれる』だろう。しかし、それだけだ。馬鹿にするつもりは毛頭ないが『なり切れる』だけではコスプレと何ら変わらない。ゲームが目指すべき先は、『第四の壁を破ったその先』にプレイヤーを投入することだと僕は思うのだよ!」

(神様楽しそう……)「……確かにその構想は魅力的です。が、私は真に究極の形態ではないと思います。」

「む、なぜそう思う。」

「確かに『VRゲーム』は神様がおっしゃったように欠点があります。そして、その構造上超えられない壁があることも事実です。しかし、それを超えられないからこそVRゲームは最終形態だと思うのです。」

「うん?言っていることが分からないのだが……?」

「神様は『夢を見ているかのような状態』こそが最終形態だと言いました。私もその通りだと思います。」

「だろう?ならば……」

「ですが!それではゲームの果たすべき役割から外れてしまうと思うのです。」

「む、なるほど。では、その役割はなんと考える?」

「それは『日常を忘れる』ことです。」

「『日常を忘れ、誰かになる』と被っているように思うのだが、どう違う?」

「はい、確かに言葉が被っていますから、そう思うかもしれません。しかし、その内容は全く異なるものです。まず『日常を忘れ、誰かになる』は、あくまでゲームの本懐。本望。私たちが望んでいることです。」

「確かに僕は『ゲーム』に対してその願望を抱いているのは間違いない。では『日常を忘れる』とどう違う?」

「先ほども申した通り、ゲームが背負っている……いや、この世界で背負うべき役割です。私たちはとてもではありませんが『優しい世界』で生きていません。とても面倒で複雑な世界で生きています。そんな世界で生まれた『ゲーム』が背負うべき役割は、プレイヤーにどこか別の世界でキャラクターを介して生かせることで、一時世界を忘れさせることにあると思います。しかし、その役割はあくまで『現実に戻ることが前提』の役割です。ですので、神様のおっしゃっていた最終形態では……」

「現実に戻れなくなってしまうというわけだな。」

「そのとおりです。そうなってしまうと、もはやゲームはゲームではなくなります。人の手によって作り出された『もう一つの現実世界』です。」

「確かに、それは一理あるな。」

「あ、もちろん、神様の言っていることも分かります。『夢の中のようなゲーム』……ぜひやってみたいものです。」

「あぁ、ぜひやってみたいな。だが、こうして現実にいる時間とのバランスもうまくとるべきだな。」

「ですねぇ。」

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